alcott|貴田宰司が描く“あまのじゃくし”の奮闘記

「与太郎」は悪ガキ

──いい曲ぞろいということですが、強いて1曲、特に貴田さんが好きな曲を挙げるとしたらどの曲ですか?

それは本当に難しい質問で。自分が親になって11つ子ちゃんが生まれて「どの子が好き?」って聞かれても「私は3番目の子が」とは言えないですよね。どの子も個性的で一長一短があるから。ただ、その中で悪ガキの位置にいるのは「与太郎」かな(笑)。こいつは一般受けはしないかもしれないけど、すごく個性的で愛されるんじゃないかなと。

──ああ。悪ガキですね(笑)。

貴田宰司(Vo, G)

この曲を作ってたときが、ちょうど「小火」のミュージックビデオを撮っていた時期で、僕の中で“演じたい欲”が強かったんですよ。

──「小火」ではショートムービーにも少し貴田さんが出演されていますもんね。

そう。それで演じるってめちゃくちゃ楽しいなって思ったんです。だから「与太郎」はちょっとミュージカルみたいな曲になっていて。

──曲は貴田さんのセリフから始まります。

セリフ含めて、言いたいことを言って「Baby Love」っていう言葉で丸く収めるという。この曲は「昭和元禄落語心中」というマンガにインスパイアされたんです。

──雲田はるこさんによるマンガですね。アニメやドラマ化もされています。

そう。僕はマンガを読んだんですけど、いい作品で。主人公が「与太郎」って呼ばれてるところから曲のタイトルを付けたんですけど、与太郎って落語界ではできの悪い男の子を指すんです。何をやっても出来損ないという、そんなところが僕に似てるなあと思って。

──この曲では「言いたいことを言った」と先ほどおっしゃっていましたが、曲調的にもやりたい放題やっている感じがします。

それは「与太郎」はアルバム収録曲の中で最後に作った曲だからです。10曲できあがって「あと1曲だ」ってなったとき、僕めっちゃテンション上がるんですよ。「好きなことやってやろう!」って。それでできたのが「与太郎」です。

──なるほど。

だから全員好き勝手やってるんですよ。セッションみたいな感じで作っていきました。だからライブでやるのが楽しみです。

貴田宰司(Vo, G)
貴田宰司(Vo, G)

根底にあるのは、誰かの力になりたいということ

──リード曲が決められなかったというのが頷けるほど、本作はバンドのさまざまな面が見える1枚になりましたね。

そう言ってもらえるとうれしいです。「YELL」の先を見せられたかなという気がしています。「あまのじゃくし」を聴いた人が「YELL」に戻ってもらえたらと思っていて。

貴田宰司(Vo, G)

──なぜですか?

「あまのじゃくし」はもちろんなんですけど、ふと聴いたときに「YELL」ってすごくええアルバムやなって思ったんです。

──つまりalcottとして伝えたい思いや鳴らしたい音は「YELL」からブレてないということなんですね。

そうだと思います。根底にあるのは、誰かの力になりたいということ。そのためには何よりも自分の力になる音楽を作りたい。弱い自分から強い自分に変わりたいという思いはずっとあるし、それを音楽で吐き出してる。そのことが誰かのためになっているのかなって。だから「あまのじゃくし」というタイトルを付けて、あまのじゃくしから成長していく姿を描くことで、誰かの力になれればと思っています。

公演情報
BUTAFES 2018
  • 2018年11月23日(金・祝) 兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎 / 神戸VARIT. / KOBE BLUEPORT / KINGSX / ART HOUSE
    出演者 alcott / あいくれ / アイビーカラー / 秋山黄色 / Amelie / ircle / Unblock / WOMCADOLE / EVERLONG / YEN / ofulover / KAKASHI / クアイフ / climbgrow / CRAZY VODKA TONIC / the quiet room / SOUTH BLOW / CIVILIAN / suga/es / ジラフポット / Slimcat / ソウルフード / そこに鳴る / DJ ライブハウスキッズあるある中の人 / the twenties / ドラマストア / 超能力戦士ドリアン / ニアフレンズ / the paddles / ハンブレッダーズ / 羊文学 / ペペッターズ / POT / Maki / Mr.ふぉるて / 山岸竜之介