[Alexandros]|同じ星の下の4人で残したもの

全部かっさらってやる!殺気立っていた尖り時代

──白井さんはこの頃の活動を振り返ってみていかがですか?

白井眞輝(G)

白井 今、参考資料のナタリーの過去記事を見ていたんですけど、自分の中の時系列がズレていたことにびっくりしました。「I Wanna Go To Hawaii.」を出したのって10年も前なんだ。

──体感としてはもっと最近ですか?

白井 そうですね。特にこの記事(参照:KASABIAN来日公演、オープニングアクトは[Champagne])の写真は3、4年前に撮ったイメージだったんですけど、2011年なんですね。この頃は短期間にいろんなことがたくさんあって、すごく集中していたのかもしれない。ピリピリしていたのとはまた違うんですけど、研ぎ澄まされていたっていうのかな……?

川上 いや、ピリピリしていたかもしれないね。いい意味で。

磯部 当時、俺たちは対バンライブが多かったんです。「最後まで楽しんでいってください」って和やかに次のバンドに引き継ぐんじゃなくて、マジでうちらが全部かっさらってやる!って殺気立ってましたね。

川上 本当に尖っていたと思います(笑)。

──私の中で庄村さんは穏やかなイメージがあるんですが、ほかのメンバーと同じように尖っていたんですか?

川上 聡泰も尖ってたよ!

庄村聡泰(Dr)

庄村 俺もそうですね。周囲にも尖っていましたし、そのときはメンバーに対しても尖ってたと思う。

川上 あの頃はまだ自分たち自身も固まっていなかったときだから、固めようとしてケンカも摩擦もいっぱい起こってたな。外側では横のつながりでライブハウスシーン、フェスシーンを盛り上げようみたいなムードで塗り固められていて、それが大嫌いだった。そんなのイチ抜けしてやるって思いながら打ち上げに出ていました。

──打ち上げには出るんですね(笑)。

磯部 勘違いしてほしくないんですけど、対バン相手を人として嫌いなわけじゃなくて。打ち上げでいろんなミュージシャンと話して刺激を受けるのも好きなんです。でも現場にいるとほかのバンドの演奏を観るよりも自分が演奏したくてイライラしちゃうんですよね。

──そんなことを言いつつも、ゲストアーティストを迎えてトークやスタジオセッションを繰り広げるレギュラー番組「Welcome! [Champagne]」「Welcome![Alexandros]」もやっていましたよね(参照:川上洋平感激![Champagne]番組がスペシャでスタート)。

川上 うちらはそこがうまいですよね(笑)。ヒロ(磯部)も言っていましたけど、僕らは別にほかのバンドが嫌いではないんですよ。ただ変な仲間意識で群れたくないと思っているだけで。対バンのときは殺し合おうって思ってるんですけど、セッションのときはちゃんと仲間としてやる。そこで仲よくなるんです。そしてまた対バンで会ったときにはちゃんとケンカもできる。仲間でもあるけど、基本はライバルなんです。

路上ライブの感謝を込めて

──未発表曲の「温度差」はなぜ今作で復活させようと思ったのですか?

川上洋平(Vo, G)

川上 この曲はデビュー前に路上ライブとかで無料で配っていたデモ音源のうちの1つなんです。当時お客さんに取っていたアンケートでも「温度差」が一番人気で。いつか何かの作品に入れるんだろうなと思いつつ、なかなかそういう気分になれなくて。ちょっと気恥ずかしさもあったんでしょうね、デビュー前の曲だから。10年経ってようやく入れるかっていう気持ちになったのは、今のお客さんからの人気を感じたからです。なんで知ったんだよって思うんですけど(笑)。それだったらベストアルバムのために改めて録り直したものを出すのも面白いんじゃないかって。さすがに当時の音源はキツいんで(笑)。

──録り直さないとほかの収録曲と全然違う雰囲気になってしまいますからね。

川上 全然違うというか、もう商品にならないですね(笑)。でも元の音源を聴いたときに、うちらの基礎になってるなと思いました。オリジナル音源にまーくん(白井)は参加していなかったよね?

白井 旧デモ音源を作ったとき俺はいなかったし、弾いてない。

──じゃあ今回一緒にレコーディングできたのはうれしいですね。

川上 そうですね。あと今回この曲を入れたのは、路上ライブをやっていたときに寒い日も暑い日も雨の日も毎週来てくれていたお客さんへの感謝の気持ちでもあります。

こういう星の下に生まれた4人

──2014年は改名したり(参照:[Champagne]改名、新バンド名は[Alexandros])、ユニバーサルミュージックからメジャーデビューしたり(参照:[Alexandros]、両A面シングルに初のドラマタイアップ曲も)と、大きな転機になった年かと思います。当時を振り返ってみていかがですか?

川上 まあ僕らとしては1つひとつ積み上げてきた感じなので、いきなりドーンと変わったという印象はないですね。今思い返せば事務所の方針だったのかもしれないですけど、ライブ会場の規模も最初は下北沢SHELTERで次がLIQUIDROOM、その次がZepp Tokyo、そして日本武道館と順当に動員を増やしていったんです。途中、「もうちょっといけるんじゃない?」と思う場面があったとしても、飛び級はしてこなかった気がするな。

──確かに、もっと早く武道館公演をしていても不思議ではなかったです。

川上 もっと早くできたのかもしれないですけど、見切り発車で武道館には立ちたくなかったから。

──その結果、改名発表を初武道館のステージで行うという予想もしていなかったドラマチックな展開になってしまったと(参照:[Champagne]改め[Alexandros]武道館で“変わらない”宣言)。

川上 そうですね。改名を迫られる前に武道館公演は決まっていたんだけれど、意図せず[Champagne]最後であり[Alexandros]最初のライブになりました。もう笑うしかなかったですね。「こういう星の下に生まれた4人なんだな、うちらは」って。

磯部寛之(B, Cho)

──[Champagne]名義の楽曲は[C]盤、[Alexandros]名義の楽曲は[A]盤に振り分けられている中で、なぜ[Alexandros]名義の「Thunder」だけ[C]盤に収録されたのか気になります。

川上 その理由はね、誰にもわからないです。

──え?

川上 なんでだろう……まあ、[Champagne]のときに作った曲だからかな。

磯部 2枚の曲数をそろえるため、ぐらいの感じ?

川上 若干こじつけだよな(笑)。


2021年3月16日更新