福永浩平(雨のパレード)×椎木知仁(My Hair is Bad)|異なる道で同じ場所を目指す 同世代フロントマンが語るバンドの現在

救いをもたらしてくれた福永のカレー

──去年から今年にかけて、コロナ禍でバンド活動が満足にできない時期が続いていたと思いますが、そのときはどういうことを考えていました?

福永 僕らは去年やっていたツアーが途中で延期になって、最終的に中止になってしまって。それはかなり食らったというか。蔦谷好位置さんとアルバムを作って、ライブを今まで以上に意識していたタイミングだったので、そのツアーを最後まで回れなかったというのがすごく悔しかったですね。

──マイヘアもあんなにスケジュールが空くことなんて今までなかったですよね。

椎木 なかったです。だからマジでテンパってた(笑)。「えっ、どうしたらいいの? 何もしなくていいの?」って。

福永 とりあえず、俺はそのときカレーにハマってたので、カレーを持って椎木の家に行ったんですけど。

椎木 チャリで持ってきてくれたよね。

福永 で、カレーを食いながら「マジで大丈夫かな?」みたいな話を2人でしてました。多いときは月に2、3回。

椎木 お互いの家を行き来して。酒を飲むしか、ごまかし方がなかったんですよ。酒飲んで、デモ作って、酒飲んで。自分を満足させてぼやかして、それくらいしかやることがなかった。

福永 はははは。

福永浩平と椎木知仁。

──でもそこに福永さんというか、福永さんのカレーがあったというのが救いだった。

椎木 そうですね。友達の存在は大きいなと思いました、本当に。男の1人暮らしで……。

──男の1人暮らしの部屋にカレーを持ってきてくれるなんて、なかなかないですよ。

椎木 やばいっすよね。「家で作ると匂いがつきすぎちゃうかもしれないから、作って持ってくよ」って。そんな気まで遣っていただいて。

福永 Zoom飲みもしたよね。Zoom飲みが流行り始めた時期に、椎木が「ちょっと恥ずかしいけど1回してみる?」みたいな(笑)。ほかのやつらとやるのはちょっと恥ずかしいからって。

椎木 家であれだけ会ってたのに、Zoom飲みも4時間くらいやったと思うよ。いろんな話を……福永は多趣味なので、いろんなことを教えてくれるんですよ。

──いいなと思うもの、面白いなと思うものは重なることが多いんですか?

椎木 いや、福永が100知ってるとするなら、僕はその中の10ぐらいしか知らないですよ。しかも福永も「たぶん面白いと思ってくれるんじゃないか」というものを僕に提案してくれるので。音楽もそう。例えばあれとか。めっちゃ寝れるやつ……ナンシー?

福永 ヨンシー(Sigur Rósのメンバーでソロアーティストとしても活動)な(笑)。Jónsi & Alexね。

椎木 そう! あれは聴いた! めちゃくちゃ聴いたね。

福永 マイヘアとSigur Rósでジャケが似てる作品があったんですよ。裸で走ってるやつ。でも、それも「知らない」って言ってましたからね。

椎木 飲みすぎて福永んちで寝て、なんとなく起きたんですけど、「まだ寝てていいよ」ぐらいの感じで、そのJónsi & Alexを流されて。もうそれで俺はまたスヤスヤ寝て(笑)。起きてから「さっき音楽で寝かそうとしなかった? それ教えて!」って。

──逆に福永さんが椎木さんから影響を受けたものはあるんですか?

福永 ライブとか曲に対する取り組み方はもちろん影響を受けてますけど、カルチャー系で何かあるかな?

椎木 そうだねえ、福永はスピらないしな。

福永 こいつはスピ好きなんですよ。スピろうかな、じゃあ(笑)。

椎木 いやいや、「じゃあ」とかじゃないから、あれは! 知るんじゃなくて“わかる”ものだから! でも確かに俺、福永に「ここいいよ」とか言ったことないかもしれない。いつも福永が「行きたいところあるんだよね」って言ってる。何も紹介したことないな(笑)。

福永 でも、お互い初めて行ったところとかあったでしょ。鎌倉とか。

椎木 福永は初めてじゃなかったよ。「鎌倉に行ったんだけど、よかったから行こう」って誘ってくれたんだよ。

福永 ただ、あの竹林は初めてだったよ。

──竹林ですか?

椎木 鎌倉の竹林に行って、抹茶を飲んで。干物を買って帰りました(笑)。

福永 あとパンケーキ食べてたよな? 僕は食べてないけど、この人はめっちゃ流行ってるパンケーキ食べてました。

椎木 僕、「君が教えてくれた パンケーキの味」という歌詞(「最愛の果て」)を書いたことがあるんですけど、パンケーキを食べたことがなくて。

福永 はははははは。

椎木 絶対パンケーキ食べたほうがいいわと思って食べたんだ。そんな感じでいろんなところに連れて行ってもらってるんですよね。

福永 でも、今年はあんまり会ってないんですよ。5回ぐらい断られてて。

椎木 タイミングが合わなかっただけ!

福永 正月に1回会ったぐらいで。半年会ってないのなんて、初めてぐらいですね。

福永浩平と椎木知仁。

もっとライブでつながれるんじゃないか

──バンドもまた忙しく動き出しましたしね。ライブはまだいろいろな制限がありますが、ここまでのところはどうですか?

福永 ライブができない状況だったからこそ、やっぱりライブありきのものなんだなというのをバンドに対して感じたし、その中でもマイヘアは理想的な活動をしてると思う。でも、僕らは今年まだ数回しかライブをしてなくて。「このまま生きてていいのかな?」みたいな思いはありますね。

椎木 わかるわかる。僕らは去年12月ぐらいからライブをやってたので、制限がある中での会場の雰囲気が、なんとなく自分たちの中でわかったんだけどね。だから今、コロナ禍でのライブにちょっと慣れてきた感じです。

福永 そこがすごいよね。

椎木 慣れざるを得ないというか、「ツアーファイナルに向けてなんとかしないと」という気持ちが強かったので。でもある種、歓声を出せない状況になって、ライブでごまかしが効かなくなったなというのがすごくある。だからこそ雨のパレードみたいなバンドにとっては、今までやってきたことが全部出し切れる時期なのかなという気もするけどね。

福永 ああ、どうなんだろうね。

椎木 でもそういう状況のおかげで、My Hair is Badもちょっと新しい見せ方をしようとしているというか、今まで意識してこなかったことを意識するための練習や反省ができているので。

──作る曲も変わってきましたよね。

福永 やっぱりライブができないとなったら家で音楽を聴くしかないと僕は最初思っちゃって。だから「Face to Face」はまったくライブのことを意識せず、音源の探究心、自分の制作者としての好奇心をすべてぶつけて、「今自分が作れるものってなんだろう?」ということを考えながら作ったんです。でも、去年Zepp公演をやったときに、もっとお客さんとライブでつながれるんじゃないかなという思いが出てきて。「この曲はもっとつながれるはずなのにな」と感じることがあったんですよ。それでここ最近出している「Override」や「ESSENCE」はライブでより楽しめるようなものを意識してるし、次のアルバムはそういう作品にできたらいいなと思ってます。

椎木 僕は今“20代の終わりが迫ってる”ということが自分の中で一番面白くて。20代のうちに何を残せるかな、みたいな意識で曲を書いてることが多いですね。メンバーが着々と30歳になってるんですけど、僕は来年3月まで時間が残っていて。そのうちにどれぐらい本当に思ってることを書けるのかなあというのが一番のテーマです。30歳になるのをきっかけに自分も上手に変われたらいいなと思ってるし。まあ、なっちゃえばあんまり変わんないなと思うんでしょうけど。だから“最後の年”という気持ちですね。今までいっぱいライブしてきた分の集大成のような活動ができたらいいなと。

福永 すごくわかる。僕にとっては「ESSENCE」が20代最後に出す曲だけど、30歳になる瞬間まで、もうちょっと曲を書こうかなって思ってる(取材時点では29歳)。今のこの時期の特別感を形で残したいなというのはありますね。

福永浩平と椎木知仁。

雨のパレード ライブ情報

ame_no_parade×BBHF Two-man live "Detune"
  • 2021年3月4日(金) 東京都 Veats Shibuya

My Hair is Bad ライブ情報

My Hair is Bad presents「フラッシュホームランツアー」
  • 2021年11月17日(水) 愛知県 Zepp Nagoya
  • 2021年11月18日(木) 愛知県 Zepp Nagoya
  • 2021年11月24日(水) 福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2021年11月25日(木) 福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2021年12月2日(木) 北海道 Zepp Sapporo
  • 2021年12月8日(水) 大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2021年12月9日(木) 大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2021年12月15日(水) 東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2021年12月16日(木) 東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
雨のパレード(アメノパレード)
雨のパレード
福永浩平(Vo)、山﨑康介(G, Syn)、大澤実音穂(Dr)からなるバンド。2013年に結成。R&B、エレクトロハウス、アンビエント、トラップなどエレクトロニック主体の現代ポップミュージックに刺激を受け、バンドという形態にこだわらないサウンドメイクを武器に作品を発表し続けている。2016年3月に1stフルアルバム「New generation」でSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビュー。2019年1月に現在の3人体制になり、4月に新体制初のシングル「Ahead Ahead」を発表した。2020年1月にアルバム「BORDERLESS」をリリース。同年12月にこの年2枚目のアルバム「Face to Face」を発表し、東京・Zepp DiverCity TOKYOでワンマンライブ「ame_no_parade LIVE 2020 "Face to Face”」を開催した。2021年8月に配信シングル「Override」をリリース。10月に配信シングル「ESSENCE」を発表し、東名阪ツアー「ame_no_parade TOUR 2021 "ESSENCE”」を開催した。
My Hair is Bad(マイヘアーイズバッド)
My Hair is Bad
椎木知仁(G, Vo)、山本大樹(B, Cho)、山田淳(Dr)の3人が2008年に新潟で結成したロックバンド。骨太なロックサウンドと、椎木がつづるリアリティのある歌詞、アドリブのポエトリーリーディングを織り交ぜたライブで人気を集め、2016年5月にシングル「時代をあつめて」でEMI Recordsからメジャーデビューを果たした。同年10月にアルバム「woman's」をリリース。2017年11月にはアルバム「mothers」を発表し、同年12月より東京・日本武道館2DAYSを含むツアー「ギャラクシーホームランツアー」を開催した。2018年12月よりアリーナ公演を含むツアー「ファンタスティックホームランツアー」を行い、2019年6月にはアルバム「boys」を発表。2020年12月にCDシングル「life」と配信シングル「love」を同時リリースした。2021年4月には「ブレイクホームランツアー」として埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演を2DAYS開催。2021年11月よりZeppワンマンツアー「フラッシュホームランツアー」を実施する。