「SURVIVE!」は進化を感じさせる曲
──「SURVIVE!」は従来の「K」楽曲よりも、ひときわラウドでいかつい曲になりましたよね。
atsuko そうですね。男声のコーラスというかかけ合いも、男臭くて熱いですね。
KATSU 実は、アニメの「K」シリーズは第1期があって、劇場版があって、第2期で完結するってGoRA(「K」シリーズの原作者である7人組の作家集団)さんから聞いてたんですよ。でも、今回めでたく新しい劇場版の制作が決まって、僕としてはそれがめちゃくちゃうれしかったんですよね。それで今回は「KINGS」(アニメ「K」第1期オープニングテーマ)をはじめとする今までの「K」楽曲の要素を詰め込みたいと考えたんです。例えば「SURVIVE!」のイントロは、「Different colors」(劇場版アニメ「劇場版 K MISSING KINGS」主題歌)にちょっと似てるギターのリフだったり、「KINGS」の歌詞に「Big bang」っていう言葉があったんですけど、「SURVIVE!」では「BANG! BANG!」って言葉を使っていたり……。
atsuko そこ重要?(笑)
KATSU うん。重要。「SURVIVE!」は、進化を感じさせる曲にしたかったんですよね。「K」のお客さんたちが喜んでくれるものを作りたいっていうのが根底にはありつつ、いくつも公開される劇場版の共通主題歌にふさわしい曲となると、力が入りましたね。
──歌詞も荒々しいですよね。なりふり構わない感じと言いますか、雑草根性みたいなものを感じさせます。
atsuko 今回の劇場版は時系列的にテレビシリーズより前の“エピソード0”みたいな話が多くて。だからキャラクターたちもより若くて、より尖ってるんですよ。それが荒々しさにつながっているんだと思います。で、GoHandsさんは仕事がめちゃくちゃ早くて、私がワンコーラス分の歌詞を提出したら、それに合わせて即座にオープニング映像の絵コンテを書いてくださってたんです。例えば「殺気立ったちっぽけな We are..」のところでは赤のクランたちが殺気立ってたり、「切り開け This world 無表情で」のところでは淡島(世理)さんが無表情で立ってたり(笑)。それがすごくうれしくて。その絵コンテには、シロくん(「K」シリーズの主人公・伊佐那社)っていうキャラクターが空から落ちてくるシーンがあったんですけど、それを見て「堕ちてまだ SURVIVE!」っていう歌詞ができたんだよね。
KATSU うん。GoHandsさんの絵コンテを見て、atsukoも歌詞を書き換えて。
──そんな往復書簡みたいなやりとりが。
KATSU 考えてみれば、シロくんってずっと落ちてるんだよね。アニメ1期の1話でも落ちてるし、最初の劇場版では冒頭でも最後のシーンでも落ちて、アニメの2期が始まるまで落ち続けてる。どんだけ落下してたんだっていう(笑)。それを受けて「じゃあ、ここの歌詞も『堕ちて』じゃね?」みたいな。
atsuko そうやって絵コンテと歌詞を密に合わせて、あるいはお互いの創作物をぶつけ合って、そこから刺激をもらって自分の歌詞も変わっていくっていうのは楽しいですね。本来、私たちは音楽を作るだけの人間なのに、そういうふうにアニメの制作チームに組み入れてくださって、感謝しかないです。
KATSU GoHandsさんは仕事の早さも異常なんですけど、アニメーターの方もけっこうみんな若いんですよ。で、オープニングの映像を見たときに彼らの愛情が伝わってくるというか、「かっこいいオープニングにするぞ!」みたいな熱意を感じてジーンときちゃう。だから今度、お菓子持って遊びに行こう。
atsuko うん。たんまり買っていってあげよう。
angelaがアニメと深く関われる理由
──アニメ「蒼穹のファフナー」は、主題歌「Shangri-La」の影響で最終回のシナリオが変わったという話もされていました(参照:angela「Beyond」インタビュー)。なぜそこまでangelaはアニメに深く関われるのでしょう?
atsuko 初めて自分たちが認めてもらえたのがこのシーンだからっていうのは大きいですよね。上京して闇雲にライブをやってもお客さんは増えず、ストリートライブもやって……っていうのを10年続けて、お互い限界を感じ始め「やめる?」みたいな話になったときに「アニメの曲を歌いませんか?」とキングレコードさんに言われたことが今につながっているので。言うなれば、私たちに新たな居場所を提供してくれたのがアニメなので、それに対しては何も惜しむものがないんです。
KATSU だから少しでもいいものを作ろうと、「あれがやってみたい」「これがやってみたい」って自分たちのアイデアを言える範囲でどんどん言っているんですけど、制作サイドの皆さんもそれをちゃんと受け止めてくれるんです。GoHandsさんも、「蒼穹のファフナー」の制作会社のXEBECさんも。なのでangelaも調子に乗ってどんどん曲を書きたくなるし、オファーもされてないのに「これ、できちゃったんですけど」って曲を書くこともある。そういう関係でいられるのは非常にありがたいですね。
──15周年のライブのMCでは、キングレコードに声をかけられたときのことも話してらっしゃいましたね。ご自身を「よくわからない草花」に例えて。
KATSU きれいに咲いてる花を摘んできて花瓶に挿すんじゃなくて、道端に生えてたよくわからない草を、周りの土ごと掘り返して鉢に植えたら変な花が咲きました、っていうのがangelaだよね。
atsuko キングさんはすごく特殊だと思います。本来は、例えば大手事務所さんから紹介された新人歌手を売り出すとか、何かのコンテストで優勝したアーティストのCDを出すとか、すでにインディーズで人気のあるバンドをメジャーデビューさせるとか、何らかのパターンがあると思うんですね。そんな中で、私たちには何らコネも実績もないし。
KATSU 当時は実力すら定かではない。
atsuko 正直、定かじゃなかったよね。「ホントに咲くのかこれ?」っていう(笑)。そもそもストリートライブやってる人間に、いきなりアニメの主題歌を歌わせてデビューさせるなんて聞いたことがないし。しかも、とりあえず様子見でCDを1枚出してみるみたいな感じじゃなくて、デビューしたときから「来年も『蒼穹のファフナー』という作品を……」という話をされていたので、稀有なレーベルだと思います。
──しかしデビュー曲でありアニメ「宇宙のステルヴィア」の主題歌である「明日へのbrilliant road」も、「蒼穹のファフナー」の「Shangri-La」も、河口湖でのライブを拝見してまったく色褪せていないと感じました。ある意味、当時からすでに花は咲いていたのでは?
atsuko ありがたいまとめですね(笑)。ただデビュー曲に関しては、作った当時は「こんな突拍子もないメロディで大丈夫?」みたいな不安が大きかったんですよ。その頃の私たちはアニメを熱心に観ていたわけでも、アニソンを聴いてきたわけでもないし、アニソン業界のこともよく知らなかったですし。それなのに、例えば桃井はるこさんが「『明日へのbrilliant road』がテレビで流れたとき、すごい衝撃を受けたんです」と褒めてくださったりして。とても光栄ですし、自信にもなりましたね。
──「Shangri-La」も当時びっくりしました。と言いますか、今聴いてもあのメロディは衝撃的です。
atsuko 「なんじゃこりゃ?」って思いますよね。なのに今でもカバーしてくださる方もいらっしゃるし、KATSUさんも言ってましたけど、angelaと言えば「Shangri-La」っていうイメージもあるし。そうだ、この間とあるテレビ番組に出たときに、angelaのカラオケ人気曲トップ10が番組内で発表されて、1位が「Shangri-La」だったんですよ。そこで私は「まだ『Shangri-La』の壁は越えられないのか!」って頭を抱えたんですけど、実は2位が去年発表した「全力☆Summer!」だったんです。それが、なんだかすごくうれしくて。
KATSU まあ、1位が「全力☆Summer!」だったらそれはそれでショックかもしれない(笑)。
atsuko かもね(笑)。でも、そうやって昔の曲も今の曲も認められているっていうのも、大きなモチベーションになりますよね。
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「K」のカラーで統一
- angela「SURVIVE!」
- 2018年7月18日発売 / KING RECORDS
-
期間限定盤 [CD]
1404円 / KICM-91853 -
通常盤 [CD]
864円 / KICM-1854
- 期間限定盤収録曲
-
- SURVIVE!
- KINGS Live ver.
- To be with U! Live ver.
- KIZUNA Live ver.
- SURVIVE! off vocal ver.
- 通常盤収録曲
-
- SURVIVE!
- SURVIVE! off vocal ver.
- ライブ情報
angela「angela LIVE 2018 All Time Best in 日比谷野音」 -
- 2018年10月27日(土) 東京都 日比谷野外大音楽堂
- angela(アンジェラ)
- 岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのちに結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当している。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」を発表。この曲は同年、アニメファンが選ぶ「アニメーション神戸賞」で主題歌賞を受賞した。2017年3月に自身初の東京・日本武道館単独公演「angelaのミュージック・ワンダー★特大サーカスin日本武道館~僕等は目指したShangri-La~」を開催。同年12月にはニューアルバム「Beyond」をリリースした。2018年5月に山梨・河口湖ステラシアターにて、メジャーデビュー15周年を記念したライブ「angela 15th Anniversary Live」を実施。同年7月には劇場版アニメ「K SEVEN STORIES」の共通オープニング主題歌「SURVIVE!」をシングルリリースする。
2018年11月27日更新