[Alexandros]が3月17日に初のベストアルバム「Where's My History?」をリリースする。
このアルバムは改名前の[Champagne]名義の楽曲を収めた[C]盤と、[Alexandros]の楽曲を収めた[A]盤の2枚組。数々のヒット曲に加え、昨年12月に先行配信された新曲「風になって」など全33曲が収録されている。
音楽ナタリーでは2度にわたり延期となったベスト盤のリリース、そしてワンマンライブ「Where's My Yoyogi?」をもってバンドを勇退する庄村聡泰(Dr)を含むメンバー4人にインタビュー。収録曲を軸に11年分の思いを語り合ってもらった。
さらにバンドとゆかりのあるスガシカオ、粗品(霜降り明星)、TAKURO(GLAY)、千葉雄大、ホリエアツシ(ストレイテナー)、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)の6名が選んだ最も好きな収録曲とメンバーへのメッセージも掲載している。
取材 / 清本千尋 文 / 鈴木身和 撮影 / 上山陽介
とっ散らかり続けたバンドの、とっ散らかった歴史
──初のベストアルバムをリリースされるということで、まずは収録曲についてお話をお聞きしたいと思います。デビューアルバム「Where's My Potato?」(2010年1月発売)から多く選曲されていますよね。
川上洋平(Vo, G) そうですね。やっぱり1stは大事な一歩の部分ではあるので、思い入れも強いのかな。でも選曲はなんとなくですよ。まずはアルバムを2枚組にしようというところから始まって。俺らは[Champagne]時代と[Alexandros]時代でちょうど半々ぐらいなので2枚に分けやすかったんです。メンバー全員そろって選曲を話し合ったんですけど、言い争いもなく、すんなり決まりました。
磯部寛之(B, Cho) いい選曲だと思いましたね。それにメンバーだけじゃなく、10年間歩みを共にしてくれたスタッフさんにも「何を入れたいですか?」と聞いたりして。お祭り騒ぎとまではいかないけど、楽しみながら曲を選んでいきました。
庄村聡泰(Dr) とっ散らかり続けたバンドの、とっ散らかった歴史をお届けできた感じですね。個人的には今作の収録に漏れてしまった楽曲でもう1枚ベスト作れますけど?と思うので、皆さんそれぞれで[A]盤、[C]盤の先にある“俺盤”“私盤”みたいなものをプレイリストにして聴いてくれたらうれしいなあ、と。先が楽しくなるようなアルバムです。
白井眞輝(G) 我々の代表曲がきれいにそろったなと思います。今までのリクエストライブとか、そういうのも加味されて自然とこうなった感じがするんですよね。
──確かに、人気の高い曲がしっかり入っています。
白井 初めて僕らのライブに来る人でも、事前にこれを聴いたらけっこう楽しめるんじゃないかなと思うぐらいそろっているので、新しいファンにも届いてほしいアルバムになっています。
もうちょっとはみ出してもいいんじゃない?
──代表曲のほかに新曲の「風になって」も収録されています。この曲はどういうふうに作られたんですか?
川上 この曲は初めて同世代の人たちのことを思い浮かべて歌詞を書きました。30代って安定感だったり満足感だったりを得て、だんだん落ち着いてくる頃だと思うんです。でもそこでもうちょっとはみ出してもいいんじゃない? やんちゃしてもいいんじゃない?って思う。僕は結婚してないし子供もいないから特にそう思うのかもしれないけど、例えば欲しいものがあるけど家族のために我慢しようとか、派手な服は買えないなとか、それも大事な感覚ではあるけれど、生活の中である種アウトローな行動に移ることも大事だよねって言いたかったんです。別にメッセージを込めてるわけではなくて、そこを描いたっていう話。僕にとって歌詞はSNSの1つですから。メッセージというよりも風景画やエッセイ、ブログを書くことに近いです。
──「僕にとって歌詞はSNSの1つ」、名言ですね。
川上 いやいや(笑)。SNSって自分の吐き出し口じゃないですか。つぶやきとか言われてるだけあってそういうのに近いから。
──だからこそ今の[Alexandros]に対して歌っている曲という印象を受けました。「現在(いま)会ったら何を思うかな」という歌詞は、昔の自分に向けて問いかけているようにも思えますし。
川上 僕は歌詞を説明するのがあまり好きじゃないので、そう思ってもらえたならそれが正解でいいと思う。僕の中にはまだほかの答えがあるかもしれないし、何年かしたら違う解釈になっているかもしれない。歌詞とか曲の解釈って流動的だと思うんですよね。生きているところが面白い。
──この「風になって」も含め、収録曲は単にリリース順に並べたわけではなく、ライブのセットリストのような印象があります。メジャーな楽曲が多い中で「Don't Fuck With Yoohei Kawakami」や「かえりみち」が入っていたのが少し意外だったのですが。
川上 その2曲は、今作の中でちょっとマニアックな曲ではありますね。でもこういった曲を入れることでバンドの本質というか、いろんな冒険をしたけれど結局俺らの精神はいつもこういうところにあるということをお見せできるかなと思ったんです。
俺らよりカッコいいバンドは1つもない
──ちなみに2010年のデビュー当時はどのような思いで活動されていたか覚えていますか?
川上 覚えていますよ。1stアルバムの頃はとにかく早くバイトを辞めたかった(笑)。俺らよりカッコいいバンドは1つもないってマジで今でも思っているんですけど、でも当時はバイトをやっている時点でまずカッコ悪いじゃないですか(笑)。プロになったんだから早くバイトを辞めて音楽一本になりたいと思っていました。
──皆さんも同じ意識ですか?
磯部 同じですね。世の中に対して「これから見てろよお前ら」という気持ちが強かったです。デビューがゴールだったわけではなくて、ここからやっと自分たちの音楽を全国に響き渡らせることができるんだとめちゃめちゃ気合いが入ってました。
──そうだったんですね。そして2ndアルバム「I Wanna Go To Hawaii.」からは「city」「Cat 2」「You're So Sweet & I Love You」といった、現在のライブでも人気の楽曲がセレクトされています。
川上 ぶっちゃけ自分たちではみんなが喜ぶ曲っていうのをそこまでわかっていなくて、リクエストを募ったときに意外な結果が出て驚いたりするんです。「city」も初めは俺の中でそこまで好きな曲ではなかったんですけど、喜んで聴いてくれるお客さんを見たおかげで好きになれたところがあって。
──2ndアルバムのリリースは、バンドの人気を確立した1つのタイミングだったように思います。
川上 この頃はお客さんに対してどう向き合うべきなのか学び始めていたときですね。ここまでつかんできたお客さんを離さないようにいるべきなのか、裏切っていくべきなのか。俺は裏切っていく方向に進んだと思っていて。1stアルバムで付いたお客さんに対して同じ路線で安定したものを提供するのも1つの答えかもしれないけど、それは誠意がないんじゃないかと。俺はやっぱりどんどん新しいことやっていきたいし、その気持ちが自分たちの芯の部分だと思うので、嘘は付けない。1stと違うことをやりますけど、それをお客さんが気に入らなかったらそれは仕方ないという感じでした。
──そういうふうに思えてよかったですね。
川上 そうですね。かき鳴らしたいという思いが本物であれば、歌詞が英語でも日本語でも、ドラムが変わってもそこに嘘はないんで。細かい戦略とか考えるのも好きじゃないし、とにかく上り詰めて成り上がってやろうぜっていう気持ちで、失敗しても自分でやりたいことをやればいいだけだと前に進んできた10年でした。
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全部かっさらってやる!殺気立っていた尖り時代
2021年3月16日更新