低音での発声は息継ぎが信じられないくらい大変

──アカペラは全員の声が合わさったときにやっと全容がわかるので、自分のパートだけレコーディングするのはなかなか感覚がつかめなさそうですね。

増元　そうなんですよ。「これで本当に大丈夫なのか」と思いながら録っていましたね。

小野　全体像のイメージが湧かないので難しかった。レコーディングの順番は、僕が最初か2番目だったんです。だからほぼ仮歌の状態で、イメージが湧かないけどとりあえずやるしかないという感じで。完成した音源を聴いたときに「曲になってる！」と感動しました。

──ほかにレコーディングで苦労した部分はありますか？

小野　「怪物」の最後の英語パートですね。

花江　あの部分は本当に難しかった。英語なうえに超早口だから。

小野　花江くんとは毎日と言っていいくらい一緒にオンラインゲームをやってるんですけど、そのときに「英語パートどうする？」と相談して。そしたら花江くんが楽譜の英語部分にひらがなを書いたデータを送ってくれて。

花江　自分用に作ったので、どうせだったら一緒の発音のほうが合わせられるかなと思って。

小野　おかげでちゃんと録れましたね。

花江　あとレコーディングでエンジニアの方や「アオペラ」の運営の方から「自由に歌ってください」と言っていただくこともあるんですけど、「踊」や「怪物」は原曲を知っているがゆえにアレンジされたメロディが体に馴染みづらくて、とても難しかったです。

増元　僕は低音でずっと発声していると息継ぎが信じられないくらい大変で、声量を維持するのが大変でした。体調万全で挑まないと、前は歌えたはずの部分が歌えなくなったりするんですよ。

小野　声域の部分は大丈夫だったんですか？ 「こんなに低い音出ないよ」みたいなことは？

増元　音はギリギリ出たんですけど、長く歌うのが難しくて。ただ、あまりに分割してレコーディングするのも勢いが出なくなって嫌だったので、なるべく長めに歌えるように練習しました。

花江　Bassはけっこう機械的に歌うんですか？ それとも感情を込めて？

増元　感情は込めましたね。自分の中で段階を追って組み立てていく感じというか。ここまで歌ったら違う感情のパターンになるみたいな感じで。

小野　Bassの苦労に比べたら2ndはそんなにだったかも。仮歌を聴けばなんとなく音のイメージはつかめるので。レコーディングにあたっては、原曲の雰囲気を残したいという思いがあったからわりと原曲は聴いていましたね。ちょっとしたニュアンスは原曲を参考にしました。

増元　僕は逆に原曲を聴いちゃうと音程や歌い方が迷子になっちゃうので聴かないようにしていて。それでも町中でよく聞こえてくるからなんとかシャットアウトしようとしてました（笑）。歌うパートは「ドゥー」と「ドゥル」ばっかりで同じ歌い方を2小節繰り返したらパターンが変わって……という感じなので、日々呪文のように唱えていましたね。

花江　僕も賢章さんと同じくそこまで苦労はしてないですね。Topということもあるし、ガイドも入っていたので、ほかの音楽コンテンツでやっているレコーディングとそこまで差がなかったです。楽譜と音源をもらってからレコーディングまでにけっこう時間があったので、車で仮歌を聴いたりしていて。レコーディングが待ち遠しいくらいでした。

癖のあるVadLip

──アカペラは歌い方に癖がないというか、あまり個を出さないほうがアカペラらしく仕上がる印象があったのですが、「アオペラ」の楽曲はそれぞれの個性が出ていたのが新鮮でした。

花江　確かに。加えて我々VadLipは、これまでの2グループよりも癖のある歌い方をしてくださいと言われていて。ほかのグループと差をつけるという狙いもあると思うんですけど、音楽性も攻撃的な感じになるそうなので、そこも特徴と呼べるんじゃないかなと。

──いただいた資料には、VadLipはミクスチャーロック系の攻撃的なアカペラが得意と書いてありますね。

小野　イメージ的に、これから制作されるオリジナル曲もテンポが速そうだなと思ってます。きっとラップパートとかあるんだろうな。

花江　でも……バラードもやりたいですよね。歌っていて気持ちよさそう。

小野・増元　やりたいですね。

──ちなみにほかのグループの曲で好きな曲や印象的だった曲は？

花江　FYA'M'の「Think About U」はおしゃれだなと思いました。

小野　俺も「Think About U」好き。冒頭で朝晴さん（佐藤拓也演じる宗円寺朝晴）が「Think About U」ってささやくのもいいよね。

花江　うん。全体を通してFYA'M'の先輩感があふれていて。この曲のパフォーマンスに衝撃を受けてリルハピのメンバーがアカペラを始めたいと思ったことに説得力を感じました。

増元　僕はFYA'M'の「Let it snow, Let it snow, Let it snow」。アカペラとクリスマスソングは相性抜群だと感じました。聴いていてめちゃくちゃキュンときたので、こういう感じの曲を歌ってみたいと思わされた憧れの曲ですね。

今後カバーしたい曲は？

──今後VadLipとしてカバーしたい曲はありますか？

花江　Official髭男dismさんの「ミックスナッツ」はどう？ テンポが速いけど。

小野　いいね。ベースが激しく動いてるからめっちゃ大変だと思うけど（笑）。

増元　「踊」と「怪物」のカバーを乗り越えたから大丈夫！

小野　「踊」のBassすごかったですもんね。あとはRIP SLYMEさんの「楽園ベイベー」をミクスチャーロックバージョンで歌いたい。

花江　ラップじゃないですか（笑）。

増元　わかります。あのラップ部分は学生時代に完璧に歌いこなせたらいいなと憧れました。僕は……バラードだし、本当に恐れ多いんですけど、ゴスペラーズさんの「ひとり」。本当に好きな曲なのでカバーできたらたまらないですね。Topや2ndのプレッシャーが半端ないと思いますが（笑）。

スタッフ　実はすでに「ひとり」は「アオペラ」発足1周年記念の企画で、「アオペラ」声優陣とゴスペラーズの皆さんでコラボ歌唱させていただいていて。

増元　夢途絶えた……歌ったメンバーいいなあ。

小野　あとはMaroon 5さん、藤井風さん、東京事変さんとか。

花江　東京事変さんだったら「丸ノ内サディスティック」？

増元　VadLipに合いそう。

小野　（スタッフに向かって）「丸ノ内サディスティック」でお願いします！

──では最後に今後「アオペラ」でVadLipとして活動していくうえでの意気込みや展望を聞かせてください。

小野　走り出したばかりだし、メンバー全員でお会いして話す機会もまだないので、これからユニットのグルーヴ感を高めていけたらいいなと思っています。

花江　せっかくならライブしたいですね。

小野　今だったらたぶんカバー曲でライブできますよ！

花江　覚えてるからね（笑）。

増元　やりたいやりたい。カバーMVの顔くらい必死の形相で、首に筋を立てて歌います！

小野　越えていかないといけない壁だね。歌モノコンテンツは生パフォーマンスを観てもらいたいし、きっとお客さんも観たいと思ってる。本番の1週間前から毎日練習用のスケジュールを確保してください（笑）。

花江　「ハモネプ」みたいにどこかの公園で練習したい！

増元　夜な夜な集まって（笑）。

小野　代々木公園で練習しよう！

増元　青春だなあ。