ただのイイ子では絶対に負ける
──そして12月に1st EP「AUTHENTIC」でメジャーデビューを果たします。メジャーシーンに進むことに対しては、どう考えていますか?
豊島 僕らの強みは真面目に音楽を作ることなので、そこだけはほかのアーティストに負けたくないという気持ちがすごくあって。メジャーデビューするにあたって、もう1回、自分たちの音楽と向き合うきっかけをいただきました。
福島 うん。さっきも言いましたけど、僕が最初にほれ込んだのは、こうきくんの声。これから初めてAmber'sの曲を聴いてくれる方にもそこを感じてほしいし、そのためにはどうしたらいいかを改めて考え直してます。それは今後も変わらないかな。
──メジャーデビューEP「AUTHENTIC」には4曲が収録されていますが、それぞれジャンルが違っていて。これもAmber'sの特徴ですよね。
豊島 それも意識してましたね。いろんなジャンルの曲を作ることは結成当初からやっていたし、それを4曲の中で示したくて。「これが今の自分たちです」と言えるEPになりました。
──1曲目の「1!2!3!」はR&Bやソウルのテイストが反映されたアッパーチューンですが、この曲は“挑戦”をテーマに制作されたそうですね。
豊島 「メジャーの舞台に飛び出すにあたって、どんな曲から始めたい?」と話し合ってから作った曲なんですよ。イントロ、サウンド、歌詞の内容も含めて、「突き進もう!」という気持ちを描きたいなと。
福島 「今、どういう心境?」「どう見られたい?」「どんな野望がある?」とか、お互いにめちゃくちゃ意見を出し合いましたね。そういうディスカッションを経て、「だったら、こういう音だよね」と曲を作っていって。オケ先行ではなくて、2人の感情先行というか。そういう作り方は初めてでしたね。
豊島 メジャーデビュー日が12月3日なので、曲名も「1!2!3!」にしました(笑)。
──「何かと貶してくる奴もいつもありがとうくらいの気持ちでいよう」など、歌詞もすごく攻めてますね。
豊島 メジャーで戦っていく以上、「ただのイイ子では絶対に負ける」と思っていて。その気持ちをストレートに出したかったし、言いたいことを言おうという気持ちはありました。……「負ける」で思い出したんですけど、この前、小田和正さんのライブを観させていただいて。そのときは正直、「敵わない」と思いましたね(笑)。
福島 すごかったよね。
豊島 今まで好きなアーティストはいても、憧れのアーティストはいなかったんですよ。でも小田さんのライブを観たときに、初めて「こんな人になりたい」と思いました。
自分はそんなにきれいな人間ではない
──EPの2曲目は、タイトルトラック「AUTHENTIC」です。堂々としたタイトルですね。
豊島 “本物”ですからね。「もっと自由に生きようぜ」ということを歌ってるんですけど、僕は普段、些細なことが気になったり、真面目に考えすぎたりするところがあって。そういう部分を含めて自分なんですけど、この曲ではもっと楽観的な面を表現したかったんです。自分の暗い部分や自己肯定感の低さなんかにもスポットライトを当てつつ、音楽として自由に表現したいと思ったのが、音楽を始めたそもそもの始まりだったので。
──豊島さんが歌っている意味が詰まっている曲だなと思う一方で、ギタープレイからも強い個性を感じました。
福島 ありがとうございます。今までテクニック自慢みたいなことはやってなかったんですけど、この曲では、自分が培ってきたことを最大限に生かそうと思いました。もちろんほかの楽器とのバランスもありますが、自分が持っているテクニックもそうだし、オーセンティックな部分を詰め込めたのかなと。
豊島 かなり弾きまくってるから、こっちも負けじとフェイクを入れたりしました。その結果、ミックスが超大変でしたけど(笑)。
福島 バチバチぶつかってますからね(笑)。個人的には、80年代のテイストを入れられたのもよかったと思います。
──ヘヴィメタル的なギターでもないし、昨今流行っているネオソウルでもなく、80年代のAORやファンクを感じさせるプレイだなと感じました。
豊島 調子に乗るのでやめてください(笑)。
福島 ははは。もちろん自分のルーツも入ってるんですけど、こうきくんとやりとりしていく中で、「そうくる?」みたいな発見もあって。お互いの個性がしっかり出ている曲だし、メジャーデビューのタイミングで発表できてよかったです。
──続く「Black Swan」はダークな内面が表現された楽曲です。
豊島 この曲を書いたのは、「Desire -欲情本能-」と同じタイミングだったんです。「明日カノ」に登場する主人公たちを自分と照らし合わせていく中で、自分自身の暗い部分と向き合って。歌詞にも書いたんですが、「白鳥のように美しい人でありなさい」みたいに言われることもあるけど、自分はそんなにきれいな人間ではないし、黒いところもある。それをきれいに見せるんじゃなくて、ありのまま表現することが個性につながるんじゃないかなと。「どれだけの人がこの曲に共感してくれるんだろう?」とも思ったんですけどね。
──「美しくなくていいのだ」という歌詞にグッとくる人はすごく多いと思います。
福島 音的には、暗いだけではなく、どこか希望の光が見えてくるようなサウンドにしたかったんですよね。ギタープレイも光が感じられることを意識していたし、自分の叫びというか、歌うように演奏しました。
豊島 僕は“光が見える”みたいなことはまったく意識してなくて。2人だからこそできた曲ですね、「Black Swan」も。
──ちなみに豊島さんは、1人で活動していた時期に「なかなか光が見えない」と感じたことはありますか?
豊島 ありますね、もちろん。今もたまに拓人に対して「なんだよ、こいつ!」って思ったりするし。
福島 ははは(笑)。
豊島 人と一緒に作るって、こんなに大変なんだなって。それでも一緒にやりたい相方なんですよね、拓人は。いろいろあるけど、向き合って音楽を作っていきたいと思ってます。
東京ドームでライブをやるために
──EPの最後に収められているのは、リード曲「例えばの話」です。フォーキーな雰囲気は、豊島さんのルーツを感じさせます。
豊島 「例えばの話」は、メジャーデビューを発表した9月20日のワンマンライブに向けて作った曲なんです(参照:Amber'sが待望の初ワンマンでメジャーデビュー決定を報告「一緒に戦いに行こう!」)。「1!2!3!」「Black Swan」も披露したんですが、最後にどんな曲を歌ったらいいだろう?と考えていたら、自分たちのやりたいことを素直に表現した曲になりましたね。
福島 うん。「これが今の自分たちです」という曲ですね。デモ音源は弾き語りだったんですけど、それが本当に最高で、自分自身にもバシッときて。「このままで十分だな」と思ったし、アレンジするときも、こうきくんの思いをストレートに受け取ってもらうことだけを意識していました。制作中ずっと感動してましたね。
──ライブで披露したときの手応えはどうでした?
豊島 曲を作った経緯を話してから歌ったんですけど、僕らが言いたいことがしっかり伝わってるなと感じました。自分たちの思いをもっともっと多くの人に伝えたいと改めて実感しましたね。
──メジャーシーンに進むことで、活動の幅は大きく広がると思います。お二人の目標は東京ドームでライブをすることだとお聞きしましたが、デカい夢ですね!
豊島 そうですね! そういうスケールの大きい妄想をするのも大好きなんですけど(笑)、メジャーデビューが決まってからは、具体的にどうしていくかを考え直していて。最近は「じゃあ、どうする?」と現実的な想像をするようになりました。
福島 そうだね。
豊島 ドーム公演開催とかフェス出演とか、いろんな夢を叶えていきたいと思うけど、それってAmber'sの音楽を知ってもらいたいという気持ちが強くて。だからこれからの目標はAmber'sとして歌い続けていくことです。
──ちなみにお二人は音楽をやるために出会ったわけですが、普段はどんな距離感なんですか?
豊島 コロナ禍になってライブができなくなってから、しばらく一緒に住んでたんですよ。ひたすら曲を作ってSNSにアップしていたんですけど、そのときに家族みたいな関係になりました。
福島 メンバーでもあり、ライバルでもあり、友達でもある。不思議な関係なんですけど、やっぱり“家族”が一番近いのかなと。仲はいいですよ(笑)。
プロフィール
Amber's(アンバーズ)
豊島こうき(Vo, G)と福島拓人(G, Programming)からなる“ボーダレスポップデュオ”。2020年3月に初のオリジナルアルバム「VOSTOK」をタワレコ限定でリリースし、翌2021年にTikTokで人気を集めた「Question」が、ドラマ「カラフラブル~ジェンダーレス男⼦に愛されています。~」の主題歌に抜擢された。また2022年にはドラマ「明日、私は誰かのカノジョ」の主題歌を担当。同年6月に2ndアルバム「SPACEK」をリリースし、9月には東京・duo MUSIC EXCHANGEでワンマンライブを開催した。さらに同年12月に配信EP「AUTHENTIC」でメジャーデビューを果たした。
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