音楽ナタリー Power Push - アカシック
理姫&バンビ、「ラブホの上野さん」の中の人に会う
薬を作れないならせめて毒を出すべき
──アカシックのお二人は人から恋愛相談されることはありますか?
理姫 私されますよ。よく。
バンビ 僕もめっちゃされます。
理姫 えっ、されるの!?
バンビ されるされる。めっちゃされる。
理姫 そうなんだ。びっくり。きっと「モテそうだから経験豊富なはず」って思っちゃうんだろうね。バンビのことをよく知らない人ならね。
バンビ 「よく知らない人ならね」……?
上野 言葉の端々からお二人の関係性が見えるような気がします(笑)。
──理姫さんとバンビさんは、相談に答えるのは得意なほうだと思いますか?
理姫 いえ全然。私は「これが100%正しい」みたいなことは答えられないから、2人で一緒に考えながら「お互い気を付けようね」って結論になるんですよ。だから人の相談を聞いて私が答えた話を、あとで思い出して「いや、それ私も一緒じゃん! ダメじゃん!」って気付くことが多いです。
──なるほど。
理姫 というか、答えようがないことを相談されることが多いんですよね。「男の人からこんな連絡があったけど、どう答えればいいと思う?」みたいな相談なら私も考えるのが楽しいけど、「理姫さーん、彼氏できないんですよお」って言われても「知らないよー」としか答えられないじゃないですか。
バンビ そりゃそうだ(笑)。
上野 「彼氏できないんです」って言ってる人が、本当に彼氏ができないことに悩んでるかのどうかは、また別問題ですからねえ。
──上野さんは、人の相談に乗るコツのようなものがあるんでしょうか?
上野 回答に上手に答えるコツは、相手の立場になって物事を考えることです。
理姫・バンビ ……。
上野 ……みたいな、ぬるい回答を絶対に言わないことです。
理姫・バンビ わはは(笑)。
上野 「毒にも薬にもならないことを言わない」というのは意識しております。薬を作れないならせめて毒を出すべきです。
理姫 私もそうしよう!
上野 私の場合、相談者から面と向かって話をされるわけではなく、インターネットやマンガを通して不特定多数の人が読めるように悩みに答えているので、普通の方が友人から相談されるのとは状況が違うんです。だから誰が読んでも意味のある回答にしようというのは心がけております。
うちのお母さんがback numberのことを知ってたんです
──この機会にアカシックのお二人から上野さんに相談したいことなどはありますか?
理姫 バンドとして“毎日やるべきこと”が、自分たちにとっては遊びに近いんですよ。楽しいから曲を作るし、楽しいから歌う。でもそんなんで大丈夫なんだろうかって気もしてて。バンド活動ってものについて、上野さんはどう思います?
上野 例えばですが、産業は近年ほとんど機械化されていて、より機械化が進めばいずれ人間は働かなくても暮らせるようになるかもしれません。ですが、そのときに労働がなくなるかっていうと、私はたぶんなくならないと思っています。人間の特徴として「苦労したんだからお金をもらえる」というものがあり、逆に言うと「苦労しないとお金はもらえない」という思い込みがあるんですよね。だからみんな進んでサービス残業をする。でも大事なのは、どれだけ人の役に立ったか、人を喜ばせられたかだけであって、従業員がつらい思いをしてがんばったかどうかなんてお客様にとってはどうでもいいことなんですよ。
バンビ 確かに!
上野 私は今の仕事をしていて、つらかったことが一度もないんですよね。
理姫 じゃあ、このまんまバンドを続けてていいってことですか? ヘラーっとした感じで(笑)。
上野 全然いいと思いますよ? こう言っては失礼ですが、音楽家もマンガ家も作家も、一般的には「虚業」と言われがちな仕事ですよね。でも、それにお金を払ってたくさんの人が楽しんでいる以上、個人的には虚業ではないと思います。「そりゃ音楽がなくなったら困る人はいるかもしれないけど、国が止まることはねえよ」「農業や工業と比べたらそんなもんに価値ねえよ」とバカにする人もいますが、そういう人はおそらく「汗水たらして苦労しないと仕事じゃない」という感覚があるんでしょう。じゃあ、地面に穴を掘って埋めるのを繰り返して汗をかいていれば、それは仕事なんでしょうか? どれだけ人の役に立っているのか、という発想がない人が世の中には多いように思います。アカシックさんがお金をいただいているのであれば、それはバンドに何かしらの感謝をしてお金を払ってる人がいるということ。つまりお二人の仕事は誰かの役に立っているということです。
理姫 なるほどー、勇気付けられます。
上野 逆を言うと、感謝をされないということは穴を掘ってるのと一緒ってことですけどね……。
理姫 イヤー!(笑)
──アカシックはもちろん売れたいですよね?
バンビ そうですね。
理姫 売れたいですよ、ホントに。そして売れるための第1段階としてドラマ主題歌は目標にしてたから、今回主題歌に決まったのは超うれしかったです。「ラブホの上野さん」の続編の主題歌も狙ってるので、「続編やれー続編やれー」って毎日念じてます(笑)。
上野 ドラマ主題歌という目標が叶ったということで、では次の具体的な目標は何になるんでしょうか?
理姫 CMソングを歌いたい。ドラマ主題歌とCMソングは似てるようで、私の中ではけっこう違うんです。バンビは何?
バンビ ああ、同じかな。
理姫 あとなんだろう。あ、「紅白歌合戦」に出たい!
──こういう話をするとアーティストは「日本武道館のステージに立ちたい」「アリーナでワンマンをしたい」みたいに言うことが多いんですが、具体的な夢を「CMソング」「紅白出場」としているのは、大きいステージに立つことよりもお茶の間に知られることのほうに重きを置いているのかなと思いました。
理姫 やっとテレビで自分たちの曲が流れるようになったから、それをしばらく継続させたいんですよ。世間からの見え方って、CDセールスがいくらだとか、そういう数字とはまたは違うなって感じてて。そんなに枚数売れなくても「しょっちゅうテレビで見かけるね」って言われるようになりたいんです。まあ、もちろん「ミュージックステーション」とかに出てるような人はCDもちゃんと売れてるんだろうけど。私はずっとこの世界にいたいんです。この世界から落ちていきたくないんです。それが目標。
バンビ うん、いつまでもテレビに出ていたいよね。
理姫 ライブは好きだけど、ちっちゃなライブハウスをたくさん回ってるので私は全然満足してて、大きい会場でやりたいって気持ちはないんですよ。週2回のライブを数十回とやり続けて、毎回200人の箱が満員になるなら、それは日本武道館で1日やるのと同じくらいの価値があると私は思ってます。それよりライブに来れない人にも、家でお茶を飲みながらでも私の歌が届くような状況が欲しいです。
バンビ 有名になりたいんですよ、とりあえず。親くらいの世代の人でも嵐のことはみんな知ってるじゃないですか。こないだ、うちのお母さんがback numberのことを知ってたんです。自分たちもそういうバンドになりたいなと思いました。音楽を積極的に聴いてない人からも知られてるくらいの知名度が欲しいです。
上野 私は音楽については完全に素人なので「この曲好き」「この曲嫌い」くらいしか言えませんし、CDも買わず音楽番組を観ることもほとんどない人間ですが、きっと今の時代はそういう方が大勢なんだろうなと思います。そういう意味では「CDの売上枚数にはこだわらず、有名になりたい」と言うのは、非常に適切な目標設定なのではないかと思います。
理姫 ありがとうございます。今日は上野さんのお話を聞きながら、ホントにずーっと感心してました(笑)。
バンビ なんか、いい意味で取材を受けてる感じがまったくなくて、純粋に勉強になりました(笑)。
- アカシック ニューシングル「愛×Happy×クレイジー」 / 月刊コミックフラッパー(KADOKAWA)で連載中
- 初回限定盤 [CD] 1296円 / WPCL-13528
- 通常盤 [CD] 1080円 / WPCL-13529
初回限定盤収録曲
- 愛×Happy×クレイジー
- 幸せじゃないから死ねない(single ver.)
- 福富朝陽
- 平成へゴー!
通常盤収録曲
- 愛×Happy×クレイジー
- 幸せじゃないから死ねない(single ver.)
- 平成へゴー!
- 漫画:博士 原案:上野「ラブホの上野さん」 / 発売中 / KADOKAWA メディアファクトリー
- コミック / 555円
- Kindle版 / 514円
- コミック / 555円
- Kindle版 / 514円
- コミック / 594円
- Kindle版 / 550円
- コミック / 594円
- Kindle版 / 550円
- コミック / 594円
- Kindle版 / 550円
FODオリジナル連続ドラマ「ラブホの上野さん」
放送・配信情報
フジテレビ
毎週水曜26:25~
※FOD(フジテレビオンデマンド)にて先行配信中
スタッフ
原作:マンガ「ラブホの上野さん」(原案:上野 / 作画:博士。株式会社KADOKAWA「月刊コミックフラッパー」にて連載中)
演出:日暮謙
脚本:神田優、小鶴乃哩子
企画・プロデュース:野村和生(フジテレビ)、下川猛(フジテレビ)
プロデューサー:澤田賢一
主題歌:アカシック「愛×Happy×クレイジー」
キャスト
上野さん:本郷奏多
中瀬麻衣:松井愛莉
一条昇:柾木玲弥
相川千尋:大沢ひかる
菊池大雅:芋洗坂係長
室田平吉:聡太郎
三田悦子:麻丘めぐみ ほか
アカシック
理姫(Vo)、奥脇達也(G)、バンビ(B)、山田康二郎(Dr)からなる2011年に結成されたロックバンド。耳について離れないキャッチーなメロディと横浜の繁華街で生まれ育った理姫の独特なキャラクターが全面に出た楽曲が特徴。2014年3月に初の全国流通盤ミニアルバム「コンサバティブ」をリリースし、東京・タワーレコード渋谷店の週間インディーズチャートにて1位になる。2015年6月にunBORDEよりメジャーデビューミニアルバム「DANGEROUS くノ一」、2016年3月に初のフルアルバム「凛々フルーツ」を発表。FOD / フジテレビドラマ「ラブホの上野さん」の主題歌「愛×Happy×クレイジー」を1stシングルとして3月にリリースした。
上野(ウエノ)
ラブホテルで勤務するスタッフ。ラブホテル業界の裏話や恋愛のテクニックをTwitterに投稿し、紳士的な口調による、論理的で鋭い切り口のコメントが話題になる。2014年6月に雑誌「月刊コミックフラッパー」で原案を務めるマンガ「ラブホの上野さん」の連載がスタート。このマンガは本郷奏多の主演でドラマ化され、2016年12月よりFOD、2017年1月よりフジテレビで放送されている。このほか、恋愛の話題を中心としたコラムニストとしても活躍している。