音楽ナタリー Power Push - 雨のパレード
多彩な楽曲群で“ポップスの概念を変える”
ターニングポイントとなった「Tokyo」のよさとは
──アルバムの1曲目は「Change your mind」です。この楽曲ができてからアルバムタイトルを決めたのでしょうか?
福永 いや、アルバムタイトルが先ですね。「Change your mind」は「Change your pops」をテーマに書いた曲です。
──なるほど。初期の頃の楽曲と比べて、福永さんの歌詞はリスナーにより伝わりやすいものへと変わってきていると思いますが、「Change your mind」をはじめとした今作の収録曲では、リスナーに直接呼びかけるような言い回しが特徴的ですね。
福永 今回は意識的に疑問形がちょっと多くなってるかもしれないですね。自分の中で、「Tokyo」(2016年1月発売のインディーズ最後のシングル)っていう曲がすごくターニングポイントだと思ってて。
山崎 うん。「Tokyo」でまた1つ雨のパレードの音楽性や、メッセージ性みたいなものが開いたというか、そういう感覚はありますね。
福永 「Tokyo」がより多くの人に伝わったことが、僕らのあの頃の状態を変えたし、すごく大切にしてて。それで「あの曲のよさってなんだったんだろうな」って考えたときに、いろいろあるんですけど、その中の1つは疑問形なんじゃないかと思ったんです。
──そこに気付いたから、今回のアルバムの収録曲には疑問形が多いんですね。「Tokyo」のように、多くのリスナーに届くような楽曲を作りたいと。
福永 そうですね。「現状を変えるようなパワーを持ってる曲を作りたい」と思って毎回制作してるので、今回も自然と歌詞の変化に表れたんだと思います。
活動の軸がどんどん明確になってきた
──アルバムの資料には、福永さんの「ポップミュージックは自分の人生に寄り添ってくれる音楽です」という言葉がありますね。福永さんにとってのそれは、幼少の頃お母さんの影響で聴いていたという、松任谷由実さんや玉置浩二さん、小田和正さんといった日本のアーティストの楽曲ですか?
福永 そうですね。
──具体的に言うと、そういった音楽に関するどんな思い出がありますか?
福永 んー……あまり“これ”って言えないんですけど、共感したというか、「自分が1人じゃない」っていう感覚になったことがありますね。自分にとってポップスってそういうものだから、聴いてくれてるみんなに寄り添ってくれる、ときには指針になってくれる曲を書きたいなと思ってます。
──「You」のインタビューの際に話していた「誰かを救えるような曲を書こうと思った」という思いとつながるところがありますか?(参照:雨のパレード「You」インタビュー 最善の表現方法で描いた“誰かを救う曲”)
福永 そうですね。まさにそれだと思います。
──山崎さんはメンバーとして、福永さんの歌詞の変化をどう感じていますか?
山崎 活動初期の頃に比べて、やっぱり相手への伝わりやすさがものすごく高まってると思いますね。僕の友達も、ライブを観に来て「You」で泣いちゃったり、「聴いたらめちゃめちゃ胸を締め付けられる」って言ってたりして。聴く人に寄り添える作品が増えていってるのではないかなと感じてます。
──初期の頃の楽曲制作では、「伝えよう」という意識はありましたか?
福永 そういう意識はあまりなかったかもしれないです。上京したての頃は、「ほかと違うことがやりたい」っていう意識が強かったし、そもそもすごい手探りな状態で自分たちの音を作っていたので、必死でした。
山崎 僕も活動初期は、相手ありきというより「とにかく今、この雨のパレードっていうバンドを表現したい」みたいな。そっちの意識のほうが強かったかもしれないですね。
──それが活動していくうちに、少しずつ変わっていったんですね。
福永 そうですね。軸がどんどん明確になってきたんだと思います。
今、すごくいいムードを感じてる
──「Change your mind」の歌詞には、「I'll change your mind」=「私はあなたの心を変える」という一節があって。ここにも福永さんの強い思いが表れていますよね。
福永 例えば海外だと、普通にポップスとしてインディR&Bが認知されていると思うんですけど、日本はまだそこまでではないと思うんです。だから日本で「ポップスとしてインディR&Bが認知されるようにしたい」みたいな思いがあって。あと今、僕は日本の音楽シーンにすごくいいムードを感じているんです。
──例えばどんなことでしょう?
福永 自分たちと同年代のバンドが自分たちのポップスをそれぞれ持ってて、それがどんどん響いてきてるような感じがして。「みんなの力でそれを一気に押し上げたい」っていう気持ちがすごく強いですね。それでいて僕らの音楽を「メジャーシーンでより多くの人たちに響かせたいな」っていう気持ちがあります。伝わりやすいメロと歌詞をリスナーの入り口にして、サウンド的には自分たちが一番カッコいいと音を鳴らしたいです。まだポップスとして認知されていない音楽が普通に聴かれるような時代が来てほしいし、その土台を作りたいんです。
──昨年はSuchmosや水曜日のカンパネラが大ブレイクしましたが、そういった日本の音楽シーンでのアーティストの動きはどう感じていますか?
福永 すごくうれしいですよね。それも自分が感じているいいムードの1つだと思います。
山崎 特に浩平くんと同世代のアーティストって、いい意味で右に倣えじゃないというか。かなり個が強いし、物怖じしないし、表現力がすごい長けてると思うんですよ。ちょうどその世代の人たちがメインの層に上がってきて、今までマイノリティとされてきたものと、マジョリティの境目がなくなってきてるような感覚がすごいあって。音楽だけじゃなくて、ファッションとかもそうだと思うんですけど。だから何がどう跳ねるのかっていうのがわからない時代で。何かに寄せて「こういうふうにしたらいいんでしょ」ってやるのはダサいというか、そういうことをしなくても、わかる人には絶対響くと思うし。
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- ニューアルバム「Change your pops」 / 2017年3月8日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / VIZL-1116
- 通常盤 [CD] / 3024円 / VICL-64717
CD収録曲
- Change your mind
- free
- stage
- Count me out
- Take my hand
- perspective(Interlude)
- You
- feel
- Hey Boy,
- intuition(Interlude)
- 寝顔
- 1969
- speech(Interlude)
- morning
初回限定盤DVD収録内容
- Documentary 2016
- Tokyo(MUSIC VIDEO)
- You(MUSIC VIDEO)
- 1969(MUSIC VIDEO)
- stage(MUSIC VIDEO)
- Change your mind(MUSIC VIDEO)
雨のパレード・ワンマンライブツアー 2017 「Change your pops」
- 2017年3月24日(金)
- 新潟県 CLUB RIVERST
- 2017年3月31日(金)
- 北海道 COLONY
- 2017年4月2日(日)
- 宮城県 enn 3rd
- 2017年4月6日(木)
- 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2017年4月8日(土)
- 広島県 CAVE-BE
- 2017年4月9日(日)
- 福岡県 graf
- 2017年4月12日(水)
- 愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2017年4月14日(金)
- 東京都 赤坂BLITZ
雨のパレード(アメノパレード)
2013年に結成された、福永浩平(Vo)、山崎康介(G)、是永亮祐(B)、大澤実音穂(Dr)からなるバンド。ポストダブステップ、80'sポップ、インディR&B、エレクトロハウス、アンビエント、トラップなどを取り入れた音楽性が持ち味で、アナログシンセサイザーやサンプラー、ドラムマシンなどによるバンド形態にこだわらないサウンドメイクで注目を集める。2016年3月に1stフルアルバム「New generation」でSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビュー。同年7月リリースのメジャー1stシングル「You」は、「スペースシャワーTV」に加え、各地のラジオ曲でヘビーローテーションでオンエアされた。同作の発売後に行われた、東京・渋谷CLUB QUATTRO公演を含む東名阪ツアーは全公演のチケットが即日ソールドアウト。12月にはTBS系音楽番組「CDTV」のエンディングテーマを表題曲とした2ndシングル「stage」を、2017年3月には2ndアルバム「Change your pops」をリリースした。