音楽ナタリー PowerPush - 藍井エイル
4年目に振り返る“藍井エイル”の作り方
藍井エイルのニューシングル「ツナガルオモイ」がリリースされた。
「ツナガルオモイ」は先月デビュー3周年を迎えたばかりの藍井の8枚目のシングル。彼女はこのシングルで、キャリア4年目にして初めて自ら表題曲の作詞・作曲に挑戦。そして一見ストレートながらも小技の効いたアレンジに乗せて、人と“オモイ”を“ツナ”げることをシンプルな言葉で高らかに祝福している。
今回のインタビューではこのシングルの聴きどころと同時に、藍井の楽曲制作術と、作家としての藍井エイルが誕生するまでの道のりにも肉薄。まさに「ツナガルオモイ」に裏打ちされた彼女の過去と現在、そして未来に、ぜひ注目してみてほしい。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 佐藤類
誰かの力になりたいという“オモイ”
──今回の「ツナガルオモイ」は藍井さんにとってデビュー4年目1発目のシングル。そして初めてシングルの表題曲の作詞・作曲を自ら手がけている。だからデビュー4年目を迎えるに当たって何か心に期するものがあったのかな?って思っているんです。
でも「4年目だから自分で作詞・作曲したい!」って自分から言い出したわけではないんですよ。「次のシングルを作りましょう」っていう打ち合わせのとき、スタッフさんから「じゃあ今度のシングル曲では作詞・作曲を」って言っていただけたから曲も書いてみたっていう感じなんです。
──じゃあ前のシングル「IGNITE」のカップリング曲「泡沫」なんかも作詞・作曲していることだし、シングル表題曲だからって何か殊更に気合いが入ったり、逆にプレッシャーを感じたりということは……。
シングル曲の作詞・作曲をさせてもらえたことは光栄だし、すごくうれしいことではあったんですけど、プレッシャーはなかったですね。実はこの曲って「作詞・作曲を」って言われてから書き始めたものじゃなくて、以前から温めていたものですし。ただ最初におっしゃっていた「4年目だ」っていうことは確かに意識していました。この曲自体「私はなぜ今、音楽活動をできているんだろう?」っていうことを考えながら作った曲なので。
──その音楽活動を続けられる理由って見つかりました?
まさにタイトルの「ツナガルオモイ」があったからなんだろうなって思ってます。子供の頃からずっと歌手になりたいと思っていて、音楽活動を続けてきたんですけど、なかなか夢にたどり着けなくて一度あきらめかけたことがあって。それが高校卒業前になんですけど、その頃は看護師さんの道に進むことを考えていたんです。
──なぜ看護師に?
このあいだの(春奈)るなちゃんとの対談のときにもお話させていただいたんですけど(参照:藍井エイル、春奈るなインタビュー)、私が音楽を聴き始めた理由や歌手になりたかった理由って、当時聴いていたアーティストさんたちの曲に救われたから。そのアーティストさんたちが私の気持ちを代弁してくれている気がして、すごく助けられた気がしたから「私も音楽で誰かの力になりたい」「もし私の音楽が誰かを助けられたら」って思うようになったんです。そして誰かの力になれる仕事って考えたとき思い当たったのが看護師さんでした。
ワンクッション置かずにダイレクトに伝えたい
──そのとき見つけた「誰かの力になりたい」「助けたい」っていう気持ちが「ツナガルオモイ」にも込められている?
そうですね。私がそういう気持ちを込めて歌い続けてきた曲たちが、実際に多くの人たちに届いて、その気持ちを受け取った人たちが逆にライブでの声援だったりっていう形で私に力をくれた。そうやってお互いの“オモイ”が“ツナガ”ったから、私は今まで音楽活動を続けてこられていて。だからデビューから丸3年っていう節目に、みんなへの感謝の意味も込めてこの曲をリリースしたかったんです。
──その藍井さんの手によるメロディと詞なんですけど、どちらもすごくストレートですよね。勢いのあるロックンロールに乗せて、タイトル通り、人と人とが“ツナガル”こと、わかりあえることの喜びを歌っている。
「よりストレートに」っていうのはもともと私が心がけていることなんです。複雑なメロディや難しい言葉がたくさんあると、聴く人は一瞬「あれっ、今のメロディってなんだ?」「この言葉ってどんな意味だっけ?」って考えることになりますよね。できればそうやってワンクッション置かずによりダイレクトに伝えたいから、メロディも言葉もいかにシンプルにわかりやすくできるかが勝負なんだと思っていて。あと特にメロディがそうなんですけど、歌謡曲の影響もあるからできるだけシンプルにしたいんですよね。
──歌謡曲の影響?
母親の影響で子供の頃から門倉有希さんとかテレサ・テンさんの曲を聴いたり歌ったりしていたんですけど、ああいう歌謡メロディって譜割が大きいというか、音数が少ないじゃないですか。子供の頃からなじみがあるからっていう理由もあるんでしょうけど、そういう曲のほうが私の心に響くし、身体にも入ってきやすいからスムーズに歌えるんです。だから「ツナガルオモイ」も、最初に思い付いたメロディをそのまま採用しているわけじゃなくて、音符をそぎ落としてるんですよ。「このパートのメロディラインがちょっと複雑になりすぎてるから」っていうことで、どんどんどんどん音数を減らしていったら、今の形になったっていう感じですね。
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- ニューシングル「ツナガルオモイ」 / 2014年11月12日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1599円 / SECL-1619~20
- 通常盤 [CD] / 1300円 / SECL-1621
CD収録曲
- ツナガルオモイ
- Raspberry Moon
- Gladius
- ツナガルオモイ(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- ツナガルオモイ ビデオクリップ
- Making of ツナガルオモイ
- Eir in LA the Movie
藍井エイル(アオイエイル)
北海道札幌市出身の女性シンガーソングライター。高校在学中よりバンドのボーカリストとして音楽活動を開始し、その後、動画サイトの投稿をきっかけに大きな注目を集める。2011年4月にアニソン誌「リスアニ!」の付録CDにオリジナル曲「frozen eyez」が収録され、同年10月、テレビアニメ「Fate/Zero」のエンディングテーマ「MEMORIA」でメジャーデビュー。以降「BLAU」と「AUBE」という2枚のオリジナルアルバムに加え、「AURORA」「INNOCENCE」「シリウス」など話題のアニメのテーマソングを立て続けに発表し、「Animelo Summer Live」などアニメソング系大型フェスにも数多く出演する。2014年8月にはアニメ「ソードアート・オンラインII」のオープニングテーマ「IGNITE」をリリースし、11月にはデビュー4年目第1弾シングル「ツナガルオモイ」で初めてシングル表題曲の作詞・作曲を手がける。