angela|「ファフナー」でしか出せない渾身の叫び

angelaは、ファンになりづらい

──先ほど「ファフナー」のプレイリストに言及しましたが、全26曲というボリュームにも改めて驚かされました。シリーズも16年続いていますし、もはやライフワークと言ってもよさそうな。

atsuko でも、やっぱり続きを書くほうがプレッシャーも大きくなるんです。数シーズン続くアニメの場合、「第1期の主題歌のほうがよかった」みたいな声もよくありますよね。私が歌えば「ファフナー」になるというのは置いておいて、「これをやれば『ファフナー』になる」みたいなセオリーはないんですけど、その中で何か新しいものを取り入れたいという気持ちが、今回であればドイツ語の歌詞になったり。一方で、歌詞はドイツ語なのにサウンド的には島唄を意識したり、謎のミクスチャーになってる(笑)。

KATSU そうだね(笑)。

atsuko(Vo)

atsuko 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」という作品の中でキャラクターたちが生きるためにもがき続けているように、我々も「ファフナー」の楽曲の依頼が来るたびに「どどどどどうしよう?」と思いながら、皆さんに「今度はそう来たか」とか「今までと違うけど、これも『ファフナー』だね」みたいに感じてもらえるような、新鮮な驚きのある曲をいつも目指しています。

──「THE BEYOND」のカップリング曲「私はそこにいますか」(アニメ「蒼穹のファフナー」シリーズ イメージソング)も、スパニッシュとEDMのミクスチャーでしたね。

KATSU かなり狂っていたと思います。

atsuko なんか、混ぜたがりますよね。でも、仮に我々がノンタイアップ曲だけを作り続けていたら、あんな突拍子もないミクスチャーは絶対に生まれてこない。「ファフナー」に限らず、関わるアニメ作品によって引き出しが増えていくというか、持ってない引き出しだったら買ってくるぐらいの勢いで取り組んでいるので。そういう意味では、毎回自分の知らない自分が現れるので、おかげで自分に飽きずにいられる(笑)。

──それは大事なことですよね。

atsuko でもだからこそ、自分でも気付いているんですけど、angelaってファンになりづらいアーティストだと思うんです。普通のバンドなりグループだったら、ロックならロック、ダンスミュージックならダンスミュージックとか、なんらかの音楽ジャンルに根差していて、そのジャンルが好きな人たちがファンになるわけで。我々はアルバムでも曲ごとにまったく違うことをやっているので、そんなangelaのことを好きでいてくれるのは……。

KATSU 特殊な人だよね。

atsuko いや、優しいんだよ(笑)。私たちが何をやっても「angelaならしょうがない」と受け入れてくれる優しさを、ファンの皆さんは持っている。だから17年半も活動できているんだと思います。

KATSU angelaがこうなったのは、キングレコードのせいですよ。「はめふら」の次に「ファフナー」のタイアップを持ってきたりするから(笑)。

atsuko キングさんの「おかげ」ね(笑)。キングさんが私たちになんらかの可能性を見出してくださったから、「アホガール」や「はめふら」の楽曲作りを通して新たな一面を出せたし、それをファンの皆さんも受け入れてくれた。だから本当にアニソンは、自分たちを肯定してくれる大事な居場所だなと毎回思っております。ありがたい。

ソルフェジオ周波数に関しては、ググってもらったほうが早い

──カップリング曲「おやすみ」は、公式YouTubeチャンネルで展開されている企画「angela チャンネル ドーガ de どーだ!!」内で、KATSUさんが「奇跡の周波数」といわれるソルフェジオ周波数に着目したことで生まれた曲なんですよね。

KATSU 実はずいぶん前からソルフェジオ周波数を曲に取り入れたいなと思っていて。ソルフェジオ周波数というのは簡単に言えばリラックス効果とかヒーリング効果があるといわれる周波数で、全部で9つあるんです。中でも528Hzは「無限の可能性」「DNAの修復」と謳われていて、最もポピュラーなんです。

──動画を拝見しましたが、528Hzは上の「ド」の音(522Hz)より少し高い音なんですね。

KATSU そう。それで言うと「ラ」の音は440Hzで、これは第一次世界大戦以降、世界基準になっているんです。でもそれよりもっと昔、例えばベートーヴェンやモーツァルトが生きていた200年以上前の時代のチューニングが、今と同じだったという確証はまったくない。ではどの周波数を基準にしていたかというと、それは恐竜の肌の色が何色かわからないのと同じぐらい、謎とされているんです。レコードもない時代だから、残っているのは譜面だけ。そういう意味では化石より資料が少ないとも言えるんですが、その中で、実は当時の「ド」の音が、ソルフェジオ周波数の528Hzだったんじゃないかという説がある。だとしたら今僕らが聴いている「運命」と、当時ベートーヴェンが弾いていた「運命」はピッチが違っている。それは十分あり得る話だと思うんですよね。

atsuko KATSUさんは動画で「ソルフェジオ周波数の愛好家が多い」と言っていたけど、本当なの?

KATSU いっぱいいるんだって。例えば「ラ」の音を440Hzよりも少し低い周波数でチューニングするグループとかがいて、それをなんとかチューニングというんですけど……。

atsuko 雑にもほどがある(笑)。その「なんとか」が大事なんでしょ!

KATSU YouTubeに動画も上がっていたから僕も聴いてみたけど、別に低いとも感じないし「へえ、いい曲じゃん」ぐらいの感想だった(笑)。まあ強いて言うなら、都市伝説という言い方が一番近いかもしれないですね。

──それ、今から「おやすみ」の話をしづらくなりませんか?

KATSU(G, Key)

KATSU いや、結局、その周波数が好きかどうかという点に尽きるんですよ。僕に関していえば、常に528Hzの「ピー」というサイン波が鳴っている状態で曲作りをしていたんですね。メロディがその「ピー」とちゃんとハモっているかをチェックするために。だから「ピー」を延々と聴いていたんですけど、不思議と嫌じゃないんですよ。むしろ気持ちよくて、なんか眠くなっちゃう。エンジニアさんも、ミックスするときに何十回何百回とループ再生しながら音のバランスを整えていくんですけど、「この曲は眠くなる」と言っていて。

atsuko 曲調のせいじゃない?

──身も蓋もない(笑)。

atsuko KATSUさんは動画でもいろいろ熱く語っているんですけど、私は「へえ、そうなんだ。やりたいならやれば? 私はよくわかんないけど付き合うよ」ぐらいのスタンスだったので。まあ、いいバランスだったんじゃないかなと。

KATSU 2人して前のめりになっちゃうと、スピリチュアルなほうに行っちゃうからね。あと、元も子もないことを言うと、ソルフェジオ周波数に関しては、動画で僕の説明を聞くよりググってもらったほうが手っ取り早いです(笑)。

寝るときはリピート再生しないように

──「おやすみ」の歌詞は、普段のatsukoさんの歌詞とはずいぶん雰囲気が違いますね。

atsuko 何も心に残らないような、どこにも引っかからないような言葉を探しながら書くという、いつもとは正反対の書き方でしたね(笑)。普段だったら言葉に意味を求めてしまうんですけど、この癒しの音楽で「私はなぜ生きているのだろう?」みたいなことを語られると……。

KATSU うぜえ(笑)。

atsuko だから邪魔にならない言葉を選んで。それはそれで面白い作業でした。

KATSU なんか、普段の僕らの音楽との違いってありました? それともただのバラードに聞こえるのか。

──リラックス的な意味でですか?

KATSU いや、普段のangelaの曲ではない感じに聞こえていれば十分なんですけど。

angela

──間違いなく、いつものangelaとは違いました。atsukoさんのウィスパーボイスも新鮮でしたし。

KATSU 自分で作っておいてなんだけど、「DNAの修復」とか言っても検証のしようがないんですよね。愛好家の間では、528Hzは眼精疲労に効くとか、聴いている間は視力がよくなるとか……。

atsuko 嘘だあ。プラシーボ効果じゃないの?

KATSU 言っちゃったよ(笑)。まあ、僕らとしては「おやすみ」は初の試みというか実験であり、angela流のヒーリングミュージックに仕上がったと思っているので、この曲を聴いて皆さんが眠くなってくれれば成功だなって。ただCDをそのまま再生し続けちゃうと「叫べ」のインストバージョンが始まっちゃうから。

atsuko 叩き起こされる(笑)。

KATSU 叫べ! おやすみ、叫べ! おやすみ。

atsuko 両極端ですみません。寝るときに聴く場合はリピート再生もしないように、ご注意ください。