シングル「太陽に笑え」でデビューして1年半、ようやくAnlyが1stアルバム「anly one」を完成させた。沖縄県の伊江島に生まれ、父親の影響もあって主に洋楽を聴いて育ったという彼女が書く曲は、おおらかなダイナミズムと若々しいエネルギー、10代の繊細さがあふれている。そうした持ち味を伝える楽曲をシングルで発表してきた彼女の10代を締めくくるチャレンジは、スキマスイッチとのコラボレーション。TVドラマ「視覚探偵 日暮旅人」のエンディングテーマとして共作した「この闇を照らす光のむこうに」だ。この最新曲を含む14曲からなる「anly one」に込めた思いを、心置きなく語ってもらった。
取材・文 / 今井智子 撮影 / 草場雄介
「これが私です」と見せられるアルバム
──1stアルバム「anly one」完成、おめでとうございます。まずはできあがった感想をお願いします。
「これが私です」と見せられるアルバムになったなと思います。すごく私らしいアルバムができたなと。いろいろ今まで活動してきて、「これだ!」と思って生み出した曲が全部入っているので、いつでも原点に戻れるようなアルバムになったと思います。
──1曲目「太陽に笑え」はデビュー曲でした。やはりこの曲からアルバムが始まる意味があると思いますが。
本当に「太陽に笑え」が私の最初の一歩で原点。この曲を聴くと、一番私を感じられますね。曲順を考えるときに、どう考えてもこの曲じゃないと始まった感じがしなかったので、これを最初にしました。次の「FIRE」は新しい曲で、エレキだけでやってるロックなんですけど、「太陽に笑え」を作っているときに思い付いた曲で。初めて本を読んでメロディと歌詞が浮かんできたんです。「ほんとうの花を見せにきた」(桜庭一樹・著)というファンタジー系の話なんですけど、竹のお化けの話で。そのお化けはずっと生き続けるんですけど、太陽に当たると燃えてしまうんです。でもそのお化けは大切なものを守るために命を燃やしていくんですね。その姿が素敵だなと思って。“燃えてる”みたいな熱さを「太陽に笑え」からつなげたいなと思い、2曲目にしました。
──次の「笑顔」はテイストが柔らかに変わります。
この曲は、私が考える“笑顔”の意味をストレートに表現した曲です。
──この歌にはご家族への気持ちを感じます。
伊江島で思い付いた曲だったので、そういう感情も入っていますね。風景とか、家族との好きな思い出とか、私を囲んでいる生活の中にあふれている光景を入れてみました。アコギの音が聞こえるようにというのはすごく意識していて。自転車に乗ってるような雰囲気が欲しくて、それで、裏で鳴ってるビートっぽいのもアコギでやってみたりとか。そういうこだわりはいっぱい詰まってます。
──ストリングスも入ってスケール感がありますね。
初めてストリングスが入った楽曲を作りました。これも「太陽に笑え」と同じく根岸(孝旨)さんがアレンジしてくださったんですけど、ストリングスの音色には、こだわりました。
刺激的なスキマスイッチとの共作
──ストリングスは、次の「この闇を照らす光のむこうに」とつながっている感じもありますが、これはスキマスイッチのお二人と作った、話題の曲ですね。お二人とどんなふうに出会って、どんなふうに作業が進んだのか伺いたいです。
この曲はドラマ「視覚探偵 日暮旅人」のエンディングテーマとして書き下ろしたのですが、ドラマの制作スタッフの皆さんが、「誰かとコラボしたらいい化学反応が起きて、普段と違ったいいものができるんじゃないかな」と提案してくださって。それでいろんな方のお名前が挙がった中にスキマスイッチさんもあって……そのときに私は「わあー」って(笑)。伊江島にいる頃、洋楽をよく聴いていたんですけど、スキマスイッチさんの曲もよく聴いていたんです。ピアノとか声とか、一発で誰かわかるアーティストさんってすごいなと思っていたんですけど、スキマスイッチさんもそういうアーティストですよね。ピアノのサウンドとかもドンピシャに好きだったので、バラードを作るならスキマスイッチさんとがいいなと思って。そこで「コラボレーションしていただけないでしょうか」とお願いしたところ、なんとうれしいことに「いいよ。やりましょう」と言っていただけたんです。最初にお会いして、いろんな話をしながら、音楽の話とかで盛り上がって。そのあとにスタジオに3人だけで入って、一緒に作りました。データのやり取りとかじゃなくて。私は普段ギターを弾きながら曲を作るんですけど、このときはピアノをちょっと触ってみようかなと思って、スタジオに行く前に自分が好きなフレーズを3つぐらいスタジオに持って行ったんです。すごいドキドキしながら「こういうのどうですか?」って聴いてもらって。2日ぐらいでメロディができて、今の形になりました。
──共同作業はどんな感じでしたか?
私が持って行ったピアノのフレーズに合わせて、鼻歌で「フーンフン」ってメロディを歌って。「ああそれいいね、それ使おうか」とか「そのメロディのあとはこれがいいんじゃないかな」という感じでした。
──歌詞も同じように?
歌詞は1番と2番を分けて書こうかってことになって。できあがったものに対して「ここはこういう言葉がいいかも」みたいな話を繰り返して、どんどんできていった感じです。
──自分と違う視点の人と一緒に作業するのは、刺激にもなるし新鮮だと思いますが、どうでした?
大先輩で、もう何年も曲を作っているお二人なので、いろいろ話も聞かせてくださったんです。「あの人はこういうふうに作ってるらしいよ」とか、「この詩集がいいよ」って言って谷川俊太郎さんの詩集をくださったりとか。そういう、合間合間でいろんなことを教えていただいたというのが思い出にも残っていて。歌詞に関しても、私は主観的に書くことが多かったんですけど、「神様みたいに俯瞰する、その人の世界を上からのぞいてるみたいな雰囲気で書いてみない?」という提案をしてくださって、そういう書き方もあるんだって思いました。スキマスイッチのお二人が、1つのテーマについて語り合う背中を見れたのも楽しかったです。こんなふうに作ってるんだって。
──Anlyさんは1人で全部詞も曲も作りますけど、2人がそうやって作っていくのを見てどうでした?
うらやましい感じもしたんですけど、大変なこともたくさんあるんだろうなって。人間が2人いたら意見がまったく一緒ということはないだろうし、逆にまったく一緒だったらそれはそれで楽しくないんだろうなって。本当に背中を見てたという感じです、ずっと。たくさん垣間見えるところがありました。
──「この闇を照らす光のむこうに」のテーマは2人と話し合って?
はい。ドラマが「視覚」をテーマにしたものだったので、「目に映らない大切なものってなんだろう」っていうところから「孤独という闇にいるときに、その闇をどうすればいいんだろう? 闇を消すことはできないから、それをどうやって抜け出すか、を僕たちは提案しようよ」って話になって。「この歌自体が、そういう光が見えるようなものになればいいね」と。そういう気持ちになるにはどうすればいいのかなって私もずっと考えてて。この曲の中にある闇は、すごく濃いんです。普通の闇よりもすごく深くて暗い。この暗闇……誰かに対する憎しみとか悲しみとか痛みとかをどうしたら解放できるかなと思ったときに、すべての自分自身のことも他人に対しても、許すということが大切なんじゃないかなと。それが一番優しさが生まれるきっかけになるんじゃないかなと思って。それがテーマになりました。
──そうした大きな曲を、スキマスイッチのお二人と同じ土俵で作ったのは自信にもなるのでは?
そうですね。レコーディングのときとかに、今後の自信につながるような言葉をくださったので。「そのままでいいんだよ」とか「その声のほうがカッコいいよ」とか。私の中でくすぶっていたものを、そのときに取り除けました。
──Anlyさん、声にコンプレックスもあるんですか?
ふふふ(笑)。みんなあるじゃないですか。どんな職業でも「なんで私はあの人みたいになれないのかな」とか。この声がいいと思って聴いてくれてる人がいるのはわかるんですけど、素直に受け入れられてない部分があったりして。でも、やっていくうちに、ただ楽しんで曲に入り込んで歌ってる自分に気付いて「いつもこういうふうにやればいいんだ」と思えるようになりました。
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白い「カラノココロ」と黒い「この闇を照らす光のむこうに」
- Anly「anly one」
- 2017年4月26日発売 / Sony Music Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
3240円 / SRCL-9379~80 -
通常盤 [CD]
2916円 / SRCL-9381
- CD収録曲
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- 太陽に笑え
- FIRE
- 笑顔
- この闇を照らす光のむこうに
- サナギ
- 傘
- カラノココロ
- Enjoy
- だから
- レモンティー
- いいの
- Don't give it up!
- EMERGENCY
- Come back
- 初回限定盤DVD収録内容
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Anly 1st Anniversary Live@SHIBUYA eggman(2016/11/25)
- 太陽に笑え
- Bye-Bye
- 傘
- いいの
- Enjoy
- EMERGENCY
- カラノココロ
- Anly 1st Live Tour 2017 “anly one”
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- 2017年6月9日(金)愛知県 ell.SIZE
- 2017年6月10日(土)大阪府 knave
- 2017年6月17日(土)東京都 原宿アストロホール
- 2017年6月18日(日)沖縄県 桜坂セントラル
- Anly(アンリィ)
- 沖縄・伊江島出身、1997年生まれの女性シンガーソングライター。幼少期から父親が持っていたロックやブルースのCDを聴き、ギターを弾いて過ごした。中学3年生から作曲をはじめ、2014年6月にmiwaの沖縄公演のオープニングアクトを務める。2015年8月にインディーズからシングル「Bye-Bye」をリリース。11月には関西テレビ・フジテレビ系ドラマ「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」の主題歌となるメジャーデビューシングル「太陽に笑え」を発表する。「NARUTO-ナルト- 疾風伝」のオープニングテーマ「カラノココロ」、スキマスイッチとのコラボ曲「この闇を照らす光のむこうに」といった話題曲を次々と発表し、2017年4月に1stアルバム「anly one」をリリースする。