日本人のDNAに刻まれた高揚感

──デビュー10周年イヤー一発目のシングルが前作「ANGEL / 遠くまで」で、10周年記念ラストを飾るのが今回の「シドニア」。今年のangelaってすごい攻めてますよね。

atsuko（Vo）　自分たちとしては10周年って単なる通過点のつもりなんですけど、確かに派手ですね（笑）。

──エモ、ラウド系ににらみをきかせた「ANGEL」に続く「シドニア」がマーチとトランスのマッシュアップ。「シドニアの騎士」の第1話で初めて聴いたときは「スゲー！」としか言いようがなくて（笑）。なんでこのアレンジに？

KATSU（G, Key）　プロデューサーから「DNAを揺さぶるような曲にしたいんだ」っていう話があって「DNAを揺さぶるとはなんだ？」って考えていたときに、ちょうどニュースで生物の記憶についての特集を観たんですよ。生物の記憶は2世代先まで受け継がれるっていう。そのニュースではマウスにある匂いをかがせたあと、怖い思いをさせる。ケガさせるようなことをすると、マウスはその匂いをかぐたびに怯えるようになるっていう実験を紹介してたんです。で、今度はそのマウスの子供に匂いをかがせてみたら、やっぱり怯えて、さらにその子供も怯えたらしいんですね。

atsuko　孫に直接怖い思いをさせたわけじゃないのに？

KATSU　うん。で、その一方で「シドニアの騎士」のスタッフから「アニメでは“日本”にすごいこだわっている」っていう話を聞いたんですね。

──エンディングテーマを歌っている喜多村英梨さんもそうおっしゃってました（参照：喜多村英梨「掌 -show-」インタビュー）。

KATSU　それでかつての日本人が聴いて高揚した音楽には今の日本人も高揚するんじゃないかって改めて考えてみて。「軍歌」というかああいうマーチ、行進曲に抗いがたい高揚感を覚えるのは事実なんですよね。

atsuko　私、この曲ができあがったとき「巨人の星」や「水戸黄門」っぽいなあ、と思った。

KATSU　「ダダダッ！ ダダダッ！」って3連（符）の感じは一緒だよね。

──だからKATSUさんの見立ては正しかったってことですよね。かつての行進曲も「巨人の星」も「水戸黄門」も「シドニア」もホントにアガりますから。

atsuko　祖父母くらいの世代が行進曲を聴いて高揚していた記憶が私たちにも受け継がれているのかなっていう気はしますよね。「巨人の星」や「水戸黄門」を初めて聴いて、しかも高揚していたのは、音楽のことを詳しく知っていたわけではない、子供の頃なんだから。

聴きたい音、聴きたい主題歌を突き詰める

──前回のインタビューでKATSUさんはアニメのテーマソングを作るときにはロゴデザインやフォントから曲のテイストのヒントをもらうって言ってましたけど……。

KATSU　今回もモロに影響されてますね。「シドニアの騎士」ってタイトルや劇中の文字の日本語フォントを全部自前で作ったそうなんですよ。その機械チックなカタカナから受けた印象があるからEDM的というか、ちょっとダークなトランスを行進曲にミックスしてみたんです。

atsuko　ただ、毎回完全に完成形が見えた状態で制作を始めることなんてないですし、今回は特に大変でしたね。

KATSU　オレ、制作中2回くじけた（笑）。「やっぱ行進曲やめない？」って。考えれば考えるほど迷っちゃって。だから今atsukoが言ったことにもある意味通じるんですけど、最終的には完成形を考えない。後先考えずに瞬発力で作った感じなんですよね。お互いにアイデアを出しあって、2人が「その発想面白い！」って思えたら、そのときの勢いのまま突っ走る。正直な話、16ビートから急に3連に切り替わるところとか違和感を覚える人もいると思うんですよ。

──いや、行進曲とトランスってホントに面白いマッシュアップだと思いますよ。むしろその違和感が功奏しているというか、まさに“意外な展開”に驚かされましたし。

KATSU　ありがとうございます。僕ら自身も面白ければ違和感もアリなんじゃないか。みんなは違和感があるからやらないのかもしれないんだけど、それならなおのことアリ。誰もやってないことをやるのがangelaらしいんだからっていうことを信じて、自分がこのアニメのバックで聴きたい音、聴きたい主題歌っていうものをただただ突き詰めてみたんですよね。で、できあがった曲が「シドニア」なんです。