音楽ナタリー PowerPush - AKLO×EXILE SHOKICHI
ヘッズ2人のヒップホップ談義
ボースティング系のリリックを書く理由
──個人的には、「The Arrival(到着)」というアルバム名然り、リード曲のタイトル「Break the Records(記録更新)」然り、1曲目のド頭のライン「待ち望んだ展開なんだろこれが第2弾」然り、強気な姿勢が前面に出ているのがすごくいいなと思いました。「俺の2ndアルバム、みんな当然待ってたっしょ」と言わんばかりに。
SHOKICHI 間違いなく待ってましたよ。
AKLO ボースティング系のリリックって、USだと主流になってる世界観で。それは、もともとアメリカってちっちゃい集団の中に「俺がキングだ」ってアピールする人がいっぱいいたっていうルーツもあるだろうし、たぶん黒人文化の中で「自分がすごいんだ」っていうのはアピールしないといけないところだったと思うんです。
SHOKICHI そうですね。
AKLO でも、僕が日本で本気でラップをやり始めた頃は“エモいヒップホップ”ブームみたいなものがあって、傷付いた経験とかエモーショナルに自分の気持ちを歌うっていうスタイルが流行ってて。そのときに、「俺スゲーんだぜ」みたいな曲も増えたほうがいいな、という思いがあって。それ以来「俺がこの席いただこう」って決め込んで、ボースティング系のリリックをいっぱい書いてるところがあるんですよ。今回は、1stが評価されたから、それを生かしてさらにボースティングしていこうと思って、それで多く感じるのかなとも思いますね。
──自分がそこをポイントとして感じたのも、今、日本人の中で同じことをしてる人が少ないからかもしれないです。
AKLO それが正解かどうかはわからないんですよ。もちろん日本の文化に合うヒップホップをすることもすごく重要だけど、自分が外国で育ったっていうのもあるし、そういう人が存在してもおかしいことじゃない。僕が無理に日本人ぶってもしょうがないし、自分らしくやろうかなって。
SHOKICHI そういうことを考えて発信してるってめちゃくちゃカッコいいです。それをどんどんやって、ヘッズたちが影響を受けてラップ始めて……そうやって盛り上がっていけばいいなってマジで心から思いますね。
──SHOKICHIさんはEXILEとしてパフォーマンスするとき、自分の好きなものからインスパイアされてボースティングを意識したりはするんですか?
SHOKICHI いや、ないですね。そもそもEXILEは“個”じゃなくて“集団”であって。HIROさんが先頭にいて、伝えるテーマがあるんです。自分は「EXILE」っていう名も付いているので、そのテーマにそぐわないものは入れないようにしてます。
AKLO そのテーマってずっと同じテーマなんですか?
SHOKICHI そうなんです。
AKLO どういうテーマなんですか?
SHOKICHI 「Love, Dream & Happiness」というテーマです。それから「音楽で日本を元気に」というのもあって。HIROさんが作ったテーマっていうのは自分の中でめちゃくちゃ大事にしているんで、どんな音楽を作るときもこのテーマが大前提にありますね。
AKLO でも、ダンスでは「どうだ!」的な動きって多くないですか?
SHOKICHI そうですね。自分たちが体鍛えたりするのも、出てきた瞬間にまず「がんばってる」風に見えるじゃないですか。がむしゃらにがんばって、子供たちが「EXILEになりたい」とか「自分もがんばろう」とか思ってくれればいいなっていう気持ちでやってるんです。言い方変えるとボースティングなんですけど、存在理由を付けてるっていうか、“強い男”を表現することでグループとしての存在意義を保っているような気がします。
もっとヒップホップを広げたい
AKLO そんな中で、ソロ活動でもテーマはキープするんですか?
SHOKICHI やっぱり名義が「EXILE SHOKICHI」で、EXILEとしてやっていることなので大本のテーマは変わらないです。でも“EXILEっぽい音楽”っていうイメージがあるとしたら、それをソロの活動で広げることができればなって思ってるんです。例えば、すごい沖に出て網を投げて広げていたら、よりいろんな魚が引っかかりますよね。多くのジャンルの人たちが触れてくれるとEXILE自体ももっと盛り上げられる。そういったことを考えながらやっていますね。
AKLO そういう意味でラップなんですね。
SHOKICHI そう。ラップをやってるのも、俺が目を輝かせて憧れた大好きなヒップホップが日本でも主流になってほしいし、浸透するためのツールになりたいなとも思ったんですよ。生意気にも。だからそういったアプローチも最近は活発にしています。こんなにカッコいい音楽があるんだってことを多くの人に知ってもらいたいし、もっともっとヒップホップを聴いてほしい。若い人たちがヒップホップに触れて育てば、日本の何年後かの音楽シーンはもっと素晴らしくなるじゃないですか。ジャパニーズミュージック全体がもっと形あるものになっていってほしいなって、いち音楽ファンとして思いながら作っていますね。
──AKLOさんと言っていることは根本的に同じですね。
AKLO そうですね、思いました。ヒップホップを広げたいって気持ちがすごいうれしいですね。
さんピンに近い波が生まれるかも
──SHOKICHIさんのヒップホップへの愛はすごく伝わったのですが、日本のこのシーンの現状はどう映っていますか?
SHOKICHI めちゃくちゃ盛り上がってきてると思いますよ。よく「昔のほうがよかった」っていう人がいると思うんですけど、それって今そのシーンをよく見てないだけであって、常に進化してるし盛り上がってきてると思う。僕は常にすげー刺激を受けますね。
──AKLOさんは現場の最前線にいる立場としてどうですか?
AKLO そうだと思います。盛り上がってるなっていうのはライブをしてて感じます。この間もZeebraさんが主催した日本語ラップのイベント(参照:Zeebra発信ライブにRHYMESTER、OZRO、ANARCHYら)に出たんですけど、ヘッズが集まって超盛り上がりましたからね。
SHOKICHI うわーいいっすねー!
AKLO そういう意味じゃ昔のさんピン(CAMP)みたいな感じというか、それに近い波が、うまくみんながこのまま乗っていけば生まれるんじゃないかなと思ってます。例えば若手の大きな波のひとつが「高校生ラップ選手権」っていうイベントで。知ってます?
SHOKICHI はい。
AKLO はは、スゲー(笑)。めっちゃヘッズ。
SHOKICHI めっちゃ観てます。楽しいですよね(笑)。
AKLO あれからT-PABLOWくんっていうスターが生まれて、双子のYZERRとのユニットでZeebraさんのレーベルと契約したりとか。今年新木場STUDIO COASTで「高校生ラップ選手権」をやったんですけど、ちゃんとCOASTが埋まるんですよ。
SHOKICHI やーばー!
AKLO すごいですよね。
SHOKICHI うれしいっすね。
AKLO まだ名の知れていないような高校生の戦いを観に、それだけの人数が集まってるので。それはまだまだ続きそうだし、もしかしたら高校生のラップスターみたいな子たちがジャンジャン生まれる可能性ありますよ。
SHOKICHI ラップもそうだけど、ダンスも盛り上がってますし、かなりアツいですね。これからも本当に楽しみにしてます。
- ニューアルバム「The Arrival」/ 2014年9月3日発売 / One Year War Music / レキシントン / OYWM-14004
- [CD] 2916円 / OYWM-14004
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収録曲
- The Arrival feat. JAY'ED
- Break The Records
- NOx3
- Turn Up
- RGTO feat. SALU, H.TEFLON & K DUB SHINE
- 時限爆弾
- Butterfly
- I Don't Care feat. Crystal Kay
- ZUWAI
- Catch Me If You Can feat. KREVA
- BGM
- Blind
- New Days Move(※TSUTAYA限定盤ボーナストラック)
- Runway(※TSUTAYA限定盤ボーナストラック)
- Do It Big feat.WEZ(※TSUTAYA限定盤ボーナストラック)
AKLO(アクロ)
日本人とメキシコ人のハーフのラッパー。2008年に空哲平とのユニット“AKLOと空”名義で初のアルバム「AKLOと空」を発表する。その後、ソロとして2009年にミックステープアルバム「 DJ.UWAY Presents A DAY ON THE WAY」「2.0」を世に送り出し、フリーダウンロードによるミックステープアルバムという手法や、その高いクオリティに注目が集まった。2012年にBACHLOGICが立ち上げたレーベルOne Year War Musicに所属し、9月に1stアルバム「THE PACKAGE」をリリース。2014年7月にはKREVAを招聘したシングル「Catch Me If You Can feat. KREVA」が好評を博し、9月に2ndアルバム「The Arrival」を発表した。
EXILE SHOKICHI(エグザイル ショーキチ)
2007年に二代目J Soul Brothersのメンバーに抜擢されたのち、2009年3月にEXILEに新メンバーとして加入。2011年からはKENCHI、KEIJI、TETSUYA、NESMITH、SHOKICHIの5人からなるTHE SECOND from EXILEとしても活動している。THE SECOND from EXILEでは楽曲制作もSHOKICHI自ら行う。役者としても、2013年7月クールの日本テレビドラマ「フレネミー ~どぶねずみの街~」でNAOTOとともに初主演を果たす。2014年6月にはEXILEから3人目のソロデビューとして、シングル「BACK TO THE FUTURE」をリリースした。
- EXILE SHOKICHI ソロ1stシングル「BACK TO THE FUTURE」2014年6月4日発売 / rhythm zone
- [CD+DVD] 1944円 / RZCD-59622/B
- [CD] 1296円 / RZCD-59623