音楽ナタリー PowerPush - amazarashi
秋田ひろむ“イズム”の源流に迫る
「夕日信仰ヒガシズム」は僕の主義、イズム
──オープニングを飾る「ヒガシズム」内のフレーズを用いた「夕日信仰ヒガシズム」というアルバムタイトルにしたのはどんな理由からですか?
僕の住んでる家は夕方西日が酷くて、ちょっと嫌だなって思ってたんですけど、たまに夕日が真っ赤でとても綺麗な時があって、そんな時になんとなく小さい頃を思い出したり、切なくなったりする瞬間があって、この感じはなんだろうって考えだしたのが始まりです。そこから僕自身の大切なもの大切じゃないもの、もっと言えば僕の生きて行く上でのルールみたいなものに思い至って、今回のアルバムが出来ました。僕の主義、イズム、という意味でこのタイトルにしました。
──ドラマチックな展開と力強いアプローチがアルバムの幕開けにふさわしい「ヒガシズム」。ある種、アルバムのタイトルチューンとも言えるこの曲が生まれた経緯と、それをアルバムの頭にもってきた理由を教えてください。
この曲は最後に出来た曲です。アルバムの楽曲もそろって、テーマも見えて来たところで、何か一つ足りないなと思って作りました。これが出来た事でアルバムが完成形になったと思います。悲惨な事件とかニュースとかで見て、僕にとっては非現実的な事なんですけど、でも僕の知らないどっかで地続きなところがあるんだろうな、っていうのを僕の生活視点から描いた曲です。今までの僕らにない感じの曲だったので、一曲目にしました。
──光を感じさせるサウンドとメッセージが光る「スターライト」。amazarashiとしては比較的ストレートに聴き手を鼓舞してくれる楽曲はどんな思いで紡ぎだされたのでしょう?
これはアマチュア時代からあった曲で、作った当時は半分引きこもりのどん底でした。先も見えない生活の中で、自分を鼓舞する為に作ったんだと思います。
──疾走するギターサウンドとシンガロングしたくなるようなサビのメロディが印象的な「もう一度」。自身に向けた“復活の歌”とも言える内容は秋田さんのどんな想いが反映されているのでしょうか?
「スターライト」は過去から未来を見ている歌なんですが、「もう一度」は今現在から過去を振り返っている歌です。対比が面白いなと思ってこの曲順になりました。原点回帰で、ハングリー精神とかどうしても薄れていくものなので、今の自分を奮い立たせる為にこういう歌を歌いたいなと思って作りました。
──テンポをグッと落し、“絶望を連れてくるのは希望”“だって神様も悪人”といった印象的なフレーズが登場する「穴を掘っている」。そこで伝えたかった思いとはどんなものだったのでしょうか?
人生は自分の墓穴を掘っているようなものだっていうイメージがずっとあって、それを歌にしました。穴を掘っていて、頑張ったり頑張らなかったりして歪な形になったりして、でもそれは結局自分に似合った形になってしまって、死後それにぴったり収まってしまうっていう感覚です。ラストはちょっと皮肉っぽく希望を歌っていますが、悪人は悪人に似合った希望という形にしたかったです。
自分の意志を信じられなくなる瞬間に負けない
──個人的にすごく胸に響いたのが「雨男」でした。鬱々とした日々を過ごしながらも、わずかな光を手繰り寄せるように生きていく――そんなリアルなメッセージはamazarashiの真骨頂のような気がします。こういった楽曲は変わらずあふれてくるものですか?
amazarashiらしい曲というか、amazarashiが得意な形の曲だと思います。二番の友達との件とかは実際にあった事で、そういう心を動かされる瞬間があるうちは、こういう曲を作り続ける事が出来ると思います。
──「雨男」に“孤独と歩む創作の日々”というフレーズが出てきます。実際、秋田さんの創作のときの感情はどのようなものなのでしょうか?
第三者を想定に入れないで曲を作ろうと思ってて、例えば馬鹿野郎と思っても馬鹿野郎って歌ったらあの人傷つくかな、とかどうしても考えてしまうんですが、でもそこは馬鹿野郎と歌うべきだと僕は思っていて、そうなるとやっぱり孤独というか、内にこもってしまいます。
──同じく「雨男」に登場する“「愚にもつかない弱虫の賛歌」そう後ろ指をさされる事にむきになる己を恥と言うな”というフレーズも引っかかりました。自らが生み出した音楽へのさまざまな反応に心が揺れ動かされてしまうこともありますか?
どうしても気が弱いところがあるので、負けそうになる瞬間があるんです。自分の意志を信じられなくなる瞬間が。そういうものに負けない為にこう言う歌を作っているんだと思います。
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- ニューアルバム「夕日信仰ヒガシズム」2014年10月29日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット]3600円 / AICL-2753~4
- 通常盤 [CD] 3000円 / AICL-2755
CD収録曲
- ヒガシズム
- スターライト
- もう一度
- 夜の一部始終
- 穴を掘っている
- 雨男
- 後期衝動
- ヨクト
- 街の灯を結ぶ
- 生活感
- ひろ
- それはまた別のお話
初回限定盤DVD収録内容
- 空っぽの空に潰される(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
- つじつま合わせに生まれた僕等(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
- 美しき思い出(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
ツアー情報
amazarashi LIVE TOUR 2014「夕日信仰ヒガシズム」
- 2014年11月1日(土)大阪府 なんばHatch
- 2014年11月3日(月・祝)愛知県 Zepp Nagoya
- 2014年11月15日(土)東京都 Zepp Tokyo
- 2014年11月23日(日・祝)新潟県 新潟LOTS
- 2014年11月24日(月・祝)宮城県 Rensa
- 2014年11月29日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2014年12月21日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
amazarashi(アマザラシ)
青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を2009年12月に発表し、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリース。その後ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズへ移籍し、2010年6月に「爆弾の作り方」を発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていく。2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発売した。2012年6月にミニアルバム「ラブソング」、2013年4月にミニアルバム「ねえママ あなたの言うとおり」をリリース。2013年8月には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演し、11月にアルバム「あんたへ」を発表した。2014年9月にはインディーズ時代の「あまざらし」名義でライブ「あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語『スターライト』」を開催。秋田ひろむの書き下ろし小説の朗読とストリングスを加えた編成でのライブを行った。10月29日に約3年ぶりとなるフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」をリリース。