MBS / TBS系で現在放送中のテレビアニメ「15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ」の第2クールオープニングテーマを藍井エイルが、エンディングテーマをCö shu Nieが担当している。
藍井が歌うオープニングテーマ「PHOENIX PRAYER」は、Cö shu Nieの中村未来(Vo, G, Key, Manipulator)が作詞作曲を手がけた楽曲。力強く前に向かって進んでいく意思が藍井の凛とした歌声で表現された。一方、Cö shu Nieによるエンディングテーマ「SAKURA BURST」では、自分が犠牲になることすらも厭わない、痛いほどの強い愛が描かれている。
音楽ナタリーでは2組のシングルの発売を記念して、対談を実施。新曲についてはもちろん、お互いの印象やこれまでの音楽活動についてなど、幅広く語り合ってもらった。
取材・文 / 天野史彬撮影 / 斎藤大嗣
付き合いたての恋人みたい
──今回、藍井さんの新曲「PHOENIX PRAYER」をCö shu Nieが制作されていますが、以前から2組には交流があったのでしょうか?
藍井エイル もともと私がCö shu Nieさんのことを死ぬほど好きで。一度、ツアーに行くためにチケットを買おうと思ったんですけど、東京公演が売り切れていたんですね。それで、人生初の遠征をしようと思って名古屋公演のチケットを買ったんです。新幹線のチケットも買ったんですけど、当日、39度くらいの熱が出てしまって。
中村未来(Vo, G, Key, Manipulator / Cö shu Nie) ええー!
藍井 それで行けなくなっちゃった。そんなことがあったくらい、Cö shu Nieさんのことが好きで、私が一方的にラブコールを送っていたんです。初めて会ったのは2020年の3月くらいですね。
中村 もう1年以上経つんだ。初めて会ったあとに「一緒にお茶行こうよ」と言ってたのに、結局、すき焼き食べに行ったね(笑)。
藍井 行った。お昼にすき焼き食べた。
中村 それが初めてちゃんとしゃべる場だったから、ちょっと緊張した。
藍井 いやいや、私からすると(中村は)神なので。私がすごく照れちゃって、目もあんまり合わせられなくて。いつもはもっと入っていくはずのごはんが、胸がいっぱいで入っていかなかった。
一同 (笑)。
藍井 確か、一緒にすき焼きに行く前に、電話で2時間くらいしゃべった日があったんだよね。
中村 2時間どころじゃないよ、5時間くらいしゃべった(笑)。……実は、今回の「PHOENIX PRAYER」とは別に、曲の依頼をしてくれていて。そのときは純粋なエイルの曲を書こうと思っていたから、エイルのこれまでの人生のこととか、いろんな話を聞くために電話で話したんです。その日は5時間くらい電話したし、次の日からずっとLINEが続いて(笑)。
藍井 そうそう、毎日ずっとLINEしてた。すごい頻度で連絡してて……「今日何食べた?」とか。
中村 1人で食事していても、連絡取りながら食べてるから、2人で食べてる感じになったり(笑)。
松本駿介(B / Cö shu Nie) めっちゃ友達やん(笑)。
中村 いやもう、付き合いたての恋人みたいな(笑)。そのくらい、通じるものを感じたんでしょうね。思想とか、音楽性に関わることもいろいろ話したし。
藍井 私からすると、未来はお姉ちゃんって感じがする。“私がなりたかった人”という感じ。落ち着きがあって、音楽の才能が素晴らしくて、歌声がすごくきれいで……「こういう人になりたかったな」と思う。
中村 ホントに?(笑) 照れるなあ……。今は髪もおそろいだしね。
藍井 ね、青色。私、もともとビョークが好きなんだけど、ああいうちょっと狂気的な感じのある音楽が好きで。「東京喰種」のオープニングだったCö shu Nieの「asphyxia」(2018年6月発売のシングル表題曲)を聴いたときにそういうものを感じた。「素晴らしすぎる! 天才すぎる!」と思って頭抱えて。しかも調べたら、まさかの作詞作曲が女の子で、編曲も女の子。衝撃を受けた。「こんな天才がいるんだ!」って。そこからのめり込んでいって、今はもうLINEのBGMは「give it back」(2021年3月発売のシングル表題曲。テレビアニメ「呪術廻戦」第2クールのエンディングテーマ)。次は「SAKURA BURST」にしようと思っていて。
中村 「PHOENIX PRAYER」でいいじゃん(笑)。
藍井 自分のは恥ずかしいから。
中村 私からするとエイルは、愛情深くって、すごくまっすぐな人だなと思う。
藍井 ……なんか、汗かいてきた。
中村 話してると「純粋なんだろうな」と感じる。理屈じゃないところで行動している感じがあって、もちろん繊細さもあるけど、そのまま突っ走っていける強さもある。
松本 今、監督(中村)が言ったことはめちゃくちゃわかる。でも、まっすぐであるがゆえに、めちゃくちゃ気を遣いまくる人なんだろうな、とも思うし。
中村 ライブを観ても、ファンサービスが素敵だよね。「エイ、エイ、ルー」って。
藍井 武道館で「『エイ、エイ、ルー』を5回連続でやりましょう」って言って、4回で終わっちゃったことがあった。
中村 そういうところがかわいいんだろうね(笑)。
力強くて、温かみのあるものを書きたかった
──「PHOENIX PRAYER」以前にも、未発表とはいえ、中村さんは藍井さんのために曲を作られているということですが、藍井さんが歌うことをイメージしたとき、どんな音楽が自分からは生まれてきますか?
中村 力強いものですね。「PHOENIX PRAYER」は、「コードギアス 反逆のルルーシュ」の監督からオーダーがあって、「ある登場人物をイメージしてほしい」と言われたんですけど、その登場人物も、どこかエイルと重なるところがあるなと思ったんです。力強くて、温かみのあるものを書きたいと思って書きました。あと、この曲は、母性がある感じもあるかな。
藍井 うん。行動力があるし、母性もあるけど、ちょっと傲慢っぽいところもある歌詞なのかなって。
中村 直感で突き進んでいきながら、でも包み込むような。
藍井 もちろんアニメサイドのオファーもあると思うけど、私自身、すごく直感派だし、1人で無人島に行くくらい行動力もかなりあるタイプだし。あと、ファンの方々は私に母性を見てくれる部分もあるのかなと思うし、そういうところは、自分にすごく重なっている曲だなって思った。今まで作家さんに曲を書いてもらうことが多かったけど、今回はCö shu Nieというバンドが書いてくれた。こういう曲って、藍井エイルの今までの曲の中にはなくて。だからすごく新鮮でした。私、この曲が好きすぎて、録り終わったあと1日中聴いてた。
──すみません、「1人で無人島に行った」という話が気になるのですが……。
中村 気になりますよね、そこ(笑)。なんで行ったの?
藍井 興味。
中村 興味か(笑)。
松本 「無人島行きてえ」って?
藍井 活動休止中にだんだんと体調もよくなってきて、「家で1日中ゲームしているのもなあ」と思って。海外に1人で行くのはちょっと怖いし勇気が出ないから、無人島に行こうと思って、それで沖縄の無人島に行きました。漁師さんの船に乗せてもらったりして。
中村・松本 ええー!
藍井 めっちゃ楽しかったよ。もずくを獲って食べようとしたら違って、「これ、もずくじゃない!」とか。
中村 すごい(笑)。
松本 サバイバーだなあ。
藍井 なんというか、ストレスを抱えて歌いたくないんですよね。自分が楽しくないと、きっと、聴いてくれる人も楽しくないと思うし。自分で歌詞を書くにしても、心が健やかじゃないと、私はどうしても主観的になりすぎて周りが見えなくなっていっちゃうから。だから「心を健やかにしたい」と思うことが多いし、そのために、自分が北海道出身だからか、自然の多い場所に行くことが多くて。沖縄の無人島もそうだし、青森の白神山地に行ってみたり、そうやって自分の心を健やかにすることで、いい歌が歌えるんじゃないかと思ってる。
松本 自然に呼び寄せられるんですね。
藍井 そうそう。自然、よくないですか?
松本 いいですよね。僕も大阪にいた頃は奈良の森の中に1日中行ったりして、デトックスしてました。確かに、気分が落ち込んでいるときって、それが音に影響しますからね。
藍井 そう、攻撃的になっちゃう。ストレスが溜まると人に対して優しくなれなかったりするし、誰も幸せにならないなと思って。なので、自分の心の健康はちゃんと自分で管理して守らなきゃって。
松本 でも、それで無人島に行くっていうのは、何かが上乗せされている感じがしますけど(笑)。
中村 逆にストレスかかりそう(笑)。私の場合は、曲を作ればストレスはなくなるからなあ。
松本 確かに、監督は全部を音楽にしている感じはある。
中村 音楽を作ると浄化される感じがあるからね。もちろん苦しさもあるけど、それを超えて、音楽を作りきることができたり、ライブをやると、浄化される。
藍井 それって、音楽が仕事でもあり、癒しでもあるということでしょ? 最強じゃない?
中村 私にとって音楽作りが、個人的なものというより、バンドだからかな。バンド活動が私には性に合っているんだと思う。
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レコーディングの違い