Dos Monosは異端
──6曲目「惑星STRaNdING(ft. Dos Monos)」はDos Monosをフィーチャーした曲ですが、ものすごくドープな曲ですよね。Dos Monosとはもともと関係性があったんですか?
福永 そうですね。荘子itとTaiTanは、別の友達を介して会うことが多くて。それで「Ahead Ahead」のシングルのタイミングで「Hometown」という曲のリミックスをお願いしたんですけど、それがすごくよかったので、アルバムでも一緒に何かできないかな?という話になったんです。最初は、荘子itを自宅に呼んでトラックを作っていたんですけど、彼も1人で作るタイプのアーティストだから、どんどんとDos Monos色が濃いトラックになっていったんですよね。それで一度作業を止めて、今度は僕らがスタジオに入り、トラックをいっぱい作ったんです。僕は荘子itにサンプリングの才能をすごく感じていたので、僕らが作ったトラックを、サンプリング素材のように使ってもらうのはどうだろう?と思って。
──サンプリング素材を録るというのは面白いですね。
福永 それで、同じコード進行でいろんな楽器を録って、素材をたくさん作ったりしました。それを彼に投げてトラックを作ってもらって、それをまた受け取って意見を言ったりしてやり取りを繰り返しながら、この曲を作っていたんです。
──リリックに関しては、どういったやり取りがあったんですか?
福永 このリリックは、流れでSFがテーマになりました(笑)。僕もSF映画は大好きなんですけど、でも「SFの曲を書こう」なんて思ったことなかったので、面白いなと思って。それで、まず彼らからリリックを受け取って、僕の部分を書きました。
──そもそも皆さんから見て、Dos Monosはどんな魅力のある人たちですか?
福永 ……異端(笑)。
──ははは(笑)。
大澤 尖ってるよね。
福永 彼らも、ヒップホップシーンの中ではどこの畑に属しているんだろう?という立ち位置の人たちだと思うんですけど、でも、その異端ぶりがいいですよね。ライブも何度も拝見しているんですけど、映像もめちゃくちゃカオスで最高なんですよ。
山﨑 カオスだよねえ(笑)。僕自身、ヒップホップ界隈には疎いんですけど、でもDos Monosの表現にはすごく直情的なものを感じていて。トラックの質感も荒々しいし、あのドカンと前に出てくる感じも魅力的だと思います。あの直情的なトラックや表現方法は、僕はすごく好きですね。
──そんなDos Monosとの「惑星STRaNdING(ft. Dos Monos)」から続いて始まる「Hallelujah!!」は、ゴスペル的な要素も感じさせる曲ですけど、穏やかで、どこか内省的な雰囲気もある曲ですね。歌詞に出てくる「何に祈ればいい?」「誰を愛せばいい?」「何に歌えばいい?」という問いかけが印象的でした。
福永 本当はメロディ的にいくと、ここの母音は「い」にしたくなかったんですよ。「え」とか「あ」とか「お」のほうが響くんです。でも、ここは絶対にこの歌詞がいいなと思ったんですよね。そうすることで、自分の今までの経験を踏まえて、伝えられることがあるんじゃないかと思って。
──「何に祈ればいい?」「何に歌えばいい?」という、この曲の問いかけはすごく切実に感じられるのですが、これは福永さんのどういった思いから出てきた言葉ですか?
福永 僕は、神よりも自分を信じたいと思ってしまうんです。だから、こういう曲になったんだと思います。自分の本当の心の声を、“神”としている曲というか。
血の通った言葉を書きたい
──福永さんの書く言葉は、ときに生々しく内面をさらけ出しながらも、とても大きな優しさを持っているなと思うんです。自分の言葉が聴き手に何を与えるのかは考えますか?
福永 聴いている人のことは考えます。伝えるということに関して、去年はすごく悩んだ1年でもあったし。そのうえで、歌詞はできるだけパーソナルな部分を書くようにはしていますね。血の通った言葉を書きたいと思うので。
──9曲目のタイトルの「Gullfoss」は、なんと読むんですか?
福永 これは「グトルフォス」と読むんですけど、アイスランドの滝の名前なんです。
──この曲はもう完全にバンドサウンドを逸脱した実験的な曲だと思いました。どうやって作られたんですか?
福永 Jónsi & Alexという、Sigur Rósのボーカルとその恋人が組んでいたユニットがあって。それが1枚だけアンビエントのアルバムを出していて、そのアルバムがすっごく大好きだったんですよ。「いつかこういう音楽を作ってみたい」と思っていて。最初はアルバムに入れるつもりもなく、僕が家で素材を作ってそれをネットで買ったカセットテープMTRに入れてグチャグチャにして、それをさらにパソコンに戻して「おお、これこれー」みたいな感じで(笑)。
──(笑)。
福永 で、「これ、アルバムに入れちゃいたいな!」と思って、入れました(笑)。
──ははは(笑)。アンビエントミュージックは、よく聴かれますか?
福永 時期によってはよく聴きますね。昔はメンバーが運転している間、高速道路とかを走っているときによく流していたんですよ。あれ、すごくいいよね?
大澤 うん。
福永 すごくいいんですよ。脳がシュイーンッ! パキーンッ!てなります(笑)。
山﨑 特にJónsi & Alexのアルバムはいいよね。
福永 部屋で聴くのもいいですけどね。音楽を聴いている間は、見ている景色のほうが主役になるというか。それがアンビエントミュージックの面白さかなと思います。
「BORDERLESS」は第2の1stアルバム
──結果として「BORDERLESS」のような大きな曲があり、「Hallelujah!!」のような内省的な曲があり、「Gullfoss」のような実験的な曲がありと本当に多彩なアルバムになりましたが、この多彩なアルバムの最後を3人体制になって最初にリリースされた「Ahead Ahead」で突き上げるように締めるのがいいですよね。
福永 そうですね。このアルバムの中で、「Ahead Ahead」はこの場所が一番ハマると思うし、この曲が最後にくる必然性も感じました。3人体制になって最初の曲だし、ライブで演奏してハッとさせられた曲でもあるし、本当に雨のパレードの第2章幕開けの曲だと思うんですけど、この「BORDERLESS」というアルバム自体、僕らにとっては第2の1stアルバムみたいなものなんです。その最後の曲がスタートの曲になっているのは、いい終わり方だと思いますね。
──雨のパレードの第2章は、どんなものにしていきたいですか?
福永 今回、一緒にやらせてもらった蔦谷さんとDos Monosは、それぞれオーバーグラウンドとアンダーグラウンドで全然畑が違う人たちだと思うんですよ。でも、それぞれから得るものがたくさんあったので、もっといろんな人たちと一緒にやってみたいという興味が今はすごくあります。プロデューサーやトラックメーカーという形ではなくても、女性ボーカリストでもいいし、本当にいろんな人たちと一緒に音楽を作りたいですね。今までも「自分たちは自由にやっている」と思っていたけど、それはあくまで囲われた枠の中での自由だったんだと思うんです。でも、この先はもっと自由に、雨のパレードを表現していけると思っています。
ライブ情報
- ame_no_parade TOUR 2020 "BORDERLESS"(※終了分は割愛)
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- 2020年2月2日(日)北海道 cube garden
- 2020年2月8日(土)香川県 DIME
- 2020年2月9日(日)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2020年2月15日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2020年2月16日(日)石川県 金沢GOLD CREEK
- 2020年2月22日(土)宮城県 Rensa
- 2020年3月1日(日)東京都 EX THEATER ROPPONGI
- 2020年3月14日(土)大阪府 なんばHatch
- 2020年3月20日(金・祝)福岡県 BEAT STATION
- 2020年4月10日(金)鹿児島 CAPARVO HALL