angela|固定観念を“Beyond”するために

angelaの曲として安心して聴いていられる曲

──この「Prologue」から2曲飛ばして、7曲目の「SEVEN STORIES」は2018年公開予定の劇場版アニメ「K SEVEN STORIES」のイメージソングです。この「K」シリーズも、angelaと関わりが深い作品ですね。

KATSU はい。僕は「K」を観ると、不思議なことに、ただキャラクターが出てくるだけで感動しちゃうんですよ。ストーリーと関係なく。それはテレビシリーズの第2期(「K RETURN OF KINGS」)のときも感じていて、言葉にするなら“会いたかった人にまた会えた”ような感覚ですかね。その気持ちを表現しようと、「みんな、新しい『K』を楽しみに待っててね」って思って書いたのが「SEVEN STORIES」です。それプラス、劇場版の「K」は6つのエピソードと1つのスピンオフ作品からなるので、楽曲もそれら7つの物語を総括するようなものにしたかった。

atsuko 劇場版はエピソードごとにメインキャラクターが異なるんですけど、例えばあるキャラは孤独を抱えていたり、またあるキャラは過去にトラウマがあったりとか、どの話もある種の憂いに貫かれてるんですよ。その憂いを孕みつつ、ロックなノリで突き進む感じ。それが私たちの中の「K」のイメージなので、今回もその方向で、切なくも荒々しい曲にしたいなと。

──「SEVEN STORIES」は、アルバム収録曲の中では比較的わかりやすく“angelaらしい”曲かもしれないですね。

atsuko はい。ある意味、angelaの曲として安心して聴いていられる曲だと思います。自分で言うのもなんですけど(笑)。

──曲順が前後しますが、「SEVEN STORIES」が“らしい”曲であることを際立たせているのが、その前の5曲目「語り継がれしもの」と6曲目「あの夏空」ではないかと。

atsuko そうですね。両曲とも自然遺産番組(「Excellent Japan 日本列島再発見」)のために書いた曲なので、angelaのロックナンバーとはまったくテイストが違います。「語り継がれしもの」は太古の自然を讃えるような神秘的なイメージを喚起したかったし、「あの夏空」は郷愁の念と言うか、子供時代を思わせるような曲にしたくて。

──「あの夏空」は三線の音色も相まって、沖縄民謡的でもあります。

atsuko そんなちょっとのんびりした空気をかき消すように、吹雪みたいなSEから寂しげなピアノのイントロで「SEVEN STORIES」が始まって。

──この温度差がすごい(笑)。

atsuko 「もうちょっと流れを考えろよ」って思われるかもしれないんですけど、これがangelaなんですよ(笑)。

「こいつ、対抗してきたな」

──そして、8曲目の「Beautiful day」はフロアをかなり意識したEDM。こちらもangelaとしては新機軸ですよね。

atsuko パリピへの憧れから生まれた曲です。

KATSU うん。個人的な話なんですけど、2017年は、僕の中では“アイドルあっちゃん”(3月の東京・日本武道館公演にも登場した、angelaの事務所の後輩で“あっちゃん星のオムライス村”からやってきた17歳という設定のatsukoそっくりなアイドル)にすべて持っていかれた感があって。武道館公演以来、あっちゃんが予想外にブレイクしてしまい……。

atsuko angelaファンの中でも、コアな層がね。

KATSU 実はそのあと、同じ3月に“DJお兄様”っていうキャラクターが誕生してるんですよ。

atsuko KATSUさんが「AJ Night 2017」っていうイベントでアニクラDJをやったんです。

KATSU 1回だけですけどね。でも、それまでけっこうな時間をかけて、DJについていろいろ勉強して、満を持して豊洲PITでデビューして「これ、イケるんじゃね?」みたいに思ってたら、アイドルあっちゃんブレイクの余波にかき消され。

──その悔しさをアルバムで晴らそうと。

KATSU それもありつつ、そもそも、ここ4、5年のアニソンシーンで僕が面白いなって思ってたのが、アニクラっていう文化なんです。クリエイターの立場からは「DJって、他人の曲をかけてるだけじゃん」みたいに思うかもしれないんですけど、DJはDJで曲をかける順番だったり、曲のサイズだったり、いろんなことを練り上げてステージに立ってるんですよ。要はそこにいるお客さんを盛り上げるという意味では、ロックバンドがやってるロックのライブと目的は一緒なんですよね。

──手法が違うだけで。

KATSU 僕としては、逆に「なんでクリエイターの人がDJやらないんだろう?」って思うんですよ。音楽的な知識や技術も、リミックスの元になる素材も持ってるし、それを自由自在に操れるのに。もちろん、FLOWのTAKEさんとか、DJをやってるクリエイターもいますけど。そんな背景もあり、「自分がDJするならこういう曲をかけたい」と思って作ったのが「Beautiful day」なんです。だからangelaの曲と言うよりも、DJお兄様のトラックなんですよ。

atsuko 出た、「トラック」。言ってみたかったんでしょ(笑)。

KATSU(G, Key)

KATSU うん。実際この曲は、atsukoが歌ったと言うより、atsukoのボーカルテイクをちょっとずつ加工して使ってるんです。要はatsukoの声を楽器として使おうと考えてたから、その歌詞には意味を持たせたくなかったんです。それなのに、atsukoが書いてきた歌詞が……。

atsuko 1行目から「僕等はみんないずれ死ぬんだ」(笑)。

KATSU だから、「こいつ、対抗してきたな」って。

──対抗(笑)。

atsuko 最初はKATSUさんに「それはない」って言われたんですけど、少し時間を置いたら「これはありかも」って。

KATSU 3分考えてOK出しました。

atsuko 例えばクラブで踊ってる最中にいきなり「死ぬんだ」って言われたら、「ええー!」って現実に引き戻されるじゃないですか。でも、それは事実なんですよね。そこに気付かせたうえで、だからこそ今この瞬間を楽しく生きようとか、人に優しくしようっていうメッセージを発することで、お客さんとしては「ああ、そういうことか。イエーイ!」みたいになるかなと。

KATSU これがユニットなんでしょうね。お互いのやりたいことをぶつけ合って「いや、こっちのほうが面白い」ってディスカッションしながら曲ができあがるっていう。

──ちなみに、3分間で何を考えたんですか?

KATSU 仮歌を録ってるときにいったんスタジオを出て、外の階段に座って聴いてみたんですよ。

atsuko 客観的になれる場所でね。

KATSU まず、「僕等はみんないずれ死ぬんだ」っていう歌詞をスタジオで聴いてびっくりしたんです。で、階段でスタジオから漏れてくる音を聴いたときも、やっぱりびっくりしたんですよ。わかっていて2度目も驚けるってことは、これはいい表現なんだなと思ってOKにしました。

angela「Beyond」
2017年12月20日発売 / KING RECORDS
angela「Beyond」初回限定盤

初回限定盤
[CD+Blu-ray Disc]
3888円 / KICS-93658

Amazon.co.jp

angela「Beyond」通常盤

通常盤
[CD]
3240円 / KICS-3658

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. 僕は僕であって
  2. 全力☆Summer!
  3. Dream on
  4. Prologue -君の向こう側-
  5. 語り継がれしもの
  6. あの夏空
  7. SEVEN STORIES
  8. Beautiful day
  9. 道しるべ
  10. Calling you
  11. LOVE★CIRCUS
初回限定盤Blu-ray収録内容
  • 「angela 全力☆Live!2017」ツアー密着メイキング
  • 「此処に居るよ」武道館LIVE用特別映像
angela(アンジェラ)
岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京した後に結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」を発表。この曲は同年、アニメファンが選ぶ「アニメーション神戸賞」で主題歌賞を受賞した。2017年3月には自身初の東京・日本武道館単独公演「angelaのミュージック・ワンダー★特大サーカスin日本武道館~僕等は目指したShangri-La~」を開催。同年12月にはニューアルバム「Beyond」をリリースした。