“ほぼロックバンド”である理由、弾き語りで広がる可能性
amazarashiは秋田ひろむと豊川真奈美(Key)をパーマネントなメンバーとしつつ、ライブではアレンジャー兼サウンドプロデューサーでもある出羽良彰をはじめとするサポートメンバーが参加するなど、基本的にはバンドとして活動している。そこにはどんな理由があるのか。
秋田の生み出す楽曲は非常にパーソナルな内容のものが多いが、それを形にし、演奏する上では「人間的なことが重要」であり、「信頼関係があって成り立つ音楽でありたい」と彼は言う。amazarashiの音楽が独りよがりにならず、聴き手と深いつながりが生まれているのも至極納得ができた。自分に対しての信頼感を忘れないからこそ彼らの音楽は強い光を放ち続けているのだろう。
また一方では、秋田によるアコースティックギターの弾き語りも最近のamazarashiにとって重要な表現方法になりつつある。以前、「弾き語りもいつか僕の武器になると思う」と発言していたこともあったが(参照:amazarashi「空に歌えば」インタビュー)、事実、12月6、7日には千葉・舞浜アンフィシアターで弾き語りライブが開催され、今回のアルバムの初回限定盤Bには秋田の弾き語り音源をまとめたCDも同梱される。バンドへのこだわりを持ちながらも、あえて1人で勝負することはamazarashiに何をもたらしているのだろうか。
「僕1人の力がどれほどのものか、というのはデビューしてからずっと感じてたことで、僕にとってはこだわる部分なんです。僕の歌は部屋で1人で作ったすごいパーソナルなものなので、1人で歌うということはとても自然な形です。バンドの迫力や派手さは当然なくなりますが、より言葉を届けられるのが弾き語りの魅力だと思います。僕自身ミュージシャンとして成長できると思うので、amazarashiに対する還元も大きいと思います」
amazarashiの音楽に触れるすべての人へ
アルバム「地方都市のメメント・モリ」のラストには「ぼくら対せかい」という楽曲が収録されている。この曲は“戦争”を想起させるテーマやメッセージの切り取り方にamazarashiの表現力の奥深さを改めて感じさせられる1曲だ。
「今回のアルバムは僕の日記的なアルバムなんですけど、最終的には地方で暮らす生活者の賛歌にしたいと思ってました。今年は地元の友達、昔の音楽仲間と話す機会が多くて、そこから得た発想です。この曲が“生活者の賛歌”という意味でラストにふさわしいと思いました。学生時代の思春期的な世界に対する反抗心、今、働いて生活している人間の社会に対する怒り、どちらにしても未だに僕らは世界と戦ってるよね、っていう歌です」
誰もが皆、流れゆく日々を生きている“生活者”であり、多くの人々が自身を取り巻く環境や現実といった “世界”に直面している。そう考えるとamazarashiの楽曲はさまざまな人々に響き得る可能性を持つ音楽だと言えるのではないだろうか。
現在の音楽シーンにおけるamazarashiの立ち位置を問うてみれば、秋田は「日本のロックの界隈には入れてもらえたのかなと思います。フェスにも少しずつ出れるようになったので。ただ中心とは距離があるのかなと思います」と答える。また、amazarashiの音楽は現状、どんな人たちに刺さっていると思うかという質問に対しては「何かしら満たされてない人かなと想像します。空白にはまったのがたまたま僕らだった、みたいな」と述べ、続けて「どんな人でも響いてくれたらうれしいです。何かの助けになるなら最高です」とも付け加えてくれた。
異彩を放つ彼らの音楽性やライブの手法はシーンのメインストリームではないのかもしれない。だが、この世界の中に完璧に満たされている人がどのくらいいるのだろう? みんな心の中に何かしらの空白を抱え、そこを埋めるために現実と戦っているのではないだろうか。amazarashiの音楽は、葛藤や悩みを抱える人たちの心の空白に潜り込む可能性を秘めている。
- amazarashi「地方都市のメメント・モリ」
- 2017年12月13日発売
Sony Music Associated Records -
初回限定盤A
[CD+DVD+グッズ]
4860円 / AICL-3462~4 -
初回限定盤B
[CD2枚組+DVD]
4212円 / AICL-3465~7 -
通常盤
[CD]
3240円 / AICL-3468
- CD収録曲(全盤共通)
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- ワードプロセッサー
- 空洞空洞
- フィロソフィー
- 水槽
- 空に歌えば
- ハルキオンザロード
- 悲しみ一つも残さないで
- バケモノ
- リタ
- たられば
- 命にふさわしい
- ぼくら対せかい
- 初回限定盤A DVD収録内容
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amazarashi Live Tour 2017「メッセージボトル」at Nakano Sunplaza 10.19
- ポエジー
- ヒーロー
- ヨクト
- 隅田川
- ワンルーム叙事詩
- 奇跡
- メーデーメーデー
- ピアノ泥棒
- つじつま合わせに生まれた僕等
- 少年少女
- 後期衝動
- フィロソフィー
- 空に歌えば
- ひろ
- しらふ
- 美しき思い出
- MC
- たられば
- 命にふさわしい
- スターライト
- 初回限定盤B CD収録曲 -弾き語り-
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- 夏を待っていました
- ヒーロー
- 穴を掘っている
- ジュブナイル
- 隅田川
- 初回限定盤B DVD収録内容 -Music Video-
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- 命にふさわしい
- ヒーロー
- 空に歌えば
- Making of amazarashi「フィロソフィー」
ツアー情報
- amazarashi × Aimer Asia Tour 2018
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- 2018年3月3日(土)中国 上海 Bandai Namco Shanghai Base(DREAM HALL)
- 2018年3月4日(日)中国 上海 Bandai Namco Shanghai Base(DREAM HALL)
- 2018年3月24日(土)台湾 台北 Legacy MaX
- 2018年3月31日(土)シンガポール Zepp@BIGBOX Singapore
- amazarashi Live Tour 2018
「地方都市のメメント・モリ」 -
- 2018年4月20日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2018年4月28日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2018年4月30日(月・祝)福岡県 福岡市民会館
- 2018年5月4日(金・祝)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年5月6日(日)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
- 2018年5月12日(土)宮城県 SENDAI GIGS
- 2018年5月19日(土)新潟県 新潟県民会館
- 2018年5月20日(日)石川県 本多の森ホール
- 2018年5月26日(土)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
- 2018年6月3日(日)北海道 Zepp Sapporo
- amazarashi(アマザラシ)
- 青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。2009年12月に青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリースした。その後2010年6月に「爆弾の作り方」をSony Music Associated Recordsから発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていき、2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発表した。2015年2月に発表した1stシングル「季節は次々死んでいく」の表題曲がアニメ「東京喰種トーキョーグール√A(ルートエー)」の主題歌となり、3月には台湾にて初の海外ライブを実施。8月には東京・豊洲PITにて3D映像を駆使したアニバーサリーライブを行った。2016年2月にアルバム「世界収束二一一六」をリリース。10月にはミニアルバム「虚無病」を発表し、千葉・幕張イベントホールにて360°全方位から映像を投影するという自身初の試みとなるワンマンライブ「amazarashi LIVE 360°」を開催した。2017年3月に初のベストアルバム「メッセージボトル」を発表。12月には秋田が千葉・舞浜アンフィシアターにて弾き語りライブ「理論武装解除」を2日間行った。同月にはPlayStation 4用ソフト「ニーア オートマタ」とのコラボレーション楽曲「命にふさわしい」、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」のオープニングテーマ「空に歌えば」、「ダイドーブレンド」のCMタイアップ曲「フィロソフィー」を含む4thアルバム「地方都市のメメント・モリ」をリリース。2018年4月からは今作を携え、全10公演のライブツアーを実施する。
「ライブではサポートメンバーを入れて5人で演奏してるんですけど、ずっと固定メンバーなのでほぼバンドだと思ってます。いい曲を作れてもいい演奏ができなければ意味がなくて、いい演奏、ライブをするには人も重要だと思ってます。amazarashiは信頼関係があって成り立つ音楽でありたいです。技術的なことよりも(サポートメンバーはすごくうまいですが)人間的なことが僕には重要です」