音楽ナタリー Power Push - 雨のパレード

新たな時代を切り拓くメジャーデビュー作

夢を捨てても生きていける街

──雨のパレードは1月にインディーズ最後の作品として、1stシングル「Tokyo」をリリースされました。

福永浩平(Vo)

この「Tokyo」はとても思い入れがある曲で、今回のデビューアルバムにも収録されているんです。数々のアーティストたちが「東京」っていうタイトルで曲を作ってきているので、僕の中でも憧れに近いものがずっとあって。でも中途半端に作りたくなかったんです。ハードル高いじゃないですか(笑)。

──名曲がたくさんありますもんね。

だからいつか納得できるようなオケができたときに作りたいなと思っていて。で、今回アルバム制作中にこの曲のオケが上がったときに「これならいけるんじゃないかな」と思って、僕なりの「東京」の歌詞を書いてみたんです。僕も上京して3年半ぐらい経ったので、東京のことも少し言ってみようかなって。タイミングもここがベストだと思いましたし。

──オケはどんなときにできたんですか?

「Tokyo」だけど、鹿児島でできました(笑)。海の目の前にあるスタジオで制作を1週間近くやってたんですけど、海辺で休憩してスタジオに入ってを繰り返しているときに降りてきて。

──そうだったんですね。鹿児島と東京での音楽活動において、違いを感じることはありますか?

地元にはライブハウスが2カ所ぐらいしかないんですよ。いつも知ってる人とライブして、知ってる人がお客さんで来るみたいな。本当にシーンが狭いというか「あの先輩に憧れてこういう音楽になったんだろうな」って観ててわかる人もいますし。そういう点で東京は、いろんな音楽をやっている同世代の子たちと対バンができるので、刺激をもらってかなり成長の糧になっていると思います。

──逆に東京に出てきて「ここが嫌だな」って思ったところはありますか?

雨のパレード(撮影:小川愛晃)

意外とないですね。上京した経験がある人に、「冷たい街だよ」とか「心が荒むから自然が近くにあるところに住んだほうがいいよ」とか言われてたんですけどね。でも実際に出てきたらそんな印象はなくて、好きなものがいっぱいあるし、同じ考えのやつもいっぱいいるし、すごく刺激的で楽しい街です。上京すると自分を追い詰めることができて、夢に近付けるのかなと思ってたんですけど、そんなことはなくて、全然夢を捨てても生きていける街なんだなって。

──夢を捨てても生きていける街ですか。

田舎よりも働き口が多いし、もし音楽を辞めたとしても、どこかしらには落ち着けますよね。地方ってのんびりしたイメージがあるけど、うかうかしていたら生きていけない場所だと思うんです。だから東京は夢から逃げるにはちょうどいい街なのかなって。

──歌詞にある「擦り切れる今日を受け入れることに慣れてしまった」という部分がすごく気になったんですけど、この一文はどういう感情で書かれたんですか?

普通にスタジオに入って曲作って終わりっていう毎日を過ごしていて大丈夫なのかよっていう気持ちを書きました。僕らが求めてるステージはもっともっと上のところにあるので、なりたい僕らになりきれてないのに、今の毎日を受け入れることに慣れてしまっているなっていう。

──慣れてしまいましたか?

慣れちゃいましたよ(笑)。だって、毎日東京で生活してるんですもん。なので、自分も含むそういう人たちに向けて「調子はどう?」っていうのを歌ってます。

「New generation」を携えて、新しい時代を作ろう

──福永さんはTwitterで、SPEEDSTAR RECORDSには好きなミュージシャンがいっぱいいるとツイートされてましたね。

はい。SPEEDSTARのアーティストめっちゃ好きです(笑)。ハナレグミさんの楽曲を地元で弾き語りしてたときもありますし、矢野顕子さんや細野晴臣さんの曲も好きですね。

──矢野さんや細野さんの音楽にはどのように出会ったんですか?

福永浩平(Vo)

地元に変人ばっかりが集まるミュージックバーみたいなところがあるんですけど(笑)。そこでちょっと働いたりとか、お客さんとして通ったりしていて。そのマスターの方とか、お客さんたちに教えてもらったんです。

──小さい頃、お母さんの影響でユーミンを聴いてポップスのあり方を学びつつ、マスターやお客さんに出会ってまた新たな音楽を知ったんですね。

はい。皆さんには「これが本物の音楽だぜ」みたいな感じでいろいろ教えてもらいました。教えてもらったアーティストに共通して言えることは、言葉で言えないよさというか、グッとくる何かを持っているっていうことだと思いますね。

──最後に今後の展望をお聞きしたいんですけど、雨のパレードはこれからスペースシャワーTV主催のライブツアー「スペースシャワー列伝15周年記念公演 JAPAN TOUR 2016」に出演されますね(取材は2月上旬に実施)。列伝に出ることで注目が集まると思いますが、今はどんなお気持ちですか?

列伝に一緒に出るMy Hair is Badの椎木(知仁 / G, Vo)くんとも話していたんですけど、列伝に出たからすごいバンドになれるんじゃなくて、列伝中にどれだけ成長できるかで、そのあと活躍できるか、できないかが決まるんじゃないかなって思うんです。だからツアー中にどれだけ僕らが成長できるかっていうのが大事だなって。今回のアルバムは「epoch」という曲で始まるんですけど、この曲にはアルバムのテーマと同じく「俺らが音楽シーンを変えていくぜ」っていうことを書いていて。だいたい今回の収録曲はそんなテーマなんですけどね。「New generation」を携えて、新しい時代を作ろうと思ってます。

メジャー1stアルバム「New generation」
2016年3月2日発売 / 3024円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64526
初回限定紙ジャケット
通常盤ジャケット
収録曲
  1. epoch
  2. Tokyo
  3. Movement
  4. Focus
  5. breaking dawn
  6. novi Orbis
  7. new place
  8. 10-9(New recording)
  9. 揺らぎ巡る君の中のそれ(New recording)
  10. encore
  11. Noctiluca
  12. Dear J&A
  13. Petrichor
ツアー情報
雨のパレード ワンマンツアー「New generation」
  • 2016年4月2日(土)大阪府 CONPASS
  • 2016年4月3日(日)愛知県 Live & Lounge Vio
  • 2016年4月9日(土)東京都 clubasia
雨のパレード(アメノパレード)

福永浩平(Vo)、是永亮祐(B)、山﨑康介(G)、大澤実音穂(Dr)からなる4人組バンド。2015年7月に残響レコードから発売した3rdミニアルバム「new place」の表題曲がスペースシャワーTVのレコメンド企画「it!」に選出され話題を集める。同年10月に大阪・ミナミ地区で開催されたサーキットイベント「MINAMI WHEEL」では、初出演ながら会場に入場規制がかかるほどの来場者数を記録する。2016年1月にインディーズ最後の作品となる1stシングル「Tokyo」を発表。3月にリリースするニューアルバム「New generation」でSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューを果たす。