もっとカッコよく売りたかった
──でも今回のベスト盤を通して拝聴して、おっしゃる通りジャンルレスでありながらどれも「angelaの曲」としか言いようのない曲になっていると感じました。それはすなわち音楽性に一本芯が通っているということになるのでは?
KATSU 15年という年月がそうさせた部分も大きいと思いますね。例えば「All Time Best 2010-2017」のDISC 1に入ってる「蒼い春」(2010年7月発売の16thシングル)は、「生徒会役員共」っていうアニメのエンディングテーマだったんです。昔angelaの事務所で働いてた人がたまたまテレビでこのアニメを観てて、「クレジットが出るまでangelaの曲って気付かなかった」と言ってくれたんです。そのときはまだデビューして7、8年だったのかな。
中西 そうですね。
KATSU だからたぶん、この15年で「angelaはなんでもやる奴らなんだ」っていうのがなんとなく刷り込まれていったと言うか、そもそもangelaが本来やりたかったのはそういうことだったのかなと。ただ、それは世間では受け入れられない場合があることも承知で、例えば初めて「SURVIVE!」(2018年7月発売の27thシングル)を聴いてangelaを気に入ってくれた人が、次に「全力☆Summer!」(2017年7月発売の26thシングル)を聴いたら「これじゃない」みたいになることもあると思うんです。でも、最近ようやく「angelaならやるよね」って思ってもらえるようになってきた感触があって。特にアルバム「Beyond」で、バナナの着ぐるみを着たビジュアルを冗談で出したんですけど、これはホントは炎上商法のつもりで(参照:angela、バナナすぎる新ビジュアルで従来のイメージを“Beyond”)。
atsuko 以前もお話ししましたけど、そのバナナのビジュアルがファンの方たちに受け入れられてしまい、本来のカッコいいビジュアルを出しづらくなり(笑)。
中西 いつしかそういう土壌ができあがってましたね。
atsuko そう中西さんはおっしゃってくれますけど、多分ホントはもっとカッコよく売りたかったんだと思うんです。
中西 でもそれはね、早いうちから「これは無理だな」って。
一同 ははは(笑)。
中西 無理って言うか、やっぱりビジュアルはクールなのに、ライブとかイベントとかではおしゃべりがものすごく面白いっていうのがたまらなかったんですよね、当時から。なので、そのギャップも殺しちゃいけないなって。
angelaは“かけがえのない中間管理職”
──今回、15年の軌跡をまとめたベスト盤がリリースされるわけですが、angelaにとってターニングポイントになった曲を挙げるとすれば、どの曲になりますか?
中西 なんだろう……あくまで僕の中ではですけど、「K」の「KINGS」(2012年10月発売の19thシングル)と、「シドニアの騎士」の「シドニア」(2014年5月発売の21stシングル)、そして「蒼穹のファフナー EXODUS」の「イグジスト」(2015年2月発売の23rdシングル)ですね。というのも、まず「K」という、今まであまりなかった女性のファンが多くついている作品の主題歌を歌い、今度は反対に男性に人気の「シドニアの騎士」でずばり「シドニア」というタイトルの曲を打ち出し、さらに2004年からずっと背負い続けている、「ファフナー」シリーズという十字架のような作品でも存在感を示した。これらの3曲それぞれ新しい扉をこじ開けた感があって、かつangelaのお二人の生き様を改めて感じましたね。
KATSU 僕は、やっぱりデビュー曲の「明日へのbrilliant road」ですかね。angelaは結成して25年になるんですけど、「明日ブリ」がなかったら今の自分たちはないし、あと来年はデビュー16周年じゃないですか。僕は岡山で生まれて、17歳の誕生日に東京に出てきたので、両親に育てられた年数とキングレコードに育てられた年数が来年同じになっちゃうんですよ。それから今の事務所も、デビューしたときに中西さんに相談したんですよね。
中西 そうでしたね。
KATSU 僕たちは路上の野良犬だったので「飼い主(事務所)を探したほうがいいですかね?」って聞いたら中西さんは「僕はこれから先、angelaとは第三者を介すのではなく、直接やりとりをしたい。だからお二人と松浦さんで新しく事務所を作ってください」って言われて。
atsuko どこか紹介してくれてもいいじゃないですか。何もわからないストリートミュージシャンに「自分たちで事務所を作れ」って。でも「会社の登記ってどうやるんですか?」みたいなとこから付き合ってくださってね。
KATSU そうしてできた事務所、ミュージック・ワンダー・サーカスもずっと続いてるし。そういう意味では、人生における最大のターニングポイントが「明日ブリ」になると思いますね。
──atsukoさんはいかがですか?
atsuko KATSUさんが言う通り「明日へのbrilliant road」で人生が変わって、その延長線上に「蒼穹のファフナー」の主題歌の「Shangri-La」(2004年8月発売の6thシングル)とかがあったんですけど、それからしばらくしていわゆる萌えアニメ全盛期みたいな時期に、一瞬私たちの需要がなくなったんですよ。
──確かに、angelaには萌え系のアニメのテーマソングを担当しているイメージはないですね。
atsuko そうでしょ? 私たちにタイアップのお話が来なくなりつつはあったんだけど、アニソンのフェスとかイベントは増えていたんです。そういう場に呼ばれるたびに「イベントでは盛り上げたもん勝ちみたいな部分があるな」と感じていて。で、いろんな方のライブを参考にしつつ、より大人数で一体になれるような曲にチャレンジしたのが「KINGS」だったんです。それまでは、アニソンの歌詞を書いても主人公と同じ目線と言うか、ヘタしたらキャラソンにもなり得るぐらい、狭い視野で見ていたところがあったんです。そうじゃなくて、もちろん個々のキャラクターにも注視しつつ、より俯瞰して、なんなら作品だけじゃなくてアニソン業界の現状すらも視野に入れるぐらいの大きな視点を持って曲を書き始めたのが「KINGS」あたりからなんですよ。そのチャレンジがあったからこそ「シドニア」や「イグジスト」で、中西さんがおっしゃった「新しい扉のこじ開け」に成功したし、結果としてより自由になれた気がします。
──今、曲作りにおける変化のお話が出ましたが、中西さんは15年間近くangelaのことをご覧になられて、なんらかの変化は感じられます?
中西 本質はまったく変わってないと思ってます。ただ、お二人に対する周りの信頼と期待がどんどん高まっているので、それに応えようとする責任感はデビューしたときとは比べものにならないほど増していますよね。なので、最初期から「いかに作品サイドからのオーダーを面白く返してやろうか」「どうやってみんなをビックリさせようか」みたいなファンタジスタ的な精神はお持ちでしたけど、それがより強くなってる感じはあります。
atsuko 今私たちが籍を置いているKING AMUSEMENT CREATIVEのアーティストって声優さんと歌手の両方をされている方がほとんどと言うか、純粋な歌手ってほぼ私たちだけじゃないですか。みんな、本当は私たちのことをどう思ってるんですか?
中西 いや、こないだうちのプロデューサーやディレクターたちとも話したんですけど、いろんなアーティストさんがいる中で、たぶん一番スタッフに話しかけてくれるのが……。
atsuko・KATSU あははは!(笑)
中西 angelaのお二人なんですよ。言うなればみんなの接着剤、あるいは潤滑油になってコミュニケーションを取りやすくしてくれてますし。そういう意味では“かけがえのない中間管理職”。
atsuko ハンバーグのつなぎの卵とパン粉みたいな。どっちかって言うとKATSUさんがパン粉かな?
中西 大事です。それがないとおいしいハンバーグはできませんから。
- angela
「angela All Time Best 2003-2009」 - 2018年10月24日発売 / KING RECORDS
-
[CD2枚組] 3564円
KICS-3755~6
- DISC 1 収録曲
-
- 明日へのbrilliant road
- 綺麗な夜空
- The end of the world
- over the limits
- 幸せの温度
- How many?
- merry-go-round
- butterfly
- Stay With Me
- 笑顔でバイバイ
- fly me to the sky
- in your arms
- Shangri-La
- Separation
- cheers!
- DISC 2 収録曲
-
- 未来とゆう名の答え
- DEAD SET
- Peace of mind
- 果て無きモノローグ
- 人生遊戯
- gravitation
- 恋の first run
- Beautiful fighter
- 約束
- Spiral
- Link
- 光、探せなくとも
- 此処に居るよ
- オルタナティヴ
- memories
- angela
「angela All Time Best 2010-2017」 - 2018年10月24日発売 / KING RECORDS
-
[CD2枚組] 3564円
KICS-3757~8
- DISC 1 収録曲
-
- 蒼い春
- FORTUNES
- 蒼穹
- さよならの時くらい微笑んで
- 「リアル」は…
- キラフワ
- THE LIGHTS OF HEROES
- いつかのゼロから
- KINGS
- To be with U!
- 僕じゃない
- ANGEL
- 遠くまで
- バイバイオーライ
- キラキラ-go-round
- DISC 2 収録曲
-
- シドニア
- Different colors
- イグジスト
- 暗夜航路
- その時、蒼穹へ
- 愛、ひと欠片
- 騎士行進曲
- DEAD OR ALIVE
- ホライズン
- 愛すること
- KIZUNA
- 僕は僕であって
- 全力☆Summer!
- Calling you
- 笑顔をみせて
- angela(アンジェラ)
- 岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのちに結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当している。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」を発表。この曲は同年、アニメファンが選ぶ「アニメーション神戸賞」で主題歌賞を受賞した。2017年3月に自身初の東京・日本武道館単独公演「angelaのミュージック・ワンダー★特大サーカスin日本武道館~僕等は目指したShangri-La~」を開催。同年12月にはニューアルバム「Beyond」をリリースした。2018年5月に山梨・河口湖ステラシアターにて、メジャーデビュー15周年を記念したライブ「angela 15th Anniversary Live」を実施。10月にはベストアルバム「angela All Time Best 2003-2009」「angela All Time Best 2010-2017」を同時リリースし、東京・日比谷野外音楽堂にてワンマンライブ「angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音」を開催する。
- angela デビュー15周年特集
2018年11月27日更新