音楽ナタリー Power Push - anderlust
小林武史手がけるユニット、デビュー
本を読むような感じで聴いてもらえたら
──2曲目の「風船 ep.1」はストーリーがはっきりと頭に浮かんでくるような曲ですね。
越野 この曲は作曲活動を始めてすぐの頃にできた曲なんです。どこにでもあるような、ちょっとした失恋の話を曲にしました。そういう、他愛もない話を「エピソード」として括ってシリーズ化していこうかな?って考えているんです。だからこの曲には強いメッセージを込めていないというか。なので、本を読むような感じで聴いてもらえたらいいなと思っています。
──曲調は一貫してポップですけど歌詞の結末はビターで、そのバランスが面白いですね。
越野 そうなんですよ。不思議な曲ですよね。メロディはAメロからすらすらとできていったのを覚えています。曲を作るときは歌詞が一緒に思い浮かぶことが多いんですけど、この曲は「風船」っていう言葉と一緒に日本語詞が浮かんで、ストーリーができあがっていく感覚でした。
──そういった曲のアイデアは、どんなときに思い浮かぶんですか?
越野 その時々で違いますね。登校しているときだったり、シャワーを浴びているときだったり。そういったシチュエーションだったらまだいいんですけど、授業中や試験中に思い付いて、「やばい、これどうしよう! どうやってメモしよう!?」って焦ることもありました。一度夢の中で思い付いたときは、寝ぼけながらボイスレコーダーに歌を入れたんですけど、起きて聴いてみたらゾンビの奇声みたいな音が録音されてた(笑)。本当にときを選ばず、パッと思い浮かんでくるんですよ。
──そうなんですね。テスト中に思い浮かんだときは、曲を覚える頭を優先させちゃうんですか?
越野 優先させちゃうというよりも、どうしてもそっちのほうに頭がつられていっちゃう感じです。ダメですね。そのときのテストは、確か赤点だったと思います(笑)。
なんでこの曲を気に入ってもらえたんだろう?
──では、「A.I.」はどういったきっかけで生まれた曲でしょう。
越野 これは最近作った曲なんですが、Paramoreっていう私の大好きなロックバンドを意識して書きました。けっこうすんなり……30分くらいで書いた曲です。この曲には人工知能のA.I.が地球を侵略していくっていうストーリーがあるんですが、その物語に沿うようなイメージで、いろんな音色を足していきました。
西塚 僕、この曲ではシンセベースを弾いているんです。普段はエレキベースをメインにしていますけど、その都度その都度で楽曲に合ったアプローチができたらいいなと思って。プリプロでいろいろ試していく中で、シンセベースがもっともこの曲にフィットすると思ったので、エレキを捨ててシンセにしました。
──この曲の制作には、小林さんはどのような形で携わったんですか?
越野 この曲は歌詞を一緒に考えていただきました。「A I A I A 愛」と、最後の「I」を「愛」にして恋愛という言葉をかけるアイデアは一緒に考えたものです。曲に関しては、なんでこの曲を気に入ってもらえたんだろう?って思ってます(笑)。「風船 ep.1」もそうなんですよ! 「風船 ep.1」は最初、シークレットトラックにするようなイメージで書いていたんです。だけど、小林さんはシングル収録曲の候補の中でこれを一番気に入ってくれたみたいで。びっくりしたのを覚えています。
旅の始まり
──こうして3曲がそろってシングルが完成して、これからこの作品がいろんな人の耳に届くわけですね。
越野 これがanderlustの旅の始まりなので、皆さんがどうやって受け取ってくれるのかが本当に楽しみです。「帰り道」は懐かしい気持ちを思い起こさせるけど前を向いているっていうようなメッセージのこもった作品になっていると思います。
西塚 そうですね。anderlustは枠にとらわれない活動をしていけたらと思っているのですが、今回の作品では3曲の中でいろんな表現ができていると思う。これからもいろんな音楽、いろんな表現を発信していきたいと思うので、僕らの活動を通して玉手箱を開けるような感覚を楽しんでほしいと思いますね。
──お話を聞いていて、奔放な越野さん自身が玉手箱のような存在だなと感じました。
越野 あははは!(笑) それ、よく言われます、面白いねって(笑)。うれしいです、ありがとうございます。
──彼女の才能を一番近くで目の当たりにしている西塚さんは、どんなことを思いますか?
西塚 本当に何が出てくるかわからない人なので、自分がうまくユニットをまとめていけたらと思います。
──今後の活動では、ファッションや映像なども採り入れて表現の幅を広げていくビジョンがあるんですよね?
越野 そうなんです。私たち、今「ショートムービーコンペティション」というものを主催させていただいていて、そこで第3のメンバーを探しているんです。このコンペは、通常は曲に映像を付けるミュージックビデオを逆の発想で作ってみようというアイデアから始まっていて。そんなふうにアートの分野を交えた表現方法を見つけ出して、ユニットの作品にどんどん採り入れていけたらという思いがあるんです。だから、10年後のanderlustはもしかしたら10人組かもしれないし……どんなふうに成長していくのか、私たちもドキドキワクワクなんです。
──何か、具体的な目標はあったりするんですか?
越野 具体的な目標はないかもしれないです。anderlustは子供のようなものだと思っていて。今は生まれたてで、これからどんなものを吸収して、どんなふうに成長していくかはまだわからない。子供の成長を見るような感覚で、皆さんには見守っていただきたいです。
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- デビューシングル「帰り道」 / 2016年3月30日発売 / Sony Music Records
- デビューシングル「帰り道」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / SRCL-9013~4
- 通常盤 [CD] / 1300円 / SRCL-9015
CD収録曲
- 帰り道
- 風船 ep.1
- A.I.
- 帰り道 ~Instrumental~(※通常盤のみ収録)
初回限定盤付属DVD
- 「帰り道」MUSIC VIDEO + MUSIC VIDEOメイキング映像
anderlust(アンダーラスト)
シンガーソングライターの越野アンナ(Vo)と、ベーシストおよびアレンジャーの西塚真吾(B)によるユニット。2014年に「NYLON JAPAN」とソニーミュージックが主催したオーディション「JAM」のミュージック・パフォーマンス部門でNYLON賞を受賞した越野が、ライブを通じて知り合った西塚とともに立ち上げた。2016年3月にリリースするメジャーデビューシングル「帰り道」は、小林武史がプロデューサーを務めた作品。今後は音楽に限らず、映像やアート、ファッションなどさまざまなクリエイティビティを持つ新メンバーの加入を視野に入れながら活動を行っていく。