ナタリー PowerPush - AKLO

ヒップホップ好き全員をロックしたい

ヒップホップ好きな奴、全員をロックしたかった

──「THE LADY」の歌詞は面白いですね。

この曲は男の失恋ソングですね。物語がループする構造になってます。

──どういうことですか?

インタビュー写真

クラブですごいかわいい女の子に出会うんだけど、実はその子がビッチだってわかって「もう嫌だ!」ってなるんです。でも歌詞の最後で「とか言ってる間に横切ったLadyがDamnストライク さっきまでの思い一時停止 見つけたかも本物のLady」って歌ってて、結局また歌詞の頭で歌ってるような「今までとは違うタイプで~」って思考に戻っちゃう(笑)。

──(笑)。心理描写が妙にリアルですよね。これは男だったら、結構みんな経験があると思います。

男って好きな女の子ができたりすると、実はすごく不安定な精神状態になっちゃうと思うんですよ。この曲ではそれを表現したくて、この延々とループし続けるダメな思考の流れをリリックに落とし込みました(笑)。

──「THE PACKAGE」には、この「THE LADY」や「サッカー」のような多くの人が共感しやすい曲もありますが、メインとなっているのは「BEAST MODE」や「LIGHTS AND SHADOWS」のようなヒップホップリスナーに向けた楽曲ですね。

そうですね。「THE LADY」や「サッカー」のような曲、さらに「DAY OFF」のような変わったトピックの曲は、ラップの多面的な面白さを表現したい、という思いもあったので入れました。でも、俺の歌詞の基本的な世界観はセルフブースト。「俺が最強」っていうスーパーサイヤ人みたいな感覚です(笑)。

──USメインストリームのヒップホップ的な。

それが俺のスタイルなんで。「鉄をも溶かす!」みたいな感じ(笑)。実際にはそんなふうには書かないですけどね。でもアルバムで核になってるのは、あくまでUSメインストリーム的なセルフブーストしたリリックの曲です。

──なるほど。

俺はこの「THE PACKAGE」で日本のヒップホップ好きを全員ロックしたいんですよ。そういう人たちに「AKLOってすげえ」って言われるような作品にしたかったし、オンリーワンなキャラクターでありたかった。

──たしかにAKLOさんのようなスタイルのラッパーは、日本にいませんね。

うん。日本のヒップホップシーンには不良で面白いやつはいっぱいいるけど、もうその枠は供給過多なんですよね(笑)。USのヒップホップシーンはそれこそいろんなキャラクターがいっぱいいるんですよ。リック・ロスのようなドラッグ・ディールばかり歌うやつもいれば、ジェイ・Zのようにニューヨークを舞台にリアルモノポリーができちゃうようなやつがラップしてたりもする。日本で言ったら、孫正義がラップしてるような感じかな(笑)。当然、日本とは市場規模も違うから一概には比べられないけど、俺にはまだまだ日本のヒップホップシーンで空いてる枠が見えますよ。例えば、東大行ってる超頭いいやつのラップとか聴いてみたいじゃないですか? それとかITキッズとかファッションブランドとくっついてるやつとかさ。

──日本でヒップホップの一般的なイメージは“不良”ですよね。

そうなんですよ。結構みんな群れちゃって、俺みたいに自分で道を切り開いて独自の路線を作るやつが少なすぎる。俺が本当に焦るのは俺の路線で「THE PACKAGE」以上のクオリティのアルバムを、フリーのミックステープアルバムで出されたときですね。でも、とりあえず今はいません。

ニューアルバム「THE PACKAGE」2012年9月5日発売 2835円 Lexington Co., Ltd / One Year War Music / OYWM12004

収録曲
  1. Beast Mode
  2. Red Pill
  3. Best Man
  4. Foot Print
  5. S.H.O.T.
  6. Chaser
  7. Day Off
  8. Heat Over Here
  9. サッカー feat.JAY'ED
  10. The Lady
  11. PM to AM
  12. Lights And Shadows feat.NORIKIYO
  13. Your Lane feat.鋼田テフロン
AKLO(あくろ)

AKLO

日本人とメキシコ人のハーフのバイリンガルラッパー。2008年に空哲平とのユニット“AKLOと空”名義で初のアルバム「AKLOと空」を発表する。その後、ソロとして2009年にミックステープアルバム「DJ.UWAY Presents A DAY ON THE WAY」を自身のブログに公開。その3カ月後にはミックステープアルバム「2.0」を世に送り出し、フリーダウンロードによるミックステープアルバムという手法や、その高いクオリティに注目が集まった。2012年にBACHLOGICが立ち上げたレーベルOne Year War Musicに所属し、7月にシングル「RED PILL」をリリースした。9月に待望の1stアルバム「THE PACKAGE」を発表。今後の動向に注目が集まっている。