お盆進行でタイトル先行
──「YAMATO」には新曲「花と龍」も収録されています。まず作曲についてお聞きしてよいですか?
片倉 作曲は、ノーアイデアでした(笑)。まず、これもプロデューサーから「『愛と誠』と対になるような曲を」って案をいただいたんですよ。でも「『愛と誠』と同じような曲は作れないしなあ」と思って。最初はそんな感じだったんだけど、タイトルを早く決めなきゃいけなかったんだよね。
宝野 初回限定盤は箱入りなんですけど、ちょっと特殊な仕様なので、ブックレットより先に箱のデザインを入稿しなきゃいけないんですよ。その箱の裏にも曲順が載るので、早く決めないと。
──また身も蓋もない話が(笑)。
片倉 お盆進行だったし(笑)。曲も何もない状態なんだけど「とにかくタイトルだけ先にください」と。
宝野 普通は曲を聴いて、歌詞を書いてるうちにタイトルが浮かんでくるものなんだけど、タイトルを決めてから書くときもあるから。じゃあ「愛と誠」に引っかけて、「○○と××」にしようって。
片倉 宝野さんが「任侠ものをやりたい」って言ってたから、その線でタイトルを考えて「花と龍」になったんです。やっぱりどっかにありそうなのがいいじゃない。
宝野 同じタイトルの任侠映画もあるしね。あと「緋牡丹博徒」シリーズの“緋牡丹のお竜”みたいなイメージもあって。
片倉 で、タイトルが決まったあとから作曲して、こんな感じに。ちょっとタンゴっぽいでしょ。昭和のキャバレーでかかってそうな。
宝野 デモを聴いたとき素直にいいなと思いました。なんか、“テクノ大和”って感じ?
片倉 1980年代から90年代前半ぐらいのテイストだよね。シンセの使い方とかも。
──例によって音の情報量はすごく多いのですが、それでいてゴテゴテしすぎない、隙間を生かしたアレンジになっていますね。
片倉 たまにはいいでしょ、こういうのも(笑)。
“大和”な歌詞のイメージは「子連れ狼」から
──作詞に関しては、先ほどおっしゃったようにまさに任侠の世界を描いてらっしゃいます。
宝野 うん。“龍”ってだけでなんか任侠っぽいじゃん。任侠編はもっといろいろ書けるなと思いましたね。大和ソングの歌詞を書く場合、先にテーマを決めて「書いてやるぞ!」っていう気持ちで書くんですよ。例えば「隼の白バラ」(2013年発売の12thアルバム「令嬢薔薇図鑑」に収録)は零戦の曲にしようと思ったから事前にいろいろ調べたうえで臨んだし、「陸と海と空と」(2015年発売の14thアルバム「快楽のススメ」に収録)も私なりの愛国心を歌にしたものだし。
──宝野さんの“大和”っぽいボキャブラリーって、どこで培われたんですか?
宝野 そう思いますよね(笑)。
──以前のインタビューでは寺山修司がお好きというお話をされていましたけど、文学からなのか……。
宝野 なんだろう……あ、ボキャブラリーじゃないけど、イメージ的なものは「子連れ狼」じゃないかしら。子供の頃から好きだったんですよ。あと「サスケ」ね。その世界がいまだに私の中にあるんで、そこから出てくるんじゃないかな(笑)。たぶん私、仇討ちが好きなんですよね。「少女殉血」は仇討ちの歌だし。
2003年の宝野アリカは血気盛んだった
──その「少女殉血」と「戦争と平和」(2002年発売の5thアルバム「EROTIC&HERETIC」に収録)って、実は大和ソングというカテゴリが生まれた2006年よりもだいぶ前の曲ですよね。
宝野 うん、だいぶ前ですね。「少女殉血」はアニメ「AVENGER」の挿入歌だから、2003年か。大和ソングじゃないけど「月蝕グランギニョル」も「AVENGER」のオープニングテーマだったし、この頃、血気盛んですね(笑)。
──実際、2003年頃を境に音楽性の幅もさらに広がった感はあります。
宝野 たぶん、真下(耕一)監督の影響もあったかもしれない。「すごくいいね」みたいなことを言われたんで、調子に乗ったんだと思いますよ。
片倉 このとき宝野さん、初めてなんか……。
宝野 何? 水を得た魚みたいになった?
片倉 うん。
──ははは(笑)。
片倉 自分のアイデンティティみたいなものを、いきなりいくつもつかみ取ったんじゃないかな。その内の、骨太な1つだと思うんですよ、大和ソングは。
宝野 そうかもしれない。そのあとにローゼン(2004年放送のテレビアニメ「ローゼンメイデン」のオープニングテーマ「禁じられた遊び」および2005年放送「ローゼンメイデントロイメント」のオープニングテーマ「聖少女領域」)だもんね。こちらは「子連れ狼」や「サスケ」ではなく「リボンの騎士」で培われた私の少女魂の集結よね。古くてすみませんけど(笑)。
──大和ソングでミュージシャンとしてのアイデンティティを獲得し、ローゼン系の楽曲でポピュラリティを獲得した。
片倉 そう言えるんじゃないかしら。特に音楽的にブレてる気持ちはないんだけど、そのあたりで彼女の歌や内面性みたいなものが一気に開花した感じなんじゃないですかね。ってことはさ、僕らまだユニットとして若いじゃん。
宝野 そうだよ。ローゼンから数えたら10年ちょっとだもん。
片倉 それまで何やってたんだろうね(笑)。
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「LOVE×××」がなければ「YAMATO」はなかった
- ALI PROJECT
「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」 - 2017年9月27日発売 / FlyingDog
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初回限定盤
[CD2枚組+Blu-ray]
4860円 / VTZL-133 -
通常盤 [CD2枚組]
4104円 / VTCL-60455~6
- DISC 1「YAMATO」
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- 愛と誠
- 勇侠青春謳
- 神風
- 陸と海と空と
- 戦争と平和
- Valkyrja~騎士乙女
- 絶國TEMPEST
- 少女殉血
- 青嵐血風録
- 隼の白バラ
- 花と龍
- KING KNIGHT
- 永久戒厳令
- 見ぬ友へ
- この國の向こうに
- 鎮魂頌
- DISC 2「LOVE×××」
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- 胡蝶夢心中
- 遊月恋歌
- BAR酔芙蓉へどうぞ
- 真夏の憂愁夫人
- 蜜薔薇庭園
- Rose Moon
- 月光夜
- 緋紅的牡丹
- RED WALTZ
- 薔薇娼館
- 修道院の廃庭にて
- 春葬
- 闇の翼ですべてをつつむ夜のためのアリア
- 星月夜
- 共月亭で逢いましょう
- Adieu
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- 愛と誠(Music Clip)
- ALI PROJECT ワンマンライブ
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- 2017年11月2日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 18:15 / START 19:00
料金:全席指定 6000円(ドリンク代別)
一般発売:2017年10月7日(土)
- 2017年11月2日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- ALI PROJECT(アリプロジェクト)
- ボーカルと作詞を務める宝野アリカと、作・編曲を担当する片倉三起也からなるユニット。1992年7月にALI PROJECTに改名しシングル「恋せよ乙女 -Love story of ZIPANG-」でメジャーデビューを果たす。官能的で妖艶なゴシック&ロリータの世界観と文学的な歌詞、現代音楽の影響も見られるサウンドで独自の音楽を追求し、コンスタントに作品を発表し続けている。ライブも精力的に行っており、「月光ソワレ」シリーズではオーケストラをバックに従えた幻想的なステージパフォーマンスが好評を博している。2017年3月には、独自のコンセプト“大和ロック”を追求したデビュー25周年記念シングル「卑弥呼外伝」、6月にはベストアルバム「血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror」を発表。さらに9月には“大和ソング”と呼ばれる独自の世界観を持った楽曲とバラードの2軸でまとめたベストアルバム「愛と誠~YAMATO & LOVE×××」をリリースした。11月には東京・Zepp DiverCity TOKYOにて単独公演を行う。