JAM Projectのコーラスに、宝野アリカの歌が負けちゃう?
──作曲に関しては、コメント(参照:ALI PROJECTデビュー25周年シングル「卑弥呼外伝」JAMも参加の壮大オペラ)によると、「大変苦慮」されたとのことですが……。
片倉 あの通りなんですけどね(笑)。25周年記念のシングルを出させていただくということで、ランティスの井上(俊次)社長とお話したときに「10分でも20分でもいいから、オペラでも組曲でもなんでもいいからシングルでやってみましょう」って言われたんですよ。すると当然、枕詞で「悔いのない25周年記念」みたいな空気になるでしょ? だからどうしようかなと思って。しかも、さっき宝野が言ったように、コーラスでJAM Projectさんに参加していただけることになったから、宝野の歌が負けちゃうかもしれないって。
──いやいや、そんなことないでしょう?
片倉 いや、前々から「JAM Projectさんのコーラスが入ったらいいよね」っていう話はしていて。
宝野 例えば「陸と海と空と」(2015年9月発売のアルバム「快楽のススメ」に収録)とか、JAM Projectさんにコーラスをお願いしようと思ったことが何度かあったんですけど「でも、負けるよなあ」ってなって。
片倉 スタジオで歌を録ってるときには2人共乗り気なんだけど、冷静に考えて「やめよう」って(笑)。で、今回ついにJAM Projectさんと共演できることになって、うれしい反面、もう、それからが大変で。11月の上旬から曲を書き始めて、長い曲だからちょっとオペラ風に、例えばQueenの「Bohemian Rhapsody」みたいな感じでJAM Projectさんが登場したらカッコいいかなと思ってたの。ところが、書けないんだよね。それからずっと悩んで、書いては捨て、捨てては書いての繰り返し。12月の中旬になってもまだできてないんです。僕は曲書くのけっこう早いんですけどね。
──速くないと、毎年アルバム出せませんからね。
宝野 あはははは(笑)。そうですよね。
片倉 だから「俺って才能ないんじゃないか?」とかね、忸怩たる思いに駆られる毎日で、すごくイヤな感じなんだけど、だんだんそれが気持ちよくなってきちゃって(笑)。
──ははは(笑)。
片倉 自虐的っちゃ自虐的なんですけど、まだ音楽を作る知識も何もない状態で曲を書いてるような感じ。それがある種反転して、デビューする前にガツガツとやりたいようにやっていたことを思い出したら、書けるようになってきたんですね。だから25周年なのに、25年前まで戻った気分。
──振り出しに戻った。
片倉 そういう気分になれたから、この先もまだ書けるかなって、ちょっと思いましたけどね。
「JAM Projectさんだったらこう歌うよね」で乗り切った
──「卑弥呼外伝」は7分もある曲なのに、長さを感じないですよね。芯になるメロディはシンプルですが、イントロや間奏でアラビックなフレーズも入ってきます。
片倉 「卑弥呼」だから和風にするべきだったかもしれないんだけど、あんまり和に寄せるのもどうかなって。でもエスニックな色は出したくて。AメロBメロCメロはオーケストレーションで重々しく、それでアカペラパートではJAM Projectさんを大きくフィーチャーして。
──そのアカペラパートの前にはダブステップになったり。
片倉 そうね、ぜんぜん違うとこ行っちゃう(笑)。
宝野 やっぱり7分くらいあるとそういうことができるんだなあって思いますよね。
──歌う側としてはいかがでした?
宝野 うーん、今までにあったようでないメロディやリズムだったような気がします。なので、ちょっと歌いにくかったかもしれない。
片倉 今回はけっこうシンコペーションとか付点四分音符が入ったりね。アリプロでははあんまりそういうのはやらないんで、慣れてなかったかもね。
宝野 でも、「JAM Projectさんだったらこう歌うよね」って。
片倉 (拳を突き上げて)「こうだよね」って(笑)。
いくらフェーダーを下げても聞こえる影山ヒロノブの声
──JAM Projectの皆さんもブレないですもんね。
宝野 ねえ、カッコいいし。昔からファンです。
片倉 だからレコーディングのとき、けっこう緊張しちゃってね。スタジオに入ったら、影山(ヒロノブ)さんも遠藤(正明)さんも皆さん練習してらして。先に譜面も音源もお渡ししてるから、当然予習もしてきてらっしゃるはずなのに、現場でもみっちり。しかも、かなりめんどくさい、変なメロディのコーラスをお願いしちゃってるんですよ。だから、実際にディレクションが始まったらヤバイなと思って(笑)。
宝野 合わせて聴くとそうでもないけど、個々のパートは「こんなメロディありえなくない?」っていうメロディなので、JAM Projectの皆さんも笑いながらレコーディングしてたよね。
片倉 面白がってくれたからよかったけど、かなり大変だったと思います。
──あのコーラスは、言われなくてもJAM Projectだってわかりますよね。やはりあの方たちもアクがお強い。
宝野 そう。
片倉 サビのコーラスは4声なんですけど、レコーディングしたのを聴くと、なんかね、一番下の影山さんのあたりが、やたらデカいの。
──ははは!(笑)
片倉 この4声と合わせて宝野のボーカルも聞こえなきゃいけないから、バランスを取って低音を絞るんだけど、まだうるさいわけです。「うるさい」なんて言ったら怒られちゃうけど(笑)。それで、おかしいなと思って、1回全体の音量を下げてみたら、影山さんだけ聞こえてるの。やっぱり、それがJAM Projectなんだなって。この歌の“圧”があるから彼らだってわかる。
──フェーダーをいじって初めてわかる、JAM Projectのすごさ。
片倉 ホント、不思議だったなあれは(笑)。
次のページ »
宝野アリカの“使い減りしない声”
- ALI PROJECT「卑弥呼外伝」
- 2017年3月29日発売 / Lantis
-
[CD+Blu-ray]
2376円 / LACM-14581 -
[CD+DVD]
1944円 / LACM-14582
- CD収録曲
-
- 卑弥呼外伝
[作詞:宝野アリカ / 作・編曲:片倉三起也 / コーラス:JAM Project] - 卑弥呼外伝(off vocal)
- 卑弥呼外伝
- Blu-ray / DVD収録内容
-
- 卑弥呼外伝 Music Clip
- 卑弥呼外伝 -Shooting in Hawaii-
- ALI PROJECT「25周年記念ベストアルバム(タイトル未定)」
- 2017年6月21日発売 / Lantis
-
[2CD+Blu-ray]
4860円 / LACA-9514~5
- ALI PROJECT TOUR 2017 "GOTHIC Lolita & Horror" ver.(仮)
-
- 2017年6月25日(日)千葉県 舞浜アンフィシアター
- 2017年7月13日(木)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年7月14日(金)大阪府 なんばHatch
- ALI PROJECT(アリプロジェクト)
- ボーカルと作詞を務める宝野アリカと、作・編曲を担当する片倉三起也からなるユニット。1985年より蟻プロジェクトとして活動を始め、1992年7月にALI PROJECTに改名しシングル「恋せよ乙女 -Love story of ZIPANG-」でメジャーデビューを果たす。官能的で妖艶なゴシック&ロリータの世界観と文学的な歌詞、現代音楽の影響も見られるサウンドで独自の音楽を追求し、コンスタントに作品を発表し続けている。ライブも精力的に行っており、「月光ソワレ」シリーズではオーケストラをバックに従えた幻想的なステージパフォーマンスが好評を博している。2017年3月には、独自のコンセプト“大和ロック”を追求したデビュー25周年記念シングル「卑弥呼外伝」を発表。6月にはベストアルバム(タイトル未定)をリリースし、その後は千葉、名古屋、大阪の3都市を回るライブツアー「ALI PROJECT TOUR 2017 “GOTHIC Lolita & Horror” ver.(仮)」を行う。