「王道少年マンガのオープニングなんて、僕らで大丈夫かな」
──ではシングルのお話を伺います。「空に歌えば」はアニメ「僕のヒーローアカデミア」のオープニングテーマとなっています。オファーをもらったときはどう思いましたか?
とても意外でした。今までタイアップはあってもわりとダークな世界観が多かったので、「『僕のヒーローアカデミア』みたいな王道少年マンガのオープニングなんて、僕らで大丈夫かな」と思いました。
──そこからどんな流れで楽曲を制作していきましたか?
すでにあった曲をいくつか聴いてもらって、選ばれたのが「空に歌えば」でした。そのときはまだ未完成な気がしていたので、そこから歌詞や構成をがらっと変えて、作品に合うように、amazarashiの楽曲としてもずっと歌っていけるように作り直しました。
──今回の楽曲で表現したかった思いやメッセージとは? そこにアニメから受け取った感情が影響したところもありましたか?
「僕のヒーローアカデミア」という作品に尻込みしてた部分もあったんですけど、(原作を)読んでみると挫折とか敗北とか、努力の末の勝利とか、amazarashiが歌ってきたこととの共通点も意外とあるなと思って、普段のまま制作しました。僕らがたどってきた挫折や勝利について歌にしました。
──ご自身からアウトプットできたことで達成感、充実感を特に味わえたフレーズはありますか?
「その時すでにもう雨は上がっていた」って言うフレーズが肝で、そこに至るまでどうしようかというふうに考えて作りました。そこで一瞬にして景色が開けるみたいな、そういうイメージです。
──鮮烈な言葉が飾りのない歌声で放たれることで聴き手の心に突き刺さる仕上がりは実にamazarashiらしいところだと思います。今回のボーカルレコーディングはどんな気持ち、どんな表現を意識しましたか?
歌録りに関してはいつもと変わらず、普段通り歌えるのが一番いいと思うので作り込まないように意識しながら歌いました。
──サビの「空に歌えば」の部分を秋田さんが歌わなかったのはどうしてですか? ちなみにどなたの声なのでしょうか?
ピアノの豊川(真奈美)のコーラスです。そこは初めから豊川に歌ってもらおうと思って作りました。絶対女性コーラスだなと思って。女性のコーラスが入るだけで楽曲がカラフルになるので、そういう突き抜ける感じが欲しかったです。
ポエトリーリーディングは僕らの武器になった
──2曲目「月光、街を焼く」はポエトリーリーディング曲です。どんな思いを起点として生まれた曲なのでしょう?
夜中に部屋で曲を作ってて、何か悪いことをしてる気がする瞬間があるんですよ。僕らには「爆弾の作り方」って言う曲もあるんですけど、そういう後ろめたい、けど快感でもある、みたいな気持ちを歌詞にしました。
──韻を踏みながら短いセンテンスを並べていく、ループ感のある後半の展開にグッときました。どんなイメージで生まれた流れなのでしょうか?
夜に部屋でこっそり作った曲が、ひっそり都会に運ばれて、全部燃やしてしまうっていうイメージです。
──2016年リリースのアルバム「世界収束二一一六」のメールインタビューの際、収録曲「しらふ」について「ポエトリーリーディングの表現を模索していて、これが今のところの完成品」とおっしゃっていました(参照:amazarashi「世界収束二一一六」特集)。それ以降のポエトリー曲では進化という名の更新をしっかりされているように感じますが、ご自身ではいかがでしょうか?
「しらふ」以前は実験の繰り返しで、新しいおもちゃの使い方がわからない、けど楽しい、みたいな感覚でした。でも「しらふ」でもう僕らの武器になったと思うので、あとはしかるべきときにふさわしい使い方をしようと思ってます。
今年中にもう1つ挑戦したいことがある
──3曲目「たられば」は、“もしも”のことを並べ、逆説的に“そうじゃない自分”を感じつつも、最終的には今の自分をしっかり肯定している1曲です。どんなきっかけで生まれた曲なのでしょうか?
数年前、ピアノの豊川が入院してた時期があって、見舞いに行ったときに僕の母親も来てて、父が病気になった話とかいろいろしてて、病院の独特の雰囲気も相まって、頭がぐるぐるして……みたいな混乱した感情から作り始めた曲です。この曲に関しては特別なものができたと思います。一生歌っていける曲だと思います。
──温もりのあるサウンドが、リリックと相まって心にスッと入り込んできました。メロディやアレンジに対してイメージしていたことを教えてください。
曲作りのときは作り込んだり悩んだり、時間がかかることも多いですけど、この曲は自然に流れるようにできあがりました。僕の作ったデモの段階ではミドルテンポのギターロックっていう感じだったんですけど、アレンジャーの出羽(良彰)くんが歌詞を汲み取ってくれて、この曲にはこれしかないっていうアレンジになったと思います。
──激情をほとばしらせるのとは違ったタイプのボーカルスタイルで。こういった歌唱はどんなところを大切にしてレコーディングしますか?
ボーカルの録音に関してはほんと自然に歌うのが僕に合ってると思うんで、あまり細かいニュアンスは気にせず録ってます。ライブ音源の一番いいテイク、みたいなものを音源にできたらなと思ってます。
──4曲目に「たられば」のアコースティックバージョンを収録したのはどうしてですか?
上で書いたポエトリーリーディングの話と同じで、弾き語りもいつか僕の武器になると思うので最近のシングルとかには入れるようにしてます。今は頼れる仲間と一緒にできて楽しいですが、僕個人の純粋な音楽力もちゃんと磨いておかなければと思ってます。
──これは秋田さんの弾き語りですか? 3曲目とは歌の雰囲気が変わっています。より生々しく、より距離感が近く感じました。
はい。そう言ってもらえるとうれしいです。弾き語りには弾き語りのよさが絶対あるので、そういうところもいつかamazarashiとして提示できたらなと思ってます。
──本作がリリースされると、2017年も残り4カ月ほどです。年末に向けてアーティストとしてたくらんでいること、個人的にやってやろうと思っていることはありますか?
今年中にもう1つ挑戦したいことがあるので、それが実現できたら充実した1年になるなと思ってます。音楽の話です。昔からたくらんでたことなので、近々実現させたいです。
- amazarashi「空に歌えば」
- 2017年9月6日発売
Sony Music Associated Records -
初回限定盤A
[CD+DVD+ラバーバンド]
2052円 / AICL-3405~7 -
初回限定盤B
[CD+ラバーバンド]
1706円/ AICL-3408~9 -
通常盤 [CD]
1296円/ AICL-3410
- 初回限定盤A / 通常盤収録曲
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- 空に歌えば
- 月光、街を焼く
- たられば
- たられば -acoustic ver.-
- 空に歌えば -instrumental-
- 初回限定盤B
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- 空に歌えば
- 月光、街を焼く
- たられば
- たられば -acoustic ver.-
- 空に歌えば -TV edit.-
- 初回限定盤A付属DVD
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- ヨクト(amazarashi Live Tour 2017「メッセージボトル」at Nakano Sunplaza 6.23)
- 少年少女(amazarashi Live Tour 2017「メッセージボトル」at Nakano Sunplaza 6.23)
- 命にふさわしい(amazarashi Live Tour 2017「メッセージボトル」at Nakano Sunplaza 6.23)
- 「僕のヒーローアカデミア」ノンクレジットオープニングムービー
- amazarashi Live Tour 2017
「メッセージボトル」追加振替公演 - 2017年10月19日(木)東京都 中野サンプラザ
- amazarashi(アマザラシ)
- 青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。2009年12月に青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリースした。その後2010年6月に「爆弾の作り方」をSony Music Associated Recordsから発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていき、2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発表した。2015年2月に発表した1stシングル「季節は次々死んでいく」の表題曲がアニメ「東京喰種トーキョーグール√A(ルートエー)」の主題歌となり、3月には台湾にて初の海外ライブを実施。8月には東京・豊洲PITにて3D映像を駆使したアニバーサリーライブを行った。2016年2月にニューアルバム「世界収束二一一六」をリリース。10月にはミニアルバム「虚無病」を発表し、千葉・幕張イベントホールにて360°全方位から映像を投影するという自身初の試みとなるワンマンライブ「amazarashi LIVE 360°」を開催した。2017年3月に初のベストアルバム「メッセージボトル」を発表。9月にテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」オープニングテーマの新曲「空に歌えば」をリリースする。