藍井エイル「心臓」特集|ヨルシカ・n-bunaとの出会いで生まれた、新しい“「SAO」×藍井エイル”の形 (3/3)

イントロから「サウジだ! カッコいい!」と思った

──カップリング2曲目の「Dance with me」はエキゾチックなダンスナンバーですが、僕はこの曲に一番驚かされました。

これは、「今この場で歌ってください」と言われても歌えない(笑)。準備が必要です。

──楽曲はLEONAIRのメンバーが手がけていて、作詞がH14さん、作曲がDJ Mass MAD Izm*さんで、編曲はLEONAIR名義となっていますね。

DJ Massさんは「シューゲイザー」(2015年10月発売の11thシングル表題曲)のアレンジでお世話になったのでおひさしぶりだったんですけど、それ以外の方ははじめましてでした。カップリング曲をどうするか藍井チームで相談していたとき、さっき話したサウジアラビアのライブでダンス曲がすごく盛り上がったという話題になって。もともと藍井エイルにはダンス曲が少なかったので、今回またチャレンジしても面白いんじゃないかと作っていただいたら、とんでもなく難しい曲ができてしまったという。

──近年の藍井さんは「アンリアル トリップ」(2020年8月発売の18thシングル「I will…」カップリング曲)でもトロピカルハウスをやっていてとても新鮮だったのですが、さらに上書きされた感があります。

ありがとうございます。サウジアラビアでいろいろと影響を受けたので、ちょっと中東風なダンス曲に……。

──ああ、この曲に漂うエキゾチシズムは中東由来だったんですね。

私は勝手にそう捉えています。サウジアラビアで通訳さんとお友達になって、サウジの音楽をいろいろ聴かせてもらったんですよ。で、初めて「Dance with me」を聴いたとき、イントロから「サウジだ! カッコいい!」と思って。だからすぐ気に入ったんですけど、歌うのはめちゃめちゃ大変でした。まず、特に英語の歌詞は「この音数に対して、どうやったらこの文字数が収まるの?」という状態で。しかもハモも大量にあったので「やばいやばいやばい!」と慌てましたね。

藍井エイル

──いい具合に脱力した浮遊感のあるボーカルで、「これも藍井さんが歌ってるの?」と思いました。

今までと全然違う歌い方に聞こえるかもしれないんですけど、別に意識して変えているわけではないんですよ。例えば声色を変えるとかそういうことは一切していなくて、ニュアンスの付け方をちょっと変えているだけで。特にサビの「Dance with me」とかはそのまま歌うんじゃなくて、「ダァンウィッミッ」となまるように歌うと印象的に聞こえるとMassさんからディレクションを受けまして。実際やってみて「それだけでこんなに変わるんだ!」という発見がありましたね。

──クールでありつつ、ちょっとだけセクシーでもありますね。

おお、うれしい! 歌詞を読んで、私はクラブで踊っている女の子目線のラブソングだと勝手に解釈したんですけど、その女の子は元気いっぱいというよりは、ちょっとツンとしているイメージだったんです。だからほんのちょっぴり、スパイス程度に妖艶な感じをまとわせたかったんですよ。

10年をみんなと一緒に振り返るようなライブができたらいいな

──「HELLO HELLO HELLO」と「心臓」という2枚のシングル、計6曲を並べてみると、振れ幅がとんでもないですね。

しかも、「HELLO HELLO HELLO」から「心臓」までの期間が3週間しかないので、皆さんにおかれましては“藍井エイル崩壊”を起こさないように(笑)。最初のほうでもお話した通り、すでに「HELLO HELLO HELLO」の時点で「誰が歌ってるのかわからん」みたいな感想もいただいているんですけど、ここからまた戻ってきたり、さらに別のところに行ったりするので、ついてきてほしいです。

──藍井さんは去年の10月にデビュー10周年を迎えましたが、10年経ってなおそういった驚きをリスナーに提供できるというのは、簡単なことではないと思います。

なんか、自分の中にある素材というか材料みたいなものを、どんどん進化なり変化なりさせながら活動していけたらいいなと思って歌と向き合っているので、その言葉をいただけただけでめちゃくちゃうれしいです。

──デビュー当時、その進化や変化を想像できていました?

いや、まったくできていないですね。今回の2枚のシングルで言ったら「EVIL」以外の歌い方はできていないというか、歌うこと自体がそもそも不可能でしたね。それか、歌ったとしても完全に別物になってしまうと思うので、ボイトレのすさまじさを感じます。ボイトレによって私の歌はものすごく変わったので、受けていてよかったです。

──ボイトレの結果、変化した藍井さんもすごいのでは?

いやいやいや! もう、今や“後輩にボイトレ行ってるか行ってないか聞くおばさん”みたいになってる(笑)。

──親切(笑)。

同じレーベルのASCAとかに「藍井さん、ボイトレって行ってますか?」と聞かれたら「ボイトレ? 絶対行ったほうがいいよ! なんなら紹介するよ!」とか言ったりするお節介な先輩です。

──藍井さんの歌を聴いたら、めちゃくちゃ説得力が出ると思います。

どうなんでしょう? そう思ってくれたらうれしいですけど、「HELLO HELLO HELLO」とかは気を抜くといつもの藍井エイルに戻っちゃうので、まだまだ課題はあります。ライブで歌うときは、いったんMCを挟んだほうがいいかも(笑)。

藍井エイル

──そのライブが、11月13日に横浜アリーナで予定されていますね(参照:藍井エイルが初の横浜アリーナ単独公演開催「会えるのを心から楽しみにしています」)。

はい。私にとって初めてのアリーナワンマンになるので、今、横浜アリーナについていろいろ調べていて。いろんなアーティストさんの横アリでのライブ映像を観ているんですけど、だいたいステージしか映っていないんですよね。私としては客席を含めた全体像を想像したくて、そこで最近たどり着いたのが横アリの公式YouTubeで。例えばメインアリーナは「縦の長さが114m、横の長さが78m」みたいなナレーション付きの紹介動画を観たんですけど、やっぱりよくわからない(笑)。

──初のアリーナワンマンを前に、現時点では横アリの公式YouTubeをチェックしていると。

そうなりますね(笑)。でも、明後日にはセットリストをどうするかという話を1回します。演出とかはまだ何をどこまでやれるのかわからないんですけど、先輩は空を飛んだりしていましたし、それ以外にもトロッコとか、いろんなことが可能になるのがアリーナだと思っているので、楽しみです。

──横アリ公演の情報が解禁されたとき「アリーナでも、変わらず想いが届くように」というコメントを添えられていましたが、当然そこを軸にしつつ。

そうですね。そのうえで、藍井エイルの10年をみんなと一緒に振り返るようなライブができたらいいなって。私はいわゆる10周年記念ライブというのをできていなくて、11月になるとデビュー11年目に入っちゃうんですけど、まだギリギリセーフなんじゃないかと勝手に考えています(笑)。

ライブ情報

藍井エイル Special Live 2022 at 横浜アリーナ

2022年11月13日(日)神奈川県 横浜アリーナ

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プロフィール

藍井エイル(アオイエイル)

2011年10月にテレビアニメ「Fate/Zero」のエンディングテーマ「MEMORIA」でメジャーデビュー。以降「機動戦士ガンダムAGE」や「ソードアート・オンライン」シリーズ、「キルラキル」「アルスラーン戦記」といったさまざまなアニメのテーマソングを担当する。2015年にはキャリア初のワールドツアー「Eir Aoi WORLD TOUR 2015 -ROCK THE WORLD!!-」を開催した。2016年10月にベストアルバム「BEST -E-」「BEST -A-」をリリースし、同年11月に東京・日本武道館で行ったライブ「Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 ~LAST BLUE~ at 日本武道館」をもって活動休止。休養期間を経て、2018年に活動を再開し、6月にシングル「流星 / 約束」をリリースした。2019年4月にはアルバム「FRAGMENT」を発表。以降も「BLUE REFLECTION RAY/澪」のオープニングテーマや「15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ」のオープニングテーマなどを担当し、続々と作品を発表している。2022年8月にテレビアニメ「カッコウの許嫁」のエンディングテーマ「HELLO HELLO HELLO」、10月に「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ」の主題歌「心臓」をシングルリリース。11月に初の神奈川・横浜アリーナ公演を開催する。