Aldious|変化して成長し続けるメタルバンド、その柔軟かつ剛健な考え方

R!N作詞作曲のバラードがいきなり採用に

──再録ベスト盤「Evoke 2010-2020」の話に移ります。まずどうして再録ベストを作ろうと思ったのか聞かせてください。

Yoshi ボーカルが3代目になりましたし、新しいファンの方からすると「Aldiousのライブに行きたいから予習しよう」と思ったときにどれから聴いたらいいのかわからないでしょうから、ライブでメインでやってる曲を集めました。それをR!Nのボーカルで歌い直したほうがリスナーはライブに参加しやすいのかなと思って。

──選曲のポイントは?

Yoshi メタルバンドだからといって激しい曲ばかりになるのは嫌だったので、曲順も激しい、明るい、妖艶、切ない、ハイトーンみたいに頭から並べて、聴きごたえ応えやメリハリがある感じにしました。今回マストの曲として選んだのが「Ground Angel」と「Deep」です。この2曲は初代ボーカルのRamiと、2代目のRe:NOの2バージョンがあるので、R!Nバージョンも絶対にやりたいなと。

──今作には再録に加えて新曲「I Wish for You」が収録されています。作詞作曲を手がけたのがR!Nさんということで、ソングライターとしていきなりの登板です。これは「作りたい」という思いが先にあったんですか? それとも「作ってみれば?」という勧めがあったんでしょうか。

R!N どっちもです!

Yoshi 最初から「曲は作っていきましょう」という感じだったし、バラードを書いてるという話は知ってたので任せられるかなと。

──でも、あまりないですよね。加入したばかりのメンバーに、「じゃあ、曲書いてね」って(笑)。

Yoshi しかもその曲のミュージックビデオも作ったので珍しいかもしれません(笑)。

──なかなかない話ですね。これはどのように生まれた曲ですか?

R!N シンガーソングライターの活動を去年の6月に休止してから、自分で曲を作ったり歌ったりする機会がほとんどなくなっちゃったぶん、Aldiousの曲を作る時間がたくさんできたんです。それで「もしこの曲が自分が加入して初めて世に出る曲だとしたら」という気持ちでいろんな曲を書いてました。でも自分が音楽活動を始めたときから書き続けていた曲はバラードだったし、Aldiousに加入したことで自分の色をより知ってもらうにはバラードがいいかなと思ってたら、「バラードを書いてほしい」というお話があって。

──なるほど。

R!N(Vo)

R!N 私はシンガーソングライターとしてのキャリアが7年くらいあるんですけど、その頃からのファンの方々がAldiousのライブをまだ怖がってたり、来るとしても座って観たいという気持ちがあったりで、いまだにたくさんの人がライブに来られてないんですよ。そういう方々にもAldiousを知ってもらうチャンスをもらえるなら、そして以前からのAldiousファンの方々にも名刺代わりになるような曲を書かせてもらえるなら、等身大でありのままのものを作りたいなと。そういう気持ちだったので、幅広い層の方々に向けて前向きなバラードを書きました。聴いてくれた人の心が少しでも開けるような、“大切なあなたに送る曲”というイメージを膨らませて書いたのがこの「I Wish for You」という曲です。

──早くも高い作曲能力を発揮していますね。

Yoshi はい。もともと彼女の親御さんが音楽大好きで、彼女もかなりいろんな音楽を聴いて育ってるし、ピアノ、ギター、トランペットもできるくらいかなり音楽的なポテンシャルが高くて、耳コピ能力もすごい。歌録りは進行がすごく早かったんですよ。こんなに早い人は見たことないというくらいで、エンジニアの方もびっくりしてました。しかもうまいとかピッチが合ってるってだけじゃなくて、例えば歌を切るときにちょっと語尾を上げてみたり、ニュアンスの表現とかハモりのセンスもすごくて、ほぼ一発OKでした。

──もともとの能力もありますけど、ツアーで歌い重ねてきたことも大きいですよね。

Yoshi ただ「I Wish for You」はけっこう時間がかかりました。OKがなかなか出ない。

R!N この曲だけでボーカル録りに7時間半ぐらいかかってますよ(笑)。

──えー!

R!N 新曲を収録するのは本当に勇気のいることだし、妥協したくないっていうのがすごくあったので。

現実的な考えありきでつかんだ海外進出

──話は変わりますが、Aldiousが参加したアメリカ・ロサンゼルスでの楽器見本市「NAMM Show」でのショーケースライブの反応がすごかったらしいですね。楽屋にまで人が押し寄せたそうで。

Yoshi 「NAMM Show」は楽屋っていう楽屋がなくて、私たちが演奏したのはヒルトンホテル内に設置されたステージだったんですけど、ライブ後に外のちょっと広めのところで片付けをしてたらブワーッと何百人も人が来たんですよ。「写真撮ってください!」「サイン書いてください!」「握手してください!」って。そのステージを1日中見てた関係者の方曰く、Aldiousが一番盛り上がってて、お客さんも一番入ってたらしいです。

Aldious

──アメリカでの初ライブですごい熱狂ぶりですね。

Yoshi たぶんYouTubeのおかげだと思います。Aldiousは上海のサマソニ(「SUMMER SONIC SHANGHAI」)に出たことがあるくらいで、全然海外でライブをしたことがなかったんで。

──海外志向ではないんですか?

Yoshi(G)

Yoshi 私はまったくないです。私は日本での基盤がしっかりしてないのに海外に行っても……と思うタイプで。今はその気になればすぐに海外でライブできちゃうし、アメリカでライブしたことがステータスにはならない。Aldiousにも海外からライブのお誘いを年中いただくんですけど、意味のあるライブになり得るものにしか出たくないとは思ってます。ただ、私も楽器が大好きだし、「NAMM Show」は夢だったので、これはうれしかったです。

──では、今のところ海外へ行く予定はないんですか?

Yoshi それがですね、「NAMM Show」でライブしたときに関係者の方からライブのお誘いをいただいたんですよ。その方も「Aldiousは海外でもっとやったほうがいいよ」とおっしゃっていて、その日のうちにライブハウスを紹介していただいて。ほかにもお話をたくさんいただいたので、今年の10月ぐらいに、イギリス、ドイツ、フランスでライブを予定しています。行くからには意味のあるライブをしたいですね。お金と時間をかけるんだし、行っても意味がなかったら「じゃあ、日本でやったほうがよかったんじゃないの?」って思うので。

──Yoshiさんの考え方は常に現実的ですね。

Yoshi そうですね。「海外に行ける。うれしー!」とかはないです(笑)。

──ほかの皆さんはどうですか?

サワ SNSとかで海外の方からすごくメッセージはいただくんです。「うちの国でライブをしてください!」みたいな。それをしてあげられないのがずっと私としては心苦しかったので、そういう意味で海外に行きたいっていうのはありました。私自身は英語もしゃべれないし、プライベートでも海外に行ったことがなかったので、海外でライブができるのかっていう不安は今でもあって。でも待ってくれてる方々が世界にいるんだっていうことを「NAMM Show」で体感したので、それに応えたいという気持ちです。

トキ 私は昔から世界のいろんなところでライブがしたいという夢がありました。でもYoshiが言うように、日本で基盤を作らないと海外に行ったところで意味がないっていう考え方にはすごく共感してます。今でも基盤ができてるのかどうかはわからないですけど、日本でもある程度積み重ねてきたものがあるので、ようやく挑戦しに行けるぞというワクワクと緊張があります。

Marina 今回の「NAMM Show」は、自分たちはどんなキャリアがあって、日本ではどういう活動をしてるかっていうことを書いた書類を提出して審査を受けなきゃいけなかったんですけど、Aldiousは12年も続いてるバンドだし、みんなが作ってきたキャリアがあったからこそ出られたんです。なので、今までみんなで作り上げてきた日本でのキャリアを持って海外にも挑んでみたい。海外でライブしたいっていう思いは私にも前からあったので、その準備が整ったというか、この5人になってやっとチャレンジできる体制になったんだと思います。

──加入したばかりなのに、R!Nさんは大変ですね。

R!N より多くの人たちの期待に応えるために、自分たちもどんどんチャレンジしていきたいです。それと同時に向上心も高めていかないと、いざ新たなチャレンジをする場面で立ち向かえる力がなくて全部ダメになっちゃうと思います。今年は完全体のAldiousでいろいろ活動ができる年になるので、みんなで力を合わせてチャレンジしていきたいなって強く思ってます。

──R!Nさんに改めて聞きますけど、バンドって最高じゃないですか?

R!N 最高です。初めて加入したバンドがAldiousでよかったってめっちゃ思ってます。両思いでよかった!

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