ナタリー PowerPush - 藍井エイル

葛藤と挑戦を繰り返し生み出された最高傑作「AUBE」

藍井エイルが1年ぶりのフルアルバム「AUBE」を完成させた。名刺代わりの1枚と自ら称した前作「BLAU」で強烈なイメージを叩きつけた藍井。2013年のアーティスト活動の中で得た経験をもとに、得意とするアッパーな楽曲以外の新たなサウンドが幅広く収録された「AUBE」は、現時点での彼女の最高傑作と言っても過言ではない仕上がりになっている。

今回「AUBE」制作に際して彼女が直面したという葛藤の部分にスポットを当ててインタビューを実施。さらにアーティストとしての今後の目標についても話を聞いた。

取材・文 / 古川朋久

「AUBE」は全身全霊を込めて作った1枚

──前作「BLAU」から1年ぶりのフルアルバム「AUBE」がいよいよ発売ですね。

2013年11月にシンガポールで行われた「ANIME FESTIVAL ASIA 2013」でのライブの様子。

正直怖いです。楽しみだなってずっと思ってたんですけど、発売が近づくにつれてそういう気持ちになってくるもんなんですね。

──それはなぜでしょうか?

「AUBE」は今の自分でこれを超えられるものを作ってくださいって言われても「無理です!」ってぐらい全身全霊を込めて作った1枚なので。HPもMPも0になるほど集中して全力出し切りました。だから早く皆さんに聴いてほしくて仕方ないんですけど、「BLAU」のときのように興味をもってもらえるのか不安な部分も大きいんです。

──前回のインタビュー(参照:藍井エイル「BLAU」インタビュー)では「その時点での成長した藍井エイルをこのアルバムで見せたかった」とおっしゃってましたが、改めて振り返ってみて「BLAU」は藍井さんにとってどんなアルバムでしたか?

「BLAU」は藍井エイルがどんな人物でどんな歌を歌っているのかがひと目でわかる名刺代わりの1枚になっていたと思います。私自身何かと戦っている楽曲だったり強く地面を踏んで前を向いていくような楽曲が多いんですけど、そういう力強い楽曲が「BLAU」を形作っていたので。私という人間をたくさんの人にわかりやすくアピールできたアルバムだったんじゃないかと。

──ビジュアルもインパクトがありましたしね。

タイトルどおり青がテーマのビジュアルイメージだったので目の色も青くしてかなり人間離れなジャケットでしたけどね(笑)。そのインパクトもあってかたくさんの方が手に取ってくださったようで。とはいえ私はそんなに自分の顔が好きじゃないので恥ずかしかったんですけど。

いつも「ずっとここから」っていう気持ち

──昨年はライブも精力的に行ってましたね。その集大成が10月に行われた渋谷公会堂でのワンマンライブかと思いますが。

初のホールワンマンということもあって、ライブ中のMCで自分の中に秘めていた思いを初めて打ち明けたんですけど……けっこう勇気が必要でしたね。でもなんで私が歌っているのか、どんな気持ちで歌っているのかっていうのを歌以外に言葉でも伝えてみたかったんです。その後、イベントで会いに来てくれたファンの女の子がそのときの私の告白を聞いて「つらいのは私1人じゃないんだ」って思ってくれたみたいで泣いてくれて。そのときですね、気持ちを打ち明けてよかったって思えたのは。

──そういう意味でも渋公でのライブは2013年の締めくくりだったと思いますし、さらにその先へステップアップしていこうという藍井さんの気持ちが表れていたと感じました。

2013年10月に東京・渋谷公会堂で行われたワンマンライブ「Special Live 2013 ~Starlight Reunion~」でのライブの様子。

それが自分にとっての転換期なのかはまだよくわかってないんですけどね。ステップアップともちょっと違うかな……いつも「ずっとここから」っていう気持ちなので。シングルを出してもライブをやってもずっとここからまたスタートだっていう状態です。今を超えていくことは当たり前のことだと思っていますしゴールも求めるものでもないのかなって。だからよりよいもの、より楽しんでもらえるもの、より音楽っていいなって思ってもらえるものをこれからも作っていきたいです。

──経験値を積み上げていってレベルアップはしていくと思うんですけど、その終わりはどこなのかっていうと?

レベル99で終わりじゃないというね(笑)。永続的にレベルアップできるものでもないというのはわかってますし、例えば喉が壊れてしまうかもしれないですし。何が起こるかわからないから、よくあと何回ワンマンライブができるんだろうって考えてしまうんですよ。そう考えると適当なことは絶対できないですし、もっと皆さんに恩返しもしていきたい。

──でもまだデビューして2年くらいですよね。

365日って長く感じるかもしれないですけど2013年は本当にあっという間だったんですよ。実感としては1カ月くらいかも(笑)。だから「BLAU」のツアーのときの映像を観ると「もうこんなに経っちゃってるんだ」って感覚があって。そう考えると少ないライブの中で私は何を残して何を伝えていけるのかって考えちゃいます。

──いろんなことをかなり深くまで考えてしまう性格ですか?

よく考えすぎって言われます。でも深いところは人には言わないで考えすぎて自爆しちゃう(笑)。

ニューアルバム「AUBE」/ 2014年1月29日発売 / SME Records
初回生産限定盤A [CD+Blu-ray] 3900円 / SECL-1450~1
初回生産限定盤A[CD+DVD] 3600円 / SECL-1452~3
通常盤[CD] 3000円 / SECL-1454
CD収録曲
  1. dawning
  2. サンビカ
  3. 近未来交響曲
  4. シリウス
  5. アストラル
  6. SAILING
  7. コバルト・スカイ
  8. nayuta gride
  9. 惑星の唄
  10. 翼の行方
  11. 虹の音
  12. Daydream
  13. KASUMI
  14. A New Day
初回生産限定盤A,B Blu-ray / DVD収録内容
  • コバルト・スカイ(Music Video)
  • シリウス(Music Video)
  • クロイウタ(Music Video)
  • 虹の音(Music Video)
  • KASUMI(Music Video)
  • サンビカ(Music Video -Live ver.-)
藍井エイル(あおいえいる)

北海道札幌市出身の女性シンガーソングライター。幼少の頃より音楽に親しみ、高校在学中はバンドのボーカルとして活動していた。動画サイトへの投稿をきっかけに大きな注目を集め、2011年4月にアニソン雑誌「リスアニ!」の付録CDにオリジナル曲「frozen eyez」が収録される。同年10月、テレビアニメ「Fate / Zero」のエンディングテーマに起用されたシングル「MEMORIA」でメジャーデビュー。2012年9月に「AURORA」、11月に「INNOCENCE」と人気アニメのテーマ曲となったシングルを次々とリリースし、2013年1月に初のオリジナルフルアルバム「BLAU」を発表。11月13日にTBS系アニメ「キルラキル」のオープニングテーマ「シリウス」を5thシングルとして発売した。2014年1月1日には6thシングル「虹の音」をリリースし1月29日には2ndアルバム「AUBE」を発表した。