ナタリー PowerPush - ALL OFF

プロデューサーにオブリRIKIJI迎え リスペクトインタビュー

俺は認めないよ、5弦ベースは

──今回はアーティストとして先輩のRIKIJIさんとお話するということで、せっかくなので普段訊けないようなことを松浦さんと越本さんに訊いてもらえればと思います。

RIKIJI 何かある?

越本 えーっと……ベースに関してなんですけど。

RIKIJI へっ、このタイミングで?(笑)

越本 10代の頃に聴いて一番影響を受けたバンドのメンバーと一緒にスタジオに入ると、やっぱり萎縮するじゃないですか。それであんまり気軽に話もできなくて、ベースのことについても訊けなかったんです。

RIKIJI すぐ言えって言ったじゃん!

一同 (笑)。

──大丈夫ですよ、個人的なことでも(笑)。

越本 いいんですか? じゃあ……5弦ベースって、RIKIJIさん的にはどうですか?

RIKIJI

RIKIJI 「どうですか?」って、ダメだよそんなの(笑)。

一同 (笑)。

RIKIJI 何回も言ったけど俺は認めないよ、5弦ベースは。

越本 Shibuya O-EASTで初めて挨拶したとき、最初に「俺、5弦ベース嫌いだからね」って言われて。でも自分は5弦ベースを弾いてたので、その先制パンチでさらに萎縮してしまって、「これはまずいな」と(笑)。

RIKIJI 風貌が「絶対5弦使ってんだろうな」って感じだったしね。

松浦 見抜かれてたんだ(笑)。

越本 それでもう……一緒にスタジオ入りするまでに、俺は4弦ベースに持ち替えたほうがいいんじゃないかって。本気で考えて。でも、RIKIJIさんがレコーディングの前に僕らのライブを観に来てくれて、そこで「5弦にしてはいい音してたよ」って言ってくれたんで、救われた感がありました(笑)。

RIKIJI 5弦ベースでいい音を鳴らす人、今まであんまり聴いたことがなかったから。そもそも5弦ベースって音作りが難しいんだよ。ゲインの調整とか弦の正しいチョイスとか。4弦から出発して音作りの基礎がわかってから5弦を弾くほうがいいと思うんだよね。それに、個人的には5弦ベースってルックスがダサく感じるんです。なんかボテッとしていて。それが嫌なんですよ。なんか、ロックバンドのくせにこんなダサいルックスはないだろ、みたいな。例えば、ロックスターだったら外国人モデルとかストリッパーとかと付き合ってほしいのに……って、言ってること、わかります?

──ああ、その感覚はわかります。

RIKIJI 俺もOBLIVION DUSTで5弦を一時期使ってたんですけど、自分に向いてないからすぐ止めちゃったんですよ。どうしてもK.A.Zさん(OBLIVION DUSTのギタリスト)が5弦を使ってくれとか、そういう状況になれば使うと思うけど、今はいらないっていう感じかな。

RIKIJIさんはマジでロックスター

──越本さん、大丈夫ですか?(笑)

越本 あ、はい。大丈夫です(笑)。

RIKIJI ごめんね。あんまりこういうこと言っちゃダメだね(笑)。

越本兼瑛(B)

松浦 僕らの世代でここまで大胆にものを言える人って、いないですからね。

越本 みんな保守的だし。攻めなきゃダメだよな、うん。

松浦 RIKIJIさんはもうなんて言うか、マジでロックスターなんですよ。全てにおいて。そこにものすごく憧れます。

──昔からファンだったわけですもんね。

松浦 だから会う前はすげえ怖い人だったらどうしようって……まあほかのメンバーもちょっと心配っていうか怯えてたんですが(笑)、会ってみたらロックスターそのものっていうことプラス、僕の中ではすげえ面白い人だなって。レコーディングの合間にみんなでワイワイ話してた思い出があって、とにかく話が面白い人でした。

──なるほど。では大ファンの越本さんはどうでしたか?

越本 やっぱり俺の中でも怖い存在でしたね。それは尊敬とか畏敬とか、そういう感じでの怖い存在なんですけど。同じベーシストなので、まさに今話してもらった5弦ベースの件とか、本当にそうだなと思います。だから本当に早いうち4弦に持ち替えたいなと。

一同 (笑)。

越本 このアルバムでも何曲かは4弦ベースで弾いてるんですけど、今はA#とか使ってる楽曲の関係で5弦も持たざるを得ないので、ゆくゆくは4弦ベースだけでRIKIJIさんみたいに弾いてみたいです。

RIKIJI ふふ(笑)。

松浦 でもそうですね。バンドを始めた頃はもっと低音が欲しいっていうだけで5弦ベースをチョイスしてた気がするんですけど、今はもうそういうところから卒業したいという気持ちも僕たちの中にあって。もっと違う次元で勝負できるところを目指したいなって思います。

もっとヒヤヒヤした音楽が欲しい

──では、ALL OFFの皆さんにもぜひRIKIJIさんみたいなロックスターを目指していただきたいなと。

松浦 そうですよね。自分たちの世代でそういった人たちがいないからこそ、ちょっと目指したい気持ちはあります。

RIKIJI ちなみに俺、解散する前のオブリのときは、毎日六本木を飲み歩いて、翌日にそのまま取材を受けてたことも結構あったな。

松浦 ハンパないですね(笑)。

──確かに最近のアーティストってみんな真面目な印象が強いですね。

RIKIJI 俺は不良の音楽に憧れて音楽の世界に入って。先輩もみんな不良ばかりだったけど、だんだんと不良が育たなくなってきちゃったんですよね。不良だともうこの業界ではやっていけなくなってきて、真面目な子たちばかりがバンドを始める。それは決して悪いことじゃないんですけどね。で、不良がレゲエやヒップホップに全部持ってかれちゃったんです。本当だったら俺らがもっと頑張って、不良を引き上げていって不良の音楽を確立すればよかったんですけど。そこが自分の中では残念だなと思ってるところで。

──なるほど。

RIKIJI 真面目な子たちはみんなしっかりした音楽を作るんですけど、昔みたいにドキドキ、ヒヤヒヤする音楽がなかなか出てこなくなった。ライブハウスに行けば、客とケンカするようなバンドがゴロゴロいたのに、今は一緒になって盛り上がろうぜみたいな感じで。今じゃハードコアと呼ばれるジャンルが昔の不良の音楽に近いんでしょうけどね。別にどれが正しいという話じゃないんですけど、俺個人としてはもっとヒヤヒヤした音楽が欲しいなと思っていて。だから、ALL OFFには頑張ってほしいなと。

松浦 僕らの世代って、ロックと不良が結びつかないんですよね。ロックがすごく身近にあって、単純にカッコいいから自分もそこに飛び込んで、自分の存在意義を示したいみたいな、そういう理由で始めてる奴が多いんで。RIKIJIさんたちの世代みたいな生き方を僕らはしてきてないから、そういう意味では全然ロックじゃないのかもしれない。サウンドのスタイル的にはロックと言われているジャンルに入るんでしょうけど。

RIKIJI 真面目な子が音楽をやるのは、全く悪くないですよ。ただ、一番必要なのって存在感だと思うんです。その人が持っているアーティストオーラが評価されるっていうか、普通の人がステージに立ってただ発表会をするのとは違うんですよ。だから、そういうところをどんどん磨いてほしいな。

松浦 今日RIKIJIさんがおっしゃってくれたことは、肝に銘じたいと思います。

写真左から、RIKIJI、松浦奏平、越本兼瑛
ALL OFF(おーるおふ)

松浦奏平(Vo)、内藤祐貴夫(G)、越本兼瑛(B)、大槻真一(Dr)、畑島岳(G)からなるラウドロックバンド。結成直後からMTVでレギュラー出演を果たしたほか、音源がない状態で新木場STUDIO COASTの舞台に立ち注目を集める。2008年に行われたRO69主催「COUNTDOWN JACK」でユーザー投票2位を獲得し、同年末に「COUNTDOWN JAPAN 08/09」に初出演。これを機にパンク / ラウドロックシーンで一気に知名度を高める。2010年6月に初のミニアルバム「From Midnight To Sunshine」をリリース。翌2011年10月にindiesmusic.comとライブ会場限定でシングル「Giving You Up」を発表した。パンクやエモ、ポップス、ラウドロックなどのジャンルを融合させた、疾走感あふれるサウンドが特徴。2012年3月に発売されたドラマ「QP」のトリビュートアルバムには、新曲「Nothing」を提供した。同年8月、2ndミニアルバム「Start Breathing」をリリース。

OBLIVION DUST(おぶりゔぃおんだすと)

1997年にシングル「SUCKER」でデビューした、オルタナティブロックバンド。曲によって日本語詞と英詞を巧みに使い分け、生音と打ち込みを活かした独特なサウンドで人気を博す。2001年に一度解散するが、2007年にKEN LLOYD(Vo)、K.A.Z(G)、RIKIJI(B)により突然の活動再開。2008年には約7年ぶりのアルバム「OBLIVION DUST」をリリースし、ファンを喜ばせた。2009年に活動が再び停滞するが、2011年2月からライブ活動が活発化。2012年4月に通算6枚目のオリジナルアルバム「9 Gates For Bipolar」をリリースした。