前に進むことをあきらめきれない人の歌
──そして9曲目が、先ほど「最初に聴いたときは特に印象に残らなかった」とおっしゃっていた「GLORIA」。思うに、主に昭和歌謡に親しんでこられた雨宮さんにとって、この曲のウエストコースト的なロックサウンドはなじみが薄かったのでは?
それはあると思いますね。洋楽はほとんど聴いてこなかったから、「GLORIA」はリズムにしてもメロディにしても、いまいちピンとくるものがなかったのかもしれません。でも、そんな自分の音楽履歴にはない曲を、周りのスタッフさんから「似合うと思うよ」と言ってもらえたのがうれしくて「じゃあ、歌ってみよう」と。ただ、やっぱり最初はどうやって歌っていいのかわからなかったと言うか、今までの自分のやり方では曲の個性が出しづらかったんですよ。
──と言いますと?
例えば「Abyss」や「Eternal」のように叫びのニュアンスを入れるのも違うし、かといって「誓い」のように優しく歌ってものっぺりしちゃうし……。
──テンポ感が近い「エデンの旅人」は非常に力強い歌声でしたが、それに対して「GLORIA」はダウナーな印象を受けました。
そうですね。特に歌い出しのあたりはちょっと意識が朦朧としている……と言うとおかしいな(笑)。とにかくそういう脱力したボーカルは私の中にないものだったので、それを表現するのにすごく苦労しました。イメージとしては、大地を一歩一歩踏みしめてまっすぐ歩くと言うよりは、町の中を憂鬱そうにさまよっている感じ。どうしようもない苦しみや悲しみに襲われているわけじゃないけど、常にぼんやりとした不安に苛まれていると言うか。
──歌詞にしても、深い闇の中にいるわけではないけれど、かといって明確に光が見えているわけでもない。
私の中では、サビで「この世界から歌おう GLORIA 溢れ出した涙は光に変わる」と歌ってはいるけど、それはあくまで主人公が自分に言い聞かせているようなイメージなんです。だから確信を持って宣言しているというよりは、自分を納得させるために言っている。そうでもしないと前に進めない、進むことをあきらめきれない人の歌だと私は解釈しました。その歌うときのテンションも含めて、一番悩んだ曲かもしれないですね。やっぱり、せっかく私のところに来てくれた曲だから、そのよさを生かしたいし、今の自分にできる最高の状態でお出ししたくて。
──「Shu!Bi!Du!Ba!」のところで「曲の主人公になりきる」というお話をされましたが、この「GLORIA」も含めアルバムを通して聴いて、雨宮さんは曲に表情を付けるのが抜群にうまい人だなと思いました。
ありがとうございます。私はアーティストデビューしたときから声優として学んだこと、得たことを歌に反映していきたいとずっと思っているんです。だから曲ごとに主人公の違いを感じていただけたのならすごくうれしいですし、今後もそういう表現をどんどん磨いていきたいです。
最後は「誓い」が全部受け止めてくれる
──続いて「Fleeting Dream」を挟んで、11曲目は先ほど少し触れた新曲の「Trust Your Mind」。同じ四つ打ち路線でも「Breaking the Dark」がロック寄りだったのに対し、こちらはキラキラしたウワモノが乗ったポップスもしくはダンス寄りのナンバーですね。
「Trust Your Mind」は、「これは絶対お客さんが好きなやつだ!」っていう気持ちで選びました。一聴して、私が中高生のときによく聴いていたアニソンと同じノリを感じて、ライブでお客さんが盛り上がってくれている姿が想像できたので。特にサビ終わりの「叫んでる メロディー」の部分は、アニソン好きの方々には刺さるんじゃなかろうかと。
──なるほど。言われてみればこの曲のキャッチーさはアニソンのそれに近い。
実はこの曲は、私が頑として譲らなかったことで収録された曲なんですよ。つまり一度アルバムに入れられないかもしれないという事態になったんですけど、そこで私がプロデューサーさんと1対1で向き合って「絶対に私は折れませんよ」と。ただ、折れないといってもわがままを通すのではなくて、相手に納得してもらわないと嫌なんですよ。だから私もちゃんと理論武装して、30分以上話し合ったのかな。最終的に私が「このアルバムに、新曲のバラードって必要ですか?」というカードを切りまして。
──ああ、それが最初におっしゃっていた「強い子」で固める話に繋がるんですね。
そうなんですよ。だから「Trust Your Mind」が入ったことで、当初予定していたバラード曲はなくなったんです。そのカードを切ってから私もプロデューサーさんも話すことがなくなってしまい沈黙が続いたんですけど、これは気まずくなって先に口を開いたほうが負けだなと(笑)。
──結果、プロデューサーさんのほうが沈黙に耐えられなかったと。無責任なことを言いますけど、楽しそうな現場ですね。
はい。プロデューサーさんもそれだけ真剣に私の楽曲のことを考えてくださっているわけですし、私も譲れない場合はきちんとその理由を説明して、スタッフさん全員の了解を得ていますから。
──実際、バラードの役目はアルバムのラストを飾る「誓い」が一手に引き受けてくれるのでは?
今は、すごくそう思っています。11曲を通していろんなことがあったけど、最後は「誓い」が全部受け止めてくれる。そんな強さと包容力を持った曲なので。
──歌詞の傾向として“闇の中で光を目指す”というお話もされましたが、前回のインタビューで「誓い」は「“光”のイメージ」ともおっしゃっていましたし。
そういう意味でも最後を締める曲として申し分ないですね。
──7月15日からはこのアルバムを引っさげてのツアーが始まります。ツアーに向けた意気込みを改めてお聞きしてよいですか?
前回のインタビューで、ツアーではステージ全体で楽曲の世界観を表現して、音源では気付かなかった新たな一面をお見せしたいというお話をしました。それが今、信頼するスタッフさんたちの手によって実現されようとしています。正直「すごいことになってるな」という感じです。演出やセトリも固まってきて、まさにこのアルバムを視覚化するようなステージになりそうなので、そこに立つ私も、この強い子たちがより一層強く感じられるようなパフォーマンスをお見せします。
- 雨宮天「The Only BLUE」
- 2018年7月11日発売 / ミュージックレイン
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初回限定盤 [CD+Blu-ray]
4299円 / SMCL-546~7 -
通常盤 [CD]
3000円 / SMCL-548
- CD収録曲
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- エデンの旅人
- Shu!Bi!Du!Ba!
- Marvelous scene
- Abyss
- irodori
- Lilas
- Breaking the Dark
- Eternal
- GLORIA
- Fleeting Dream
- Trust Your Mind
- 誓い
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- 「エデンの旅人」Music Video
- Visual Making of The Only BLUE
- ツアー情報
雨宮天「LAWSON presents 雨宮天ライブツアー2018 “The Only SKY”」 -
- 2018年7月15日(日) 神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
- 2018年7月29日(日) 大阪府 オリックス劇場
- 2018年8月5日(日) 新潟県 新潟テルサ
- 2018年8月11日(土・祝) 福岡県 福岡国際会議場 メインホール
- 2018年8月19日(日) 兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2018年9月2日(日) 宮城県 チームスマイル・仙台PIT
- 雨宮天(アマミヤソラ)
- 1993年8月28日生まれの声優アーティスト。2011年に開催された第2回ミュージックレインスーパー声優オーディションに合格し、翌年に声優デビューする。2014年8月に自身が主演を演じるアニメ「アカメが斬る!」のオープニング曲「Skyreach」を表題曲とした1stシングルを発表し、アーティストデビューした。同年12月には同じミュージックレインに所属する麻倉もも、夏川椎菜と共に声優ユニット・TrySailを結成することを発表。2016年9月に1stアルバム「Various BLUE」をリリースし、ソロライブ「LAWSON presents 雨宮天ファーストライブ2016 “Various SKY”」を大阪・オリックス劇場と東京・中野サンプラザホールで行う。2017年9月に名曲をカバーを中心としたライブイベント「LAWSON presents 雨宮天 音楽で彩るリサイタル」を実施。同年12月にワンマンライブ「LAWSON presents 雨宮天ライブ2017 “Aggressive SKY”」を開催した。2018年5月にアニメ「七つの大罪 戒めの復活」のエンディング曲を収めた6thシングル「誓い」をリリース。7月より2ndアルバム「The Only BLUE」を携えて、自身初となる全国ソロライブツアー「LAWSON presents 雨宮天ライブツアー2018 “The Only SKY”」を行う。