雨宮天|攻撃的に振り切ったアルバムに広がる“Only”な世界観

歌うときは自分がその曲の主人公になりきる

──続いて2曲目の「Shu!Bi!Du!Ba!」は、「エデンの旅人」とは打って変わって、軽快にスイングするアッパーなロカビリーナンバーになっていますね。

“ロカビリー”という単語は選曲の会議でも出ていたような気がします。でも、私はこの曲から笠置シヅ子さんの「東京ブギウギ」の現代版みたいな雰囲気を感じ取ったんですよ。

──ああー。でも、ルーツ的にはつながっていますし、その捉え方は昭和歌謡がお好きな雨宮さんならではですね。

私の曲って圧倒的に暗い曲が多いし、私自身も小さい頃から暗い曲が好きだったんですけど、「Shu!Bi!Du!Ba!」は明るい曲にも関わらず「あ、たぶんこの曲、好きになる」と感じたんですよね。それは、私が「東京ブギウギ」が大好きだからだと思います。

──この「Shu!Bi!Du!Ba!」でも「光を探すんだ」と歌っていますが、この「光」の中身がいい意味で軽い。

あはは(笑)。確かに「Shu!Bi!Du!Ba!」の主人公が探している「光」は理想や希望ではなく、歌詞に出てくるように「Spotlight」ですからね。「エデンの旅人」の歌詞が幻想的だったのに対して、「Shu!Bi!Du!Ba!」には「東京」という具体的な都市名が出てきたり、グッと現実世界に引き戻された感じがあります。それでいて、現実世界で見る夢の世界みたいなところもあって。うん、歌詞もとても好きですね。

──歌声も「エデンの旅人」とはまったく違いますよね。

はい。この1曲の中で、ノリノリなかわいらしさと、大人っぽさ、そしてちょっとだけカッコよさも出したくて。私にとっては、自分の歌う曲はすべてキャラソン……といったら語弊があるかもしれないんですけど、自分がその曲の主人公になりきることをテーマにしているんです。だから「Shu!Bi!Du!Ba!」も思いっきり主人公になりきって、気持ちセクシーだったり、「今夜は楽しんじゃうわー!」みたいなテンションだったり、自分がこの曲から感じた要素を全部詰め込みました。視覚的にも、主人公が見ているであろう世界をイメージして。例えば「エデンの旅人」では夜の砂漠でたった1人で声を枯らして叫んでいたけど、「Shu!Bi!Du!Ba!」ではキラキラしたダンスホールでマイクを片手に歌っている、みたいな。

──「Shu!Bi!Du!Ba!」は、雨宮さんのディスコグラフィからすると変化球的な曲ですよね。

確かに。ただ、「irodori」があったおかげでそこまで不自然じゃないはず。だからホントにこのアルバムはシングルの流れをちゃんと汲んでいて。私の中では、「irodori」と「Eternal」でいろいろ無理やりこじ開けた感があったんですよ。もしあのとき日和ったりしていたら、今回のアルバムはこうはなっていなかったでしょうね。

曲順すらも攻撃的

──3、4、5曲目はいずれも既発のシングル曲ですが、3曲目「Marvelous scene」と4曲目「Abyss」はカップリング曲なんですよね。雨宮さんのシングルはカップリング曲も破壊力があるので、それを象徴するような並びだなと。

ありがとうございます。基本的に、私はカップリングでは表題とは別のアプローチで何がやれるか、どこまで振り切れるかを考えていて。しかも最近は、例えば表題がアップテンポな曲だったらカップリングはゆったりしたテンポにしようとか、そういう発想がどんどんなくなってるんですよ。私だけじゃなくて、スタッフの皆さんも。

──実際、「Marvelous scene」は「Eternal」のカップリングですが、どちらも攻撃的なロックナンバーですからね。

はい。もう、攻撃の手を緩める気がない。

──ちなみに、アルバムの曲順にはどの程度関わっていらっしゃるんですか?

実は、曲順についてはまったく関わっておりません。なぜかと言うと、ライブのセットリストを自分で組みたかったからなんです。要は、自分が理想的だと思う曲順をアルバムで実現できてしまったら、ライブも同じ曲順にしたくなっちゃうと思って。なので、アルバムの曲順はスタッフの皆さんにお任せしました。「その代わり、ライブのセトリは私主導で決めさせてください」と念押しして(笑)。

──お任せした曲順をご覧になってどう感じられました?

「そう行くんだ!?」と思いました。ただ、このアルバムの曲たちにとって、ダメな曲順はないとも思っているんです。どう並べられてもみんな1人で生きていける強い子たちなので。それでも、1曲目が「エデンの旅人」で、次が「Shu!Bi!Du!Ba!」っていう流れにはびっくりしましたけどね。

──歌った本人が驚くくらいですから、リスナーにとってもインパクトがありました。

最初から全力で攻めに出ていると言うか、曲順すらも攻撃的で、スタッフさんには感謝しています。

突き抜けてハッピーな人の気持ちはわからない

──6曲目の新曲「Lilas」は、アルバムの中では「Shu!Bi!Du!Ba!」とは別方向で異色とも言える、青春パンク的なギターロックです。

この曲は、どちらかと言うとさわやか系のカテゴリーにあった候補曲の1つだったんですけど、最初は正直選ぶつもりではなかったんです。やっぱり明るい曲は耳に残りにくい体質みたいで(笑)。

──体質(笑)。

でも、1stアルバムに入っていた「RAINBOW」もそうだったんですけど、何回も聴いてるうちにじわじわと曲のよさがわかってきて。あと、スタッフさんが「この曲、ライブでみんなで歌えるんじゃない?」と言ってくださって、それもあってどんどん好きになっていきましたね。とはいえ、ただ楽しいだけの曲にはしたくなかったので、自分なりに歌い方を工夫して。

──そこ、まさにお聞きしたかったんです。この曲では非常にラフな歌い方をされていますよね。

そうです。私の中では“やさぐれ感”というのがポイントだったんです。声も低めでかすれ気味の、いわゆるハスキーボイスをイメージしています。レコーディングでも「あ、今ちょっと声高くなっちゃったな」と思ったら、心の中で「やさぐれ、やさぐれ」って念じて声のトーンを落とすみたいな。

──そのやさぐれ感は曲調にもマッチしていると思います。歌詞もほかの曲と比べると日常的と言うか、主人公も等身大ですよね。

雨宮天「The Only BLUE」通常盤 ジャケット

はい。ここでは闇も孤高も捨てて、私とお客さんみんなの曲という雰囲気ですよね。

──確かに闇がない。この曲は収録曲の中で唯一、青空感があります。

そう、私も夏っぽいなって思って。スタッフさんにも「デオドラントスプレーとか清涼飲料水のCMソングっぽい」と言われました(笑)。

──それでいて、どこか憂いを感じさせるというのも雨宮さんの楽曲の特徴ではないかと。

それは、塩野(海)さんが書かれた曲だからかもしれないですね。

──実は4曲目「Abyss」、5曲目「irodori」、6曲目「Lilas」はすべて塩野さん作詞・作編曲の、言わば塩野ゾーンなんですよね。

その並びにもびっくりしたんですけど(笑)。でも、塩野さんの曲って、エモーショナルでもどこか陰があるんですよね。たぶん「Lilas」のメロディにもそれが潜んでいて、だからこそ私もスルメ的に好きになっていったんだと思います。あと、歌詞も一見シンプルなようで「君」は「あれもこれも全部抱えて1人で悩んでる」し、「毎日頑張りすぎている」し。

──ある種の応援歌にもなっていますよね。何の悩みもない、とにかくハッピーな人のことは歌っていない。

そうなんですよ。突き抜けてハッピーな人の気持ちは私にはわからないので(笑)。今でこそだいぶ強くなったと思いますけど、もともと私は小心者でネガティブで弱い人間だったから、「Lilas」の歌詞にも共感できるんですよね。

──続く7曲目の「Breaking the Dark」は、マイナー調のアップテンポな四つ打ちダンスロック。この路線は、1stアルバム収録の「Silent Sword」からですよね。

あ、そうですね。実はどちらもプロデューサーさんの一押し曲なんですよ。

──ついでに言うと、「irodori」のカップリング曲だった10曲目の「Fleeting Dream」と、11曲目の新曲「Trust Your Mind」も同路線。ただ、その中で「Breaking the Dark」は最もヘビーでロック色の強い、縦ノリのナンバーです。

「Breaking the Dark」は最初に聴いたとき、かなりエネルギーが必要な曲だなと思って。正直、今の自分に歌えるのかちょっと不安な部分もあったんですよ。でも、この曲はきっとライブでも力を発揮してくれるだろうし「よし、がんばろう!」と気合いを入れました。レコーディングの段階ではアレンジも変わっていて、デモのときよりもゴリゴリ感が増していたんですよ。それを聴いてさらに「うわ、カッコいい!」とテンションが上がり、結果的にノリノリで歌えましたね。

雨宮天「The Only BLUE」
2018年7月11日発売 / ミュージックレイン
雨宮天「The Only BLUE」初回限定盤

初回限定盤 [CD+Blu-ray]
4299円 / SMCL-546~7

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雨宮天「The Only BLUE」通常盤

通常盤 [CD]
3000円 / SMCL-548

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CD収録曲
  1. エデンの旅人
  2. Shu!Bi!Du!Ba!
  3. Marvelous scene
  4. Abyss
  5. irodori
  6. Lilas
  7. Breaking the Dark
  8. Eternal
  9. GLORIA
  10. Fleeting Dream
  11. Trust Your Mind
  12. 誓い
初回限定盤Blu-ray収録内容
  • 「エデンの旅人」Music Video
  • Visual Making of The Only BLUE
ツアー情報
雨宮天「LAWSON presents 雨宮天ライブツアー2018 “The Only SKY”」
  • 2018年7月15日(日) 神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
  • 2018年7月29日(日) 大阪府 オリックス劇場
  • 2018年8月5日(日) 新潟県 新潟テルサ
  • 2018年8月11日(土・祝) 福岡県 福岡国際会議場 メインホール
  • 2018年8月19日(日) 兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2018年9月2日(日) 宮城県 チームスマイル・仙台PIT
雨宮天(アマミヤソラ)
1993年8月28日生まれの声優アーティスト。2011年に開催された第2回ミュージックレインスーパー声優オーディションに合格し、翌年に声優デビューする。2014年8月に自身が主演を演じるアニメ「アカメが斬る!」のオープニング曲「Skyreach」を表題曲とした1stシングルを発表し、アーティストデビューした。同年12月には同じミュージックレインに所属する麻倉もも、夏川椎菜と共に声優ユニット・TrySailを結成することを発表。2016年9月に1stアルバム「Various BLUE」をリリースし、ソロライブ「LAWSON presents 雨宮天ファーストライブ2016 “Various SKY”」を大阪・オリックス劇場と東京・中野サンプラザホールで行う。2017年9月に名曲をカバーを中心としたライブイベント「LAWSON presents 雨宮天 音楽で彩るリサイタル」を実施。同年12月にワンマンライブ「LAWSON presents 雨宮天ライブ2017 “Aggressive SKY”」を開催した。2018年5月にアニメ「七つの大罪 戒めの復活」のエンディング曲を収めた6thシングル「誓い」をリリース。7月より2ndアルバム「The Only BLUE」を携えて、自身初となる全国ソロライブツアー「LAWSON presents 雨宮天ライブツアー2018 “The Only SKY”」を行う。