音楽ナタリー PowerPush - angela

現状を打破する“高校野球+合唱+四つ打ちトランス”

「次の『シドニア』のOPはこういう感じ」という妄想

KATSU そして、そのatsukoのイメージと僕のイメージを全部曲に盛り込んだら、こうなっちゃった(笑)。

atsuko だからKATSUさんの言う通り、偶然と奇跡の産物なんです(笑)。骨組みとなるメロディは1日で完成したのも奇跡的でしたし。

KATSU 1日でメロディができたのには、前期の「シドニアの騎士」が終わってからずっと「また主題歌やりたいな」って思ってたっていうのもあるのかなあ。

atsuko うん。前々から「もしまた『シドニアの騎士』の話がきたら、こういう感じにしてみてもいいかな」っていう妄想を膨らませていた節はありましたから(笑)。

──そのワーカホリックな感じってなんなんでしょう? 去年の春に「シドニア」をリリースしたきり、何も曲を作ってなかったわけではない(参照:angela「Different colors」インタビューangela「イグジスト」インタビュー)。決まっているスケジュールを消化するだけでも十分忙しいはずなのに、オファーのない曲のアイデアも膨らませておきたかったわけですよね?

KATSU たぶん曲作り=仕事って感じじゃないんでしょうね。前期の「シドニアの騎士」の最終話の放送日って僕たち、どこかの地方にいたんですよ。ツアーかなんかで。で、ホテルの部屋で1人でその最終回を観終えたとき「寂しいな」って気持ちになったと同時に「次はこういうことをしてみたいな」っていう欲求が生まれてましたから。

アイドルシーンに後れをとらないために

atsuko あと、ありがたいことにデビューから11年、ずっとアニメソングを書かせてもらってるんですけど、一昨年くらいからちょっと自分に飽きちゃってたんですよ。朝に放送している本当に小さい子供向けのアニメとか、夕方の小学生くらいを対象にしたアニメとか、深夜の萌え萌え系とか、ロボットアニメとか、アニメにはいろんなジャンルがあるから一概には言えないんだけど、シリアスなストーリーのアニメのテーマソングっていうとマイナー調でテンポが速くて、サビでビックリするくらいキーがあがって、みたいな……。

──そういうトレンドはありますよね。

atsuko(Vo)

atsuko シーンの中にいる私たちにももちろんそういう曲がいっぱいあるし、今後絶対に作らないわけではないんですけど、その一方でそれに飽きている自分がいることに気付いたところに「シドニアの騎士」という“遊んでいい場所”って感じの作品が現れて。

KATSU 原作の弐瓶(勉)先生しかり、アニメを作っているポリゴン・ピクチュアズしかり、なんか「もっと遊ぼう、もっと遊ぼう」としてますからね。

atsuko みんなが何か新しいものを求めている現場だから、私たちも現状を打破してもいいのかな?って思えたし、実際「シドニア」という曲で遊ばせてもらえたから、次の曲の構想というか妄想が膨らんじゃったんでしょうね。

──ただマイナー進行で高速でハイキーなアニソンが多い理由には、それをみんなが評価しているからっていう面もありますよね。実際、angela自身「KINGS」や「Different colors」のようなその系譜にある曲で高い評価を集めている。

atsuko でも例えばアイドルさんってもっと新しいことしてたりしません? そんなに熱心に研究しているわけではないんだけど、いわゆる「アイドルソング」を歌っている子たちのほうが逆に少ないというか。メチャクチャたくさんアイドルがいる中で、どのグループのクリエイターさんもほかのグループとは違うカラーを出そうって試行錯誤している印象があって。アニソンってクールジャパン構想を象徴するコンテンツの1つみたいな言われ方をしますけど、マイナー進行で高速でハイキーな曲だけを作り続けていると、私たちはアイドルさんに後れをとっちゃう気がするんですよ。

「うまく歌おうと思わない」というか「うまく歌ったら逆にダメ」

──過去のインタビューを読むにそのアニソンシーンにいること、アニソンアーティストであることは……。

atsuko 大好きですよ。アニソンのことは抱きしめたいくらい愛してます。「もう痛いし、苦しいし勘弁しろよ!」って言われるくらい抱きしめたい(笑)。

──で、今回「騎士行進曲」では「シドニア」に引き続き、すごいフォームで強く強くアニメソングを抱きしめた。「シドニア」同様、四つ打ちと、行進曲的な三連符が行ったり来たりする構成の曲なんだけど、「シドニア」のときよりもそのリレーがスムーズだし、あとブラスやコーラスをド派手に入れたり……。

KATSU お金使っちゃいました(笑)。さっきのatsukoの話に戻っちゃうんですけど「騎士行進曲」ってまさに「宇宙戦艦ヤマト」的なんです。みんなで肩を組んで合唱できる曲だし、あと「ヤマト」って高校野球の応援歌にも使われるじゃないですか。どの学校のブラバンも演奏する曲なんですよね。そういう“みんなに聴いてもらうアニソン”じゃなくて“みんなに歌ってもらうアニソン”こそが本来的な意味での“THE アニソン”なんじゃないかな?っていう気がしたから、ブラスとコーラスは入れたかったんですよね。

atsuko それで杉並児童合唱団の現役の方とOB・OGの方をお呼びして。あと舞台系の友人に歌える人をたくさん集めてもらって。

KATSU しかも“みんなに歌ってもらうアニソン”が大前提だから、歌のうまい人たちを集めておいて「『うまく歌おうと思わないでください』というか『うまかったら逆にダメ!』」とディレクションするという(笑)。

ニューシングル「騎士行進曲」2015年4月29日発売 / 1296円 / スターチャイルド / KICM-3289 / Amazon.co.jp
「騎士行進曲」
収録曲
  1. 騎士行進曲
  2. 愛、ひと欠片
  3. 騎士行進曲 off vocal version
  4. 愛、ひと欠片 off vocal version
angela(アンジェラ)

岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニング主題歌「シドニア」を発表。この曲がアニメファンが選ぶ2014年のアニメーション神戸賞の主題歌賞を受賞する。そして2015年4月には「シドニアの騎士」の続編となる「シドニアの騎士 第九惑星戦役」のオープニング曲「騎士行進曲」をリリースした。