音楽ナタリー Power Push - angela
ノーメッセージな祭りソングに込めた“らしさ”
憂い感たっぷりの「EIEIO」
──ジャンルにくくられたくない、または離れたいという感覚はどこからくるんでしょう。例えばロックっていうジャンルに収まっているカッコいいロックンロールバンドっていうのも存在するわけで、ジャンルという縛りがその人のクリエイティビティを阻害するものでもないですよね。
atsuko ひと言で言うと飽きっぽいんです(笑)。
──なるほど(笑)。
KATSU やっぱり人と違うこと、人ができないことをやりたいって思うよね。
──となると、アレンジの話を伺おうと思いますが、まさに人ができないことをやりましたよね。いわゆるアニソンをメインに、いい意味で予測不可能な新曲が散りばめられていて。
atsuko 私もそう思います。
──ハードなEDMナンバーである「Come on」のあとに「是、夏祭り」っていう和モノがきて、「Jump up!」みたいにスタジアム級のロックバンドがやるのに似合いそうなスケール感のあるブラスロックもあって。そのあとに「EIEIO」「That's Halloween」という楽曲が続くという。いろんなジャンルの音楽を吸収してangelaとしてアウトプットしたというのが色濃く出た新曲群ですよね。
atsuko はい。
──アルバムは祭りとか愛がテーマとして決まっていても、サウンドデザインはどうやって決めていったんですか? あえて一本化させずに変えようとした?
atsuko そうですね、1曲できたら次はどうしようっていう感じで。
──ホントにジャンルがバラバラですけど、そこで行き詰まることはなかったですか?
KATSU アレンジでは行き詰まってないんですけど、「EIEIO」に関してはサビのメロディが最初にできて、「ここの歌詞は『EIEIO』にしたい」ってatsukoが言ってきたんです。そう指定されると困りましたね。
──AメロもBメロも“EIEIO感”を出していかなきゃいけなくなるというか。
KATSU EIEIOって日本独特な掛け声ですよね。だから和モノにするのかって言ったらそれも違う気がして。それで祭りっていうテーマを考えたときにサンバっていうのを思いついて、スペインの小さな街にこじんまりとしたサンバの祭りがあるのを思い出したんです。祭りになるとみんなが楽器を持って集合してテントの下でお酒を飲むために盛り上がるっていう。なのでこの曲、もとはサンバだったんですけどスパニッシュになったっていう。
──確かに歌ってることは「EIEIO」と威勢がいいけど、トラックは渋いですよね。
atsuko すごい渋いし、憂い感たっぷりに歌ってるんですよ。EIEIOなんて「元気出していこう!」っていう掛け声なのにあの憂いをまとったサウンド、そして熱量低めの歌。でもよくわからないけど一度聴いちゃうとしばらく頭から離れなくなる感じの不思議なオーラをまとった曲だと思います。
KATSU 普通、「EIEIO」っていう歌詞を見たら最後の“O”はキーが上がると思うじゃないですか。
──でも下がってますよね。
atsuko これはメロディを聴いたときに歌詞は「EIEIO」しかないって思ったんですよ(笑)。Aメロとかがない時点で。
──そこは理屈じゃないというか直感的なものとして。
atsuko そうですね。
KATSU 歌詞をつけた人がそう言うんだから仕方ない(笑)。それが正解になるんですよ。
耳に残らない is 悪
──アルバムに入っている新曲の歌詞、ノーメッセージだと言いつつ実はメロディと言葉がすごく有機的に結びついてますよね。「Come on」では「声援」と「Say Yeah!」で韻を踏んでいたり、「Jump up!」では語尾が全部「じゃん」になっていたり。
atsuko 今までいろいろと歌詞を書いてきてKATSUさんにまず言われるのは、どんなにいいことを語っていても耳に残らなかったら悪だっていうことなんですよ。「耳に残らない is 悪」(笑)。
──その詞を書いてるatsukoさんは、言わば悪を生み出していると(笑)。
atsuko そうなんです。どんなにいいこと言っててもそれは悪なんです。だからあまりにも何を言っているのかわからない歌詞は書いちゃいけないと思っていて。ノーメッセージでありつつ、でも曲として聴いたときに何か残るものが必ずある曲を今回は作れたなっていう自信はありますね。
──どの曲にしても基本的にメッセージが明るいですよね。「Come on」や「Jump up!」はもちろん、「EIEIO」もアレンジは憂いがありますけど、言ってることはエイエイオーですから。だからノーメッセージと言いながら、「前を向こう」「熱くなろう」っていうメッセージはあったのかなと思うんですが。
atsuko そうですね。実は私、そこまで明るいタイプの人間ではないんですね。でも長年この仕事をやってきて気付いたのは、やっぱり人は明るいところに寄ってくるっていうことで。
──人を虫みたいに(笑)。
atsuko 夏になったら夜のコンビニに人が集まるみたいな(笑)。私、田舎育ちなので夏の夜コンビニに行けばだいたい誰かしら知り合いがいたんですよ。もしかしたらその頃の記憶が刷り込まれてるのかもしれないですけど(笑)。
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- ニューアルバム「LOVE & CARNIVAL」2016年8月31日発売 / KING RECORDS
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] 3700円 / KICS-93414
- 通常盤 [CD] 3200円 / KICS-3414
CD収録曲
- DEAD OR ALIVE
- Come on
- 是、夏祭り
- 騎士行進曲
- 愛、ひと欠片
- KIZUNA
- 愛すること
- Jump up!
- EIEIO
- That's Halloween
- ストーリーが始まる
- ホライズン
初回限定盤Blu-ray収録内容
- angelaの「ミュージック・ワンダー★大サーカス2015」(2日目公演)
- angela デビュー13周年記念☆拡大版「全部が主題歌ライヴ!!」メイキング映像
- 「愛すること」アニメMV
- 「KIZUNA」アニメMV
ライブ情報
angela Live Tour 2016「LOVE & CARNIVAL」
- 2016年10月8日(土)大阪府 大阪城野外音楽堂
- 2016年10月23日(日)東京都 日比谷野外大音楽堂
- 2017年3月4日(土)東京都 日本武道館
angela(アンジェラ)
岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」を発表。この曲は同年、アニメファンが選ぶ「アニメーション神戸賞」で主題歌賞を受賞した。2016年5月に山梨・河口湖ステラシアターで行われたデビュー13周年記念ライブを成功させ、同年8月にアルバム「LOVE & CARNIVAL」を発表した。