「誓い」から感じた、悲痛なほどに強い思い
──雨宮さんの意向が反映されているのは、ニューシングルにも言えることですか?
はい。ただ、「誓い」に関してはアニメ「七つの大罪」のタイアップということもあり、バラードであることは最初から決まっていたんです。それでも数曲あった候補曲の中で一番グッときたのがこの「誓い」だったし、幸いにも作品サイドの意向とも合致したので、この曲に決まりました。
──その「グッときた」ポイント、数曲あった中から「誓い」を選んだ決め手になったのは何だったんですか?
サビの終わり方ですね。この曲は、サビでパーッっと視界が広がる感じがあるんですけど、その終わりはちょっと切なげなんです。歌詞で言うと「そっと手を握るの」の部分ですね。選曲の段階ではまだ歌詞は付いていなかったんですけど、そこが特徴的に聞こえて。ただ優しいだけのバラードじゃない、切実さみたいなものを感じました。パッと聴くと女性らしい柔らかい曲なんですけど、実は悲痛なくらい、強い思いが込められている。その気持ちの強さが決め手になりました。
──「誓い」の歌詞は、「七つの大罪」の作中で雨宮さんが演じられているヒロインのエリザベスの心情を表していると思います。それをエリザベスとしてではなく、つまりキャラソンではなく雨宮天として歌うという点で、難しさはありませんでした?
まさにそこが、この曲で一番難しかったところなんです。それこそキャラソンの体で、エリザベスの声で歌ってみたり、逆にタイアップを完全に無視して歌ってみたり、事前にいろんなやり方を試したんですけど、レコーディング当日になっても正解が見つからなくて。だから現場でもう1回みんなで集まって、結局収録の前に2時間ぐらいディスカッションしたのかな。
──そんなに。
歌を録り始めるまでにあんなに時間がかかったレコーディングは今までなかったですね。でもそこが決まらないと歌えないし、この歌の鍵になると私も思ったので、かなり時間を割いて入念に話し合いました。
──そのディスカッションの果てにたどり着いた正解って、言語化できます?
ええと……簡単に言うと、Aメロはエリザベスを思わせる優しさや包容力を表現するイメージで。でもサビでは雨宮天としての力強さを前面に押し出して、曲に込められた思いの強さをダイレクトに声で届けていくような形になりましたね。ただ気持ちの面では、終始一貫してエリザベスに寄り添いながら。
──結果「七つの大罪」のエンディングテーマとしても、作品から独立した雨宮天のソロ楽曲としても成立する曲になっていますね。
私のソロ活動を見守ってくださっている方が聴いたときに「キャラソンじゃん」ってなってほしくなかったし、だからといって「七つの大罪」のファンの方が「エリザベスっぽくない」ってがっかりしちゃうような曲にもしたくなかった。要はどっちも取りたかったんです(笑)。結果的に、雨宮天とエリザベスのバランスにしても、曲のメッセージの伝え方にしても、納得のいく形に収まったと自分では感じています。
自分にできる精一杯の、慈愛に満ちた表情
──楽曲と同様に、ミュージックビデオにも雨宮さんの意向が反映されているんですか?(参照:誓い | ビデオ | ソニーミュージック オフィシャルサイト)
そうですね。「誓い」のMVに関しては、「七つの大罪」という作品の世界観と、エリザベスの王女然としたキャラクターをかなり意識しています。やっぱり「七つの大罪」は私にとって大切な作品だし、そのエンディングテーマを歌えたこともすごくうれしかったし、私自身もエリザベスの気持ちで歌っているので。あのMVに映っているのは、今の自分にできる精一杯の、慈愛に満ちた表情です(笑)。
──ははは(笑)。
「攻撃性を消す」というのが今回のMVにおける個人的な目標だったんです。とにかくトゲを引っ込めて、武器も全部捨てて、もう「包み込みますよ」と。そういう意味でも「誓い」はタイアップだったからこそ生まれた曲だし、もし今回のシングルがノンタイアップだったらこういうバラードは歌っていないと思うんです。曲調にしても、私の曲の中では珍しく光を感じさせるタイプの曲だし、だからMVでも草に囲まれて……。
──草(笑)。
植物ですね!(笑) 植物を自分の周りにたくさん配して。今までのMVにも花を使ったことはあったんですけど、色が青かったり、無機質な感じだったんですよ。言ってみれば自分以外の生命の存在をあんまり許していなかったんですけど、今回は慈愛や包容力がテーマということもあって、より“生”を感じられるMVに仕上がりました。
背中合わせの2曲
──カップリングの「Abyss」は、打って変わってダークでヘビーなロックナンバーです。
実は、今回のシングルは「両A面でもいいんじゃない?」という話がスタッフさんからも出たんです。実際、面白いくらい対照的な2曲なので。「誓い」は今言ったように“光”のイメージで、色で例えるなら白ですけど、それに対して「Abyss」は“闇”や“影”を連想させる曲。歌詞にしても「誓い」の主人公には迷いがないけれど、「Abyss」の主人公は迷いながらもがいている。だから、私の中で「誓い」と「Abyss」は背中合わせに立って、どちらも正面を向いているような印象なんです。
──言われてみれば、その通りですね。
あと「誓い」は今までソロで歌ってきた曲とは方向性が違うので、「Abyss」で「普段はこういう曲を歌っています」というのを見せたかったのもあります。例えば「七つの大罪」という作品のファンで「誓い」で初めて私のCDを手にしてくださる方に、いつもの私も知っていただけたらいいなって。
──いつもの自分ということで、「Abyss」のレコーディングは「誓い」ほど難渋しなかったですか?
そうですね。ただ、「Abyss」はホントに私好みの曲なので、好きだからこそこだわりたい部分もあって。こういった、色で言えば黒や深い青を思わせる曲をたくさん歌ってきている中で「じゃあ、この曲でしか出せないものは何だろう?」「いろいろ歌ってきた今だから出せるものは?」と考えると悩むところもあったんですけど、土台の部分では悩まなかったですね。「誓い」は土台で悩みまくって歌い出すまでに2時間かかったので。
──“この曲でしか出せないもの”って、具体的に言葉にできますか?
うーん……基本的に私が歌うダークな曲には葛藤や焦りが滲み出ているんですけど、そうやって苦境に立たされたときに発せられる“叫び”のようなものは、かなり意識しましたね。「Eternal」でも叫ぶような歌い方を意識したんですけど、私の中では叫びの質が違うと言うか。「Abyss」はそれこそ歌詞にもある「光も音も届かぬ」ような、深くて暗い場所に向かった叫びで……。
──「Abyss」の叫びは内向的ということでしょうか?
ああ、それだ!
──片や「Eternal」はひたすらアグレッシブなロックナンバーで、その叫びも外に向けて発散するような、攻撃的なものでしたよね。
うんうん。それに対して「Abyss」は内向きの叫び。だから叫ぶ先も、一点に集中させる感じなんです。それに加えて、例えば頭サビの「消えゆく君の声」のロングトーンの部分は、深い闇の奥から聞こえてくる叫びであると同時に、深い闇に向かう叫びでもあるような、どちらとも取れるものにしたくて。私も作家さんから聞いて知ったんですけど、歌詞の「君」は、実は自分のことなんです。つまり、自分の中で自分を二人称化して俯瞰してるみたいな。そういう状況から生まれる叫びって、今まで表現したことがなかったし、それが「Abyss」ならではの叫びなんだと思います。
──これまで雨宮さんが歌われてきたロックナンバーは、「Eternal」をはじめ比較的アップテンポの曲が多かったですよね。それに対して「Abyss」はミディアムテンポという点が、個人的に新鮮でした。
確かにかなり重量感がある曲ですよね。でもこのテンポだったから、より気持ちを込められた部分はあります。要はテンポに追われない分、感情のグラデーションみたいなものを丁寧に付けていけたし、パートごとのメリハリも出せたのかなって。ロングトーンの部分も、次のフレーズがすぐにやってこないからこそ思いっきり叫べました。
──しっかり叫ぶためのスペースがある。
あと、テンポが速いからこそ生まれる必死さってあると思うんです。つまり、実際に歌うほうも速いテンポについていくのに必死だから、歌声も必死になっていく感じ。でも「Abyss」では、自分で意図して出した必死さを散りばめられたと思います。特に最後のサビは「あと少しで もう少しで 指先がきっと届くから」という歌詞にふさわしい必死さを、アニメで演じるキャラクターの台詞に乗せるように表現できたんじゃないかなって。
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声優業と歌手業の相互作用
- 雨宮天「誓い」
- 2018年5月9日発売 / ミュージックレイン
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初回限定盤 [CD+DVD]
1850円 / SMCL-539~40 -
通常盤 [CD]
1340円 / SMCL-541 -
アニメ盤 [CD+DVD]
1750円 / SMCL-542~3
- 初回限定盤、通常盤CD収録曲
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- 誓い
- Abyss
- 誓い(Instrumental)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 誓い Music Video
- 誓い TV SPOT 15 sec
- 誓い TV SPOT 30 sec
- アニメ盤CD収録曲
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- 誓い
- Abyss
- 誓い(Instrumental)
- 誓い(TV size)
- アニメ盤DVD収録内容
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- 「七つの大罪 戒めの復活」ノンクレジットエンディング
- 雨宮天2018ツアー
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- 2018年7月15日(日)
- 神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
- 2018年7月29日(日)
- 大阪府 オリックス劇場
- 2018年8月5日(日)
- 新潟県 新潟テルサ
- 2018年8月11日(土・祝)
- 福岡県 福岡国際会議場 メインホール
- 2018年8月19日(日)
- 兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2018年9月2日(日)
- 宮城県 チームスマイル・仙台PIT
- 雨宮天(アマミヤソラ)
- 1993年8月28日生まれの声優アーティスト。2011年に開催された第2回ミュージックレインスーパー声優オーディションに合格し、翌年に声優デビューする。2014年8に自身が主演を演じるアニメ「アカメが斬る!」のオープニング曲「Skyreach」を表題曲とした1stシングルを発表し、アーティストデビューした。同年12月には同じミュージックレインに所属する麻倉もも、夏川椎菜と共に声優ユニット・TrySailを結成することを発表。2016年9月に1stアルバム「Various BLUE」をリリースし、ソロライブ「LAWSON presents 雨宮天ファーストライブ2016 “Various SKY”」を大阪・オリックス劇場と東京・中野サンプラザホールで行う。2017年9月に名曲カバーを中心としたライブイベント「LAWSON presents 雨宮天 音楽で彩るリサイタル」を実施。同年12月にワンマンライブ「LAWSON presents 雨宮天ライブ2017 “Aggressive SKY”」を開催した。2018年5月にアニメ「七つの大罪 戒めの復活」のエンディング曲を収めた6thシングル「誓い」をリリース。7月より自身初となる全国ソロライブツアーを行う。