ナタリー PowerPush - AKLO

ヒップホップ好き全員をロックしたい

AKLOが9月5日に初のフルアルバム「THE PACKAGE」をリリースした。これを記念してナタリーではAKLOに単独インタビューを実施。ナタリー初登場となる今回は、新作の話はもちろん、彼がラップを始めたきっかけや自身のスタイル、そしてヒップホップの日米における違いなどさまざまな話題について話してもらった。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 雨宮透貴

AKLO / YOUR LANE feat.鋼田テフロン

アメリカでラップに目覚め、大分でスキルを磨く

──今回はナタリー初登場ということで、まずはAKLOさんのプロフィールから伺いたいと思います。AKLOさんはメキシコ人と日本人のハーフなんですよね。

インタビュー写真

はい。父がメキシコ人で、母が日本人です。

──ラップを始めたのはいつごろですか?

15歳くらい。俺がアメリカの田舎に住んでたときです。その頃NO LIMITというインディレーベルのMASTER Pってラッパーがすっごい流行ってて、いわゆるUSメジャーっぽい音のアーティストなんですが、その影響で始めました。最初は英語でラップをしてました。

──日本語でラップするようになったのはどうしてですか?

俺、大学は日本で大分だったんです。大分は福岡や熊本とともにアンダーグラウンドヒップホップのシーンがすごい盛んな場所だったので、俺もライブをするようになって。最初は英語でやってたんですけど、周りの友達に「なんで英語なの? そんなんじゃ全然伝わんねーよ」って言われたのがすごい悔しかったから、日本語でラップするようになりました。

──日本語でラップする際に苦労したことはありますか?

そこは特になかったですね。意外とスムーズにできちゃいました。あとフリースタイルバトルの大会とかも結構あったから、その中でスキルが磨かれた部分もすごいあって。すごい早口でラップしたりとか。このときにWAKAKA BREAKS(DJ BAKU / DJ Klock / TATSUKI)と知り合ったりして。DJ Klockさんとは一緒にイベントやったりとか、かなり仲良かったですよ。

──当時の日本のアンダーグラウンドヒップホップシーンには、AKLOさんのようなバイリンガルのラッパーは割と少なかったですよね。

そうですね。英語混じりのバイリンガルラップって、昔からヒップホップシーンでは煙たがられるんですよ。「何歌ってるかわからねー」みたいな。もちろんVERBALさんとかすごい成功をされてる人もいるけど、基本的にヒップホップシーンではそこまでウエルカムじゃない状況もあって。だから、ヒップホップシーンの人にも認めてもらえるように、日本語と英語のバランスにはかなり気を使って、今のスタイルになりました。

バイリンガルラッパーだから書ける歌詞

──歌詞を書く際に意識していることはありますか?

日本語を英語的な文法でラップすること。簡単に言うとラインの最後に名詞を持ってくるんです。例えば「さっき水を飲んでた」っていうラインで韻を踏もうとすると「~した」「~いた」とか韻で使える言葉の数が少ないんですよね。だからつまんない。でも「さっき水を飲んでた」を英語で言うと「I Was Drinking A Water」となって「Water」という名詞で韻を踏むことができる。そうすると使える言葉の数が格段に増えるわけです。

──なるほど。

なので俺が「さっき水を飲んでた」をラップで使うなら、「俺は飲んでた / 水」みたいな感じで名詞を最後に持ってくるようにするんです。日本語の文法としては変だけど、このほうが面白いラインが作りやすい。そこはすごい意識してますね。あと英語を使う場合も、簡単でわかりやすい単語を選びます。さらに全て英語でラインを作る場合は、リリックが深読みできるようにします。

──例えば?

「PM TO AM」って曲に「I Got Some Mad B*tches Working Undercover」ってラインがあるんですよ。これは普通に訳すと「クラブにいくと狂ったビッチが俺を見張ってる」っていう意味なんです。でも「Mad B*tches」には“すげーイケてる女”って意味もあって。そうするとこのラインは「イケてる女たちがシーツの下(Under Cover)で俺にWorkingしてる」って解釈することもできる(笑)。

──(笑)。

USヒップホップ的な英語の面白い部分を入れてリリックを作りつつ、日本語は聞き取りやすくラップする。それが俺の見つけたスタイルで、今回の「THE PACKAGE」の歌詞のコンセプトでもありますね。

ニューアルバム「THE PACKAGE」2012年9月5日発売 2835円 Lexington Co., Ltd / One Year War Music / OYWM12004

収録曲
  1. Beast Mode
  2. Red Pill
  3. Best Man
  4. Foot Print
  5. S.H.O.T.
  6. Chaser
  7. Day Off
  8. Heat Over Here
  9. サッカー feat.JAY'ED
  10. The Lady
  11. PM to AM
  12. Lights And Shadows feat.NORIKIYO
  13. Your Lane feat.鋼田テフロン
AKLO(あくろ)

AKLO

日本人とメキシコ人のハーフのバイリンガルラッパー。2008年に空哲平とのユニット“AKLOと空”名義で初のアルバム「AKLOと空」を発表する。その後、ソロとして2009年にミックステープアルバム「DJ.UWAY Presents A DAY ON THE WAY」を自身のブログに公開。その3カ月後にはミックステープアルバム「2.0」を世に送り出し、フリーダウンロードによるミックステープアルバムという手法や、その高いクオリティに注目が集まった。2012年にBACHLOGICが立ち上げたレーベルOne Year War Musicに所属し、7月にシングル「RED PILL」をリリースした。9月に待望の1stアルバム「THE PACKAGE」を発表。今後の動向に注目が集まっている。