ナタリー PowerPush - ASIAN KUNG-FU GENERATION
初のベスト盤「BEST HIT AKG」発売の真意をメンバー&スタッフが語る
当時の俺たちにかけがえのない言葉をくれた人
──ところで中山さんは、アジカンのどこが好きなんですか?
中山 抽象的だねえ(笑)。
──(笑)。どこに惚れ込んでずっと一緒にやってるんでしょうか?
中山 最初はやっぱり曲と声と佇まいだよね。今はそこから1周も2周もして、なんかあがいてる感じとか挑戦し続けてる感じが素敵だなって思ってる。彼らの未来はレコード会社の想像の域を超えてるから、ずっとそばで見ていたいっていう気持ちかな。
──見ているだけ?
中山 レコード会社なんていうのは、ある程度スタイルを確立したアーティストに限って言えば、やろうとしてることを「あ、そうなんだ」って言って全力で応援して、増幅してあげるくらいしかできないからさ。「こういう話があるけどどうする?」みたいなことはもちろん言うけど、本質的には全部DIYだから。
──今「あがいてる感じ」という表現がありましたけど、後藤さん自身もそういう感覚はありますか?
後藤 まあ、自分らでも何やってるかよくわかんないですからね。ただ、世に訴えかけたいことっていうか、元々毒吐くタイプですけど、今は吐かなきゃいけない毒が明確になってきてるとは思う。もちろん震災の影響は大きいです。言葉の選び方とか、ロックバンドの意味とかも変わってくると思うし。
──逆にアジカンは中山さんのどこが好きなんですか?
後藤 やっぱり俺たちはずっと見つけてもらえずに、渋谷とか下北のライブハウスでいじけそうになってたから。あの頃は相当卑屈な顔してやってたと思う。道彦さんはそんな俺たちをちゃんと見つけて「おまえらいいバンドだ」って初めて言ってくれた人なんですよ。あんなところであんなめちゃくちゃな演奏してたやつらにそんなふうに声をかけてくれて、「ミニアルバムいいからもう一回うちから出しなおせ」みたいな、そういうことを言ってくれた。
──うれしかった?
後藤 うん。俺はそういう人たちのことを忘れないんですよ。第一声で何を言ったかとか覚えてるし。「なんであの人、あんな時期の俺たちのこといいって言ってくれたんだろう」って。やっぱそれは当時の俺たちにとっては本当にかけがえのない言葉だったんですよね。
アジカンはもう消費されない
──その最初のきっかけからもう10年近く経ちますね。今もいい環境でやれてますか?
後藤 まあ、レーベルはやっぱりすごくいいところと契約できたなって思ってます。キューンの所属アーティストの一覧を見ると「ああ、いいな」って思う人ばっかり(笑)。ジャンルにとらわれずにちょっと癖のある人たちが集まってる感じがあるし。
──メジャーレーベルと契約していることで、やりにくい面はないですか?
後藤 俺は逆にソニーグループで良かったなって思うんです。パブリックイメージとして一番堅くて一番メジャー然としてるところで俺たちが何かをやることに意味があるから。例えばコピーコントロールディスクに反対っていう声明を出したり、ソニーで配信なんてできるわけないよってみんな言ってる中、俺たちがUstreamでライブ中継をしてみたり。そっちのほうが面白いと思うんですよ。結局真ん中が変わらなかったらジリ貧なわけで、王道がないとカウンターって成立しないから。どメジャーレーベルの中に、ちょっと変わったレーベルが食い込んでて、その中で面白いことしながら業界全体をちょいちょい刺激できるっていうかね。そういうところがキューンでやってて面白いところだと思ってます。
──キューンレコードは変わったレーベルだという意識は中山さんの中にもあるんですか?
中山 そりゃあるよね。変わったレーベルにしようと思ってる。そうじゃないと目立たないし勝てないし。変わった人好きだし。あと、そういう風にしてるとそういう人たちが集まってくるんだよね(笑)。
──そんな異色のレーベルの中で、アジカンはある種王道のロックバンドとして認識されていますよね。1月20日にはフジテレビ系「僕らの音楽」にも初めて出演したりと、メジャー感のある活動を選んでいるようにも見えます。
後藤 なんか、売れることに伴うストレスをうまくかわしてきたっていうところはあると思うんですよ。例えば今までテレビに出なかったのもそういうことだしね。やっぱり芸能界的なノリでガツガツ来られてもって思うし。ただ、メンバー4人で話してると「テレビはちょっと」ってやつもいれば「かまわないよ」っていうやつもいて。「スペースシャワーTVには出るけど民放は出ません」っていうのもどうかと思うし、みたいな。そういう話はしますよね。
──なるほど。
後藤 今は自分たちの活動は地に足がついてると思ってるから心配してないです。ベスト盤を出してもいいし、テレビに出てもいいと思うし。このベスト盤がきっかけで、仮にアジカンがワッと売れたとしても、今はもうそんなに消費されないんじゃないかって思ってるんですよ。
──「ワッと売れたい」という気持ちはありますか?
後藤 「売れたい」って言うと語弊があるけど、ちゃんと言葉を選ぶなら「ハッとさせたい」ってことですね。自分たちの音楽でどれくらいの人をハッとさせられるか。改めて勝負してみたいっていう気持ちはありますよ。
CD収録曲
- 遥か彼方
- 未来の破片
- アンダースタンド
- 君という花
- リライト
- 君の街まで
- ループ&ループ
- ブラックアウト
- ブルートレイン
- 或る街の群青
- アフターダーク
- 転がる岩、君に朝が降る
- ムスタング
- 藤沢ルーザー
- 新世紀のラブソング
- ソラニン
- マーチングバンド
DVD収録内容
- フラッシュバック (Studio Live)
- 未来の破片 (Studio Live)
- 電波塔 (Studio Live)
- アンダースタンド (Studio Live)
- 夏の日、残像 (Studio Live)
- 無限グライダー (Studio Live)
- その訳を (Studio Live)
- N.G.S (Studio Live)
- 自閉探索 (Studio Live)
- E (Studio Live)
- 君という花 (Studio Live)
- ノーネーム (Studio Live)
ライブ情報
- 2012年2月19日(日)
- 千葉県 幕張メッセ イベントホール
OPEN 15:00 / START 16:00 - 2012年2月22日(水)
- 東京都 日本武道館
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2012年2月23日(木)
- 東京都 日本武道館
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2012年2月26日(日)
- 大阪府 大阪城ホール
OPEN 17:00 / START 18:00
ASIAN KUNG-FU GENERATION(あじあんかんふーじぇねれーしょん)
1996年に同じ大学に在籍していた後藤正文(Vo, G)、喜多建介(G, Vo)、山田貴洋(B, Vo)、伊地知潔(Dr)の4人で結成。渋谷・下北沢を中心にライブ活動を展開し、エモーショナルでポップな旋律と重厚なギターサウンドで知名度を伸ばす。2002年にはミニアルバム「崩壊アンプリファー」をリリース。同年「FUJI ROCK FESTIVAL '02」や「SUMMER SONIC 2002」などの夏フェスに出演し、メジャー1stアルバム「君繋ファイブエム」を発表。2004年には2ndアルバム「ソルファ」でオリコンウィークリーチャート初登場1位を獲得し、初の日本武道館ワンマンライブを行った。2009年には映画「ソラニン」の主題歌として書き下ろし曲「ソラニン」を提供し、大きな話題を呼んだ。2003年からは自主企画によるフェスティバル「NANO-MUGEN FES.」を開催。海外アーティストや若手の注目アーティストを招き、幅広いジャンルの音楽をファンに紹介する試みも積極的に行っている。2012年1月、初のベストアルバム「BEST HIT AKG」をリリース。
2012年1月20日更新