音楽ナタリー PowerPush - angela

現状を打破する“高校野球+合唱+四つ打ちトランス”

全然つまんないから小節の頭だけ別の声

──とはいえ、この曲ってどうやってみんなで歌うんだ?っていう疑問もあるんですよ。特にAメロのコーラスワークなんかは……。

atsuko 笑っちゃいますよね(笑)。

──ええ(笑)。各小節の1拍目……「星間に」の「せい」や「征く」の「く」にだけエフェクトをかけたコーラスをかぶせるという。

atsuko あっ、あそこだけ別録りなんです。最初のボーカルレコーディングでは「♪かんにーい」「♪とーりーで」「♪ゆいーいつ」「♪あんそく」って歌って、あとから私と別の方が「せい」「く」「は」「の」「ち」っていうところを録って、ミックスすると「♪星間に征く砦は 唯一の安息地」になるっていう。ホンットに歌いにくかった!(笑)

──アレンジャーのKATSUさんはなんたるムチャ振りを、と(笑)。

KATSU 違うんですよ。これ、言い出しっぺはatsukoですから。

atsuko メロディができて「ラララ」で仮歌を録るときに実験的に小節の頭の「ラ」だけ声を重ねてみたんです。ただ私自身は歌詞を書いてみたら「あれ、やっぱりあのコーラスはやめ」って感じになってたのに、なぜかKATSUさんが「いや、あれやりたいんだけど」って言い出して。

KATSU だって仮歌の段階で「スゲー発想だな」ってビックリしましたから。しかも歌詞ができて普通に「♪星間に征く砦は 唯一の安息地」って歌ったら、全然つまんなかったんですよ(笑)。

atsuko だからその小節の頭だけつないだら歌詞とは別の文章になってる、みたいなことができたらよかったんですけどね(笑)。

僕、喜んで吹奏楽用のスコア書きますよ

──そしてそのAメロと「KNIGHTS OF SIDNIA」を連呼するBメロは機械的。抑制を効かせて歌っているから、みんなの声が重なったCメロの爆発力がハンパないのも大きな特長ですよね。

atsuko 「♪時局を鑑みて 一丸となれ」って声を合わせ(笑)。普通に生きてたら歌うことはおろか、口にすることもないフレーズじゃないですか。だからこそみんなで歌ってみたら超面白いし、超アガると思うんですよね。

──その作詞作業ってスムーズでした?

atsuko これはツルッと出てきましたね。「歌ってもらうアニソン」っていう意識があったから言葉数はわりと少ないですし、サビも1コーラス目と2コーラス目で全然違うことを歌う、みたいな作り方はしていない。響きは似てるんだけど、言葉がちょっと違うっていう詞になってるから、1コーラス目のフレーズが見つかってしまえばあとは早かったですし。

KATSU そのシンプルなフレーズを繰り返す感じが合唱曲っぽいんですよね。だからどこかの高校が歌ってくれたりしないですかね? 「♪果敢に進む我等 シドニアの騎士」の「シドニアの騎士」のところを自分の学校名に変えたりして(笑)。演奏してくれるブラバンとか合唱部とか応援団があるなら、僕、喜んで吹奏楽用のスコア書きますよ。

みんなに大笑いしながら大合唱してほしい

──ここまでお話を伺うに、なんかノリで作っちゃってる感じがするというか……。

KATSU あっ、すごく考え抜いて作ってるように見えてました?

──はい。そのくらい画期的な曲だと思ってます。

KATSU(G)

KATSU 実はangela的にはニュートラルなんですよ、これ。というのもatsukoの頭の中って普段からこんな感じですから。それを本当に自然な形で提出しただけといえばそれだけなんです。むしろマイナー進行でテンポの速い「(蒼穹の)ファフナー」や「K」のテーマソングのほうがロジカルに作ってる。というのも、20年くらい前、まだangelaを結成する前にatsukoから「これ、アタシの曲」って聴かされた曲っていうのが……。

atsuko まあヒドかった(笑)。

KATSU ヒドい曲だったねえ(笑)。でもそれこそ「騎士行進曲」にも通じる、いい意味でヘンな曲。その感じが魅力的だったから「この人と音楽をやったらきっと面白いことになる」って思えたし、angelaを結成することになったんです。だから高校野球の応援歌と「宇宙戦艦ヤマト」っていうイメージを持ち寄って作ってはいるけど、僕の中では「『騎士行進曲』はatsukoの曲」っていう印象で。僕自身はカップリングの「愛、ひと欠片」みたいな曲を作るタイプですから。

──ホントにキレイなパワーバラードですよね。

atsuko この曲は劇場版の「シドニアの騎士」のエンディングで流れるんですけど、劇場版ってエンディングの直前まで、まあ激しい戦闘が繰り広げられ、しかもその戦闘がものすごい決着を迎えるから、この上「シドニア」とか「騎士行進曲」みたいな曲が流れてきたら、自分ですら「うわあ……」ってなっちゃうな、と思ったので。この映画の最後は「超面白い!」「超アガる!」って曲じゃない。KATSUさんの誠実さを打ち出すべきだろう、と(笑)。

KATSU 実はマジメで誠実なんですよ(笑)。

atsuko 「愛、ひと欠片」のとき以上に「騎士行進曲」のアレンジをしてるときのほうがKATSUさん、ノリノリでしたけどね。でも、ホントに「騎士行進曲」は早くみんなの前で歌いたくて。で、みんなに大笑いしながら大合唱してほしいですね(笑)。

ニューシングル「騎士行進曲」2015年4月29日発売 / 1296円 / スターチャイルド / KICM-3289 / Amazon.co.jp
「騎士行進曲」
収録曲
  1. 騎士行進曲
  2. 愛、ひと欠片
  3. 騎士行進曲 off vocal version
  4. 愛、ひと欠片 off vocal version
angela(アンジェラ)

岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニング主題歌「シドニア」を発表。この曲がアニメファンが選ぶ2014年のアニメーション神戸賞の主題歌賞を受賞する。そして2015年4月には「シドニアの騎士」の続編となる「シドニアの騎士 第九惑星戦役」のオープニング曲「騎士行進曲」をリリースした。