よりクセの強いライブになる
──「PARADOX」のリリース後、1月18、19日に幕張メッセ 幕張イベントホールでのワンマンライブが控えています(参照:雨宮天、幕張で自身最大キャパシティのワンマンライブ2DAYS)。どんなライブを想定していますか?
基本的には、前回のツアーと同じ目標にはなるんです(参照:雨宮天“唯一無二の世界”届けた初のツアー「私だからこそできるライブを」)。つまり、さっきも言った通りそれぞれの曲を可視化するようなステージにしたいんですけど、「VIPER」みたいな濃ゆい子がまた増えたので……。
──「VIPER」は強烈なシングルでしたね。
「VIPER」というシングルは、カップリングの「メリーゴーランド」も含めてめちゃくちゃ濃い味に仕上げることができた作品なんです。歌い方もそうですし、ジャケットやMVでも濃さを表現できたと思っていて。それをライブで可視化させるためには、やっぱり演出も濃くならざるを得ないというか。
──先ほど雨宮さんは「VIPER」を“突飛”という言葉で形容されました。しかし同時に、「VIPER」は雨宮さんのお好きな昭和歌謡的なクセのあるメロディを、やはり雨宮さん好みのアグレッシブなサウンドでパッケージした、雨宮天を象徴するような曲でもありますよね。
今、すごくいい言葉だと思ったのでいただいちゃいますけど、最近の私は“クセ”が強くなったかもしれません。かつ、その「VIPER」がライブでも1つのポイントになってくれるはずなので、ライブ自体もよりクセの強いものになると思います。そして、繰り返しになりますけど、私は声優として歌うということを大事にしているので、声優のスキルを生かして曲の世界観を際立たせるような“何か”を企んでいる最中です。
──それは楽しみですね。
あと、これはライブの直前まで内緒にしておこうか迷ったんですけど、今回は初めて生バンドの演奏をバックに歌います。
──マジですか。
マジです。完全に私の希望を通させてもらった格好なんですけど、私史上最大規模のライブということもあり、より派手なステージにしたかったんですね。私の曲にしても、生バンドの演奏でさらに魅力が増す曲も多いと思っていて。それから、もし今後も皆さんがライブに足を運んでくださるのであれば、より大きな会場でライブをしたい。そうなったときに、今のうちからバンド演奏が前提のパフォーマンスに慣れておく必要があるというか、今後に向けて鍛えていけるかなという気持ちも、ちょっとあります。
──ますます楽しみになりました。
大丈夫かな……。
──大丈夫ですよ。おっしゃる通り雨宮さんの曲はきっとバンド映えしますし。
今、口に出して言ったらすごいドキドキしてきました。ふうううう(大きく息を吐く)。
──いや、大丈夫ですよ。
そう何度も言っていただけると大丈夫な気がしてきました(笑)。
「リサイタル」は私のためのイベントだから
──他方で雨宮さんは、名曲カバーを中心に構成される「雨宮天 音楽で彩るリサイタル」というライブイベントも行っています。この「リサイタル」は、雨宮さんの中でどういう位置付けのライブなんですか?
まず「リサイタル」の開催が決まったら、私は私の歌いたい曲を集めるので、自分の好みを再認識できるんですよね。それがオリジナル曲の曲選びに反映されたりもしますし、それこそ「VIPER」は「リサイタル」を意識したからこそ生まれた曲なんです。あと、「リサイタル」は「私の、私による、私のためのイベント」と豪語しているので(笑)、だいぶ自由にやらせてもらっていて。それに対する皆さんの反応から「これは使えるな」みたいな発見もあったりするので、ステージングがどうこうというよりは……。
──実験場みたいな。
うん、そういう側面もありますね。
──2019年9月に行われた「リサイタル」の大阪公演では、雨宮さんご自身が作詞・作曲された「火花」という曲の1番を披露されました。これにはどういった経緯が?
私は趣味で、半年に1回ぐらいの頻度で曲を作っていたんですよ。というか、そのぐらいの頻度でふと「曲、作りたいかも」みたいな状態になるんですけど、ちょうど8月の「リサイタル」東京公演が終わったタイミングでその作曲欲が湧いてきまして。せっかくだから「リサイタル」っぽい曲にしたいと思いながら鼻歌を歌ってボイスメモに録ることから始めたところ、大阪公演の直前に1番だけできあがったんです。
──おお。
そこで、「リサイタル」は“私のためのイベント”だから、サプライズ的に自作曲を歌ったら面白いんじゃないかと思ってしまい。ダメ元でスタッフさんに相談したところ「やりましょう」と言ってくださったんです。
──作曲自体はいつからなさっていたんですか?
初めて作曲したのは小学6年生のときだったんですけど、たぶん中3か高1ぐらいになってから、かじる程度にコードの勉強をしたり。
──そういえば雨宮さんは、高校時代は軽音部に入っていたんですよね。
そうです。その軽音部時代に、ちょっとピアノを鳴らして曲のカケラみたいなものを作っていて。それもやっぱり半年に1回ぐらいの頻度だったので、その作曲ペースが今もゆるゆると続いている感じですね。
──寡作なんですね。「火花」も、鼻歌で作ったメロディにご自身でコードを付けられたんですか?
いや、がんばって付けようとしたんですけど、いかんせん自分で作った曲が難しすぎてうまくいかなかったんです。それで、「リサイタル」でピアノ演奏をしてくださった橘哲夫さんに「ここは、何か事件が起きたようなコードを付けてください」とお願いしたりして。
──「事件が起きたようなコード」って初めて聞きましたよ(笑)。
あはは(笑)。橘さんは、普段からボーカルディレクションや楽曲のアレンジでお世話になっている方なので、「火花」もアレンジまで面倒を見ていただきました。
私には曲に乗せて伝えたいことがない
──「火花」は2番以降もできているんですか?
実は、すでにフルで完成しています。ただ、作詞が大変でしたね。今までも曲だけ作りっぱなしで、歌詞は書いていなかったんですよ。私には、曲に乗せて伝えたいことがなくて(笑)。
──ええー(笑)。
でも、過去に1曲だけ歌詞を書いた曲があって、それがとにかくふざけた歌詞だったんですよ。その経験から、「火花」の歌詞もそうやってお気楽に書いたらいいんじゃないかと思って書いてみたんです。といっても、歌詞自体はシリアスで大人っぽい感じなんですよ。
──日常的な出来事を、レトリックを駆使してそれっぽく見せるみたいな?
そうそう。「火花」の歌詞は、私にとってはちゃめちゃに楽しかったとある夏の思い出がベースになっているんです。それをシリアスな世界に変換していく作業も面白かったし、この歌詞を書き上げられたことで作詞のコツがつかめました。
──それは次回作を期待してもよいということ?
いや、そこはタイミング次第ですね(笑)。少なくとも作曲に関しては、作曲欲が湧いてくるのを待つしかないので。それか、もしかすると過去に作った曲のカケラを完成形にしたくなるという可能性も、なくはないかもしれない。
──そのタイミング、早めに来てほしいです。楽曲への関わり方次第で雨宮さんの表現も変化するでしょうし。
うんうん。自分の好きなように曲を作れるというのはすごく楽しいし、さっきお話しした橘さんとのやりとりも含めて、作っているうちにどんどん“好き”の度合いが増していくんです。もちろん作詞も作曲も大変ではあるんですけど、そのぶん達成感も大きいので、今のところは前向きです。
──2019年の雨宮さんは、TrySailとしてアルバムをリリースすると共に全20公演に及ぶ全国ツアーを回り、ソロとしてはシングルを3枚リリースし「リサイタル」も行いました。だいぶお忙しかったのでは?
改めて振り返ると、かなりとっ散らかっていますね。でもとっ散らかっていたぶん、結果的に自分の幅を広げられた1年になったかもしれません。そうじゃなかったら、きっと「PARADOX」を歌おうという気持ちにもつながらなかったと思いますし。この勢いで2020年もどんどん武器を増やして、戦闘力も上げつつ新しいスキルも身に付けて、ラスボスを倒せるぐらいのレベルになっていたいですね(笑)。
ツアー情報
- LAWSON presents 雨宮天ライブ2020 "The Clearest SKY"
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- 2020年1月18日(土)千葉県 幕張メッセ 幕張イベントホール
- 2020年1月19日(日)千葉県 幕張メッセ 幕張イベントホール