ナタリー PowerPush - Applicat Spectra
音作りから紐解くスペクタクルな世界
PC同期を使用せず、ドラム以外のメンバーが複数の楽器を駆使しながらライブを行うというユニークなスタイルが話題を呼んでいるApplicat Spectra。彼らがメジャーデビューアルバム「スペクタクル オーケストラ」を完成させた。このアルバムには先行リリースされるシングル「神様のすみか」を含む7曲が収録され、さらに初回限定盤にはボーナストラックとして「神様のすみか」のSerphリミックスが収められる。全編にわたり、ダンスミュージックの高揚感とロックのダイナミズムを併せ持つ独自のサウンドが華やかに繰り広げられる作品に仕上がった。
ナタリー2回目の登場となる今回のインタビューでは、そのサウンドのルーツや新作に込めた思い、そして今後の展望についてじっくりと訊いた。
取材・文 / 廿楽玲子
聴いてくれる人たちに少しずつなじんでいけるように
──ついにメジャーデビューアルバムが完成! ということで、今日は改めて、皆さんの音楽的ルーツから伺いたいと思います。
ナカノシンイチ(Vo, B) 4人ともルーツはほんとにバラバラなんですよ。僕の音楽的価値観を変えてくれたのは、FreeTEMPOさんですね。ダンスミュージックに泣きのメロディを持ってきたところがすごいなと思って。2000年代半ばにダンスミュージックやラウンジミュージックが流行った頃、ひとつだけ光って見えたんです。
イシカワケンスケ(G, Syn) 僕は親がTHE BEATLESのことが大好きだったんで、その影響もあって、歌が引き立つポップスが好きですね。僕は元々バンドではギターしか担当したことがなかったんですけど、Applicat Spectraでキーボードも担当することになったとき、THE BEATLESもいろんな楽器やってるしと思って、そんなに抵抗なくできました。
ナルハシタイチ(Dr) 僕はドラムを始めたきっかけがLED ZEPPELINだったんで、根底にあるのはハードロック。そこからいろんなバンドを聴いていって、RED HOT CHILI PEPPERSに出会ったときに彼らのビートに影響を受けて。そのビート感が、このバンドにも反映されてるのかなと思います。
ナカオソウ(G) 僕もタイチと一緒で、ハードロック好きだったんですよ。中でもポップなAEROSMITHとかBON JOVIが好きで、それと並行して、ジェームス・ブラウンやEARTH, WIND & FIREみたいにファンキーな音楽も聴いてて。その2つの要素をつなげた僕のルーツとなるのが、やっぱりレッチリなんですよ。歌メロがポップで、リズムが際立っていて、ミクスチャー感覚のあるところがいいなあと。その感覚はApplicat Spectraで生かしているつもりです。
──ほんとに4人それぞれですね。でも、全部の要素がこのデビュー作に入ってる気もします。アルバムを作るにあたってはどんなことを意識しました?
ナカノ やりすぎないように、でもつまらなくならないように、っていうバランスを考えました。受け入れられやすいものを作りつつ、本当にやりたかったことを少し見せるという感じかな。いきなり込み入った楽曲を作っても伝わらない気がするので、聴いてくれる人たちが僕たちの音楽になじんでいけるように、少しずつ自分たちの音を出していけたら。
スタジオはムチャぶりの連続
──なるほど、まずは間口の広いポップなものを……と言いつつ、3曲目の「クロックワイズ」はいきなり5拍子の楽曲ですが(笑)。
イシカワ そう言えばそうですね。
──この曲は最初からこのリズムで?
ナカオ はい。いつもシンイチが作るデモにリズムやドラムのパターンが入ってるので、アレンジはある程度できあがってる状態で。
ナカノ これはかなり初期に作った曲なんですよ。作ったときはメンバーを驚かせたいなって気持ちもありました。
──特に終盤、怒濤のドラミングにナルハシさんのハードロック魂が垣間見えます。
ナカノ 確かデモにはすっごい嘘くさいゴーストノート(※装飾音)が入ってたよね。
ナルハシ そうそう。ここは最後畳み掛ける感じでいきたいから、そういう雰囲気のドラムを叩いてって言われて。シンイチくんはいつも「この曲のリズムで言いたいことはこうだから、そこに筋が通ってれば何をしてもいいよ」っていうタイプなので、僕らはスタジオに入りつつ自分のカラーを出していく感じですね。
ナカノ 僕がタイチのドラムにベタ惚れなんですよ。いつもムチャぶりするんだけど、それでもやろうとしてくれるところがすごい。普通のドラマーだったら泣いて辞めてると思うけど(笑)。僕はいつも、タイチにスタジオで叩いてもらったリズムをこっそり覚えて帰って、曲作りに生かしてます。
シンイチはメンバーの“先生”
──ギターはナカオさんとイシカワさんの2人で、どうやって演奏するパートを振り分けるんですか。
ナカノ 2人の役割を僕が大体決めて、それっぽいフレーズをデモに入れて、変えたいところがあれば好きにしてください、って感じです。
ナカオ 僕はどっちかっていうとリズム担当的な役割があるので、リズムに対するアプローチをすごく考えますね。まずは歌ありきなので、歌を邪魔しないことを心がけつつ、リズムをいかに際立たせるか。そこが一番重要なところだと思ってます。
ナカノ 僕がボーカルということもあってあんまりベースだけに集中しては弾けないので、ギターにベースの役割を担ってもらってる一面はあるかもしれない。あと、これが自分のカラーだって最初から思い込んでると押しつけがましい音になってしまうので、バランスを取りたいなと思ってます。
──ギタリストじゃないナカノさんから独特のフレーズが生まれることもあるのでは?
イシカワ それはありますね。彼は自分にない引き出しを持ってるんですよね。例えば「イミテーションブルー」では、Aメロの途中でディレイとギターカッティングのフレーズが合わさるんですけど、これは僕からは出てこないアイデアだなあと。
ナカノ ギタリストが考えるフレーズだと、弾いてて気持ち良いフレーズが多くなってくると思うんですよね。でも僕が考えるものは、弾いても全然気持ち良くないものがいっぱいあると思うんです。「この曲にはこのフレーズが必要だから」ってことで、ムリに言ってやってもらうことが多いよね。
ナカオ 確かに、1stインプレッションでは面白いと全然思えないフレーズがある。ギターキッズはあんまり反応しないだろうなっていうやつが(笑)。でも最近、それを楽しめてきてる自分がいるんですよね。ただ弾くだけだったら面白くないフレーズでも、その1音にどれだけの説得力を出せるのかを考えると、途端に面白くなる。僕が弾くことに意義があるってことを心がけるようになって、苦手なフレーズの良さにあとから気付いたりとか。シンイチはそういうことを教えてくれる存在でもあるんです。
イシカワ だから僕ら、シンイチくんのことを“先生”って呼んでます(笑)。
Applicat Spectra ONE MAN LIVE
「SPECTACLE ORCHESTRA」
- 2012年4月30日(月・祝)東京都 WWW
OPEN 17:00 / START 18:00 - 2012年5月12日(土)大阪府 OSAKA MUSE
OPEN 17:30 / START 18:00
チケット一般発売日:2012年3月24日(土)
Applicat Spectra
(あぷりきゃっとすぺくとら)
2010年8月に大阪にて結成された、ナカノシンイチ(Vo, B)、ナカオソウ(G)、イシカワケンスケ(G, Syn)、ナルハシタイチ(Dr)からなる4人組。フロントマンの3人が2つ以上の楽器を駆使しながらパフォーマンスを行うスタイルが注目を集めている。エレクトロとギターロックを軸にした、壮大かつドリーミーなサウンドスケープが魅力。2012年4月4日にA-Sketchよりメジャーデビューアルバム「スペクタクル オーケストラ」をリリースする。