音楽ナタリー Power Push - アカシック
夜型バンドが朝型に ポップス作りの秘訣は“健やかさ”
昨年unBORDEからメジャーデビューしますます勢いに乗るアカシックが、初のフルアルバム「凛々フルーツ」をリリースした。このアルバムには全13曲が収められ、それぞれの音楽性はこれまでにないほど多彩。それでいてどの曲もキャッチーなJ-POPに仕上げられており、バンドの懐の深さを感じさせる1枚となっている。
音楽ナタリーではメンバー5人へのインタビューを実施し、カラフルで瑞々しいポップスが詰まった「凛々フルーツ」の制作秘話を聞いた。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 塚原孝顕
サブカルチャーってなんなんですかね?
──フルアルバムを作るのはこれが初めてですが、そこに対する気負いのようなものはありましたか?
奥脇達也(G) 特になかったですね。もしスタッフから「ミニアルバムを作りましょう」って話があればミニアルバムを作ってたし、「2枚組を作りましょう」って言われたら2枚組にしてただろうから。
黒川絢太(B) 今回もこれまでのミニアルバムと同じで、自然にできた曲が集まった作品なので。
──とはいえ今回の作品は、以前までと比べて全体的にとても洗練されていて、意外なほど正統派なポップスが並んでいると感じました。初のフルアルバムということで、これまでの活動を総括する作品になるのかなと思っていたんですが、むしろバンドの新しい側面をアピールする内容だなと。
理姫(Vo) うん、そうですね。
奥脇 聴きやすさは考えながら作りました。前までは常に必殺技を繰り出すような気持ちだったんですけど、今回は奇をてらわずに「どうやったら泣かせられるかな?」「どうすれば楽しい気持ちになれるかな?」って、気持ちよく聴いてもらうことを重視してたので。でも、意識してこのアルバムをそういうコンセプトにしたっていうよりは……。
山田康二郎(Dr) メンバー同士の日々の会話で自然にそうなっていったというか。
Hachi(Key) だね。
黒川 具体的な理由はホントに、別にこれっていうものがなくて。僕らはいつも、どんな作品にしようってことをあんまり決めないで作るから、できあがるものもその時々で違うんです。
理姫 ただ振り返ってみると、昔はあった「私はこういう曲を作らなきゃ」っていう強迫観念がなくなって、あまり無理をしないでリラックスした気分で、生まれてくるままに自然に曲を作れたような気はします。
──「意外なほど正統派なポップス」という僕の感想につながる話だと思うんですけど、いただいたプレス向けの資料でいろいろな著名人がこのアルバムにコメントを寄せているのを読んだら、そこで吉田尚記さんが「アカシックって、なんかサブカルとかそういう匂いを勝手に想像しちゃってて、すいませんでした!」って書いていて、確かにそうだなと思ったんです。今までアカシックは世間的にどちらかというとサブカルという枠に入れられていたと思いますが、このアルバムに“サブカル感”はほとんどない。
奥脇 今までもサブカル感を出そうとは思ってなかったんですけどね。まあ、そう見えたならそう見えたで全然いいとは思うんですけど。
理姫 うん、サブカルって言われるけど、本人たちは全然サブカルチャーのつもりがないので。そもそもサブカルチャーってなんなんですかね? なんか昔はサブカルって呼ばれてた人も「Mステ(ミュージックステーション)」とか出ちゃえばそういうイメージがなくなっちゃうというか……、結局中身の話じゃなくて時代の流れで変わっちゃうものなのかな?って思っていて。
奥脇 確かにね。やってる内容自体がメジャーっぽかろうが、インディーズっぽかろうが、サブカルっぽかろうが関係なく、みんなが「サブカルっぽい」って感じたらそれがサブカルなんじゃないかな?
Hachiが弾いたときに「いい曲だな」って思えた
──「自然にできた曲が集まった」ということは、収録されている曲は全部「DANGEROUS くノ一」の発売後に作ったものなんですか?
奥脇 いや、すごく昔に作った曲もあります。「馬鹿なハスキーエイジ」とか、最後の「夢遊」とか。
黒川 うん。アカシックがまだ始まってない、前身バンドの頃に作った曲です。
奥脇 1曲目の「結婚」も、アカシックを組んだ瞬間くらいの曲だよね?
理姫 そうそう。実は「終電」と同じくらいの時期に作った気がする。
奥脇 むしろ「終電」より先に形になってたかも。で、そのときにバンドにいた人とうまくいかない時期があって。もう何代も前のメンバーなんですけど。
理姫 みんなそっちに気を取られて曲のこと忘れちゃってた(笑)。もうずっと前の人なんですけどね。
奥脇 この曲は別に気に入らないから捨てたわけじゃなくて、ただ存在を忘れてただけなので、「あのときいい曲あった気がするな」って自分の記憶を掘り起こして、今回のアルバムに入れることにしたんです。
理姫 世に出すことができてホントによかったです。
──5年以上前の曲がいくつも入っているというのは意外でした。さっきも話したように、僕は今回のアルバムから「バンドの新しい側面」を感じていたので。
奥脇 僕たち新曲大好きなんで、今までだったらアルバムには新曲ばっかり入れたいと思ってたんだけど、今回入れた古い曲はほとんど忘れてたので、自分でも新曲と同じくらいフレッシュに感じたんですよ(笑)。
黒川 作ったときにスタジオで2回ぐらい演奏してみて「ダメじゃね?」って思った曲でも、時間が経ってもう1回やったらすごくよかったりすることはあるからね。
奥脇 メンバーが変わったことで、演奏が曲に合うようになったのもあるしね。作った当時のキーボードはHachiとは全然違うスタイルだったから。
黒川 「結婚」はキーボードが重要な曲なので、だからこそ、はっちゃん(Hachi)が弾いたときに、「あ、これいい曲だな。アルバムに入れよう」って思えました。
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収録曲
- 結婚
- 8ミリフィルム
- サンデイバージンディアボーイ
- 今日から夜は家にいるよ
- ヨコハマカモメ
- 飴と日傘
- ギャングスタ
- うたかたの日々
- ロリータ
- 華金
- 馬鹿なハスキーエイジ
- 恋は媚薬だなんて冷めるわ
- 夢遊
- アカシック「日本凛々ツアー」
- 2016年5月6日(金)神奈川県 club Lizard YOKOHAMA
- 2016年5月21日(土)愛知県 ell.FITS ALL
- 2016年5月22日(日)大阪府 阿倍野ロックタウン
- 2016年6月11日(土)福岡県 graf
- 2016年6月25日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
※神奈川、愛知、大阪、福岡の4公演はゲストアーティストあり。
アカシック
理姫(Vo)、奥脇達也(G)、バンビ(B)、Hachi(Key)、山田康二郎(Dr)からなる5人組バンド。2011年に結成。耳について離れないキャッチーなメロディと横浜の繁華街で生まれ育った理姫の独特なキャラクターが全面に出た楽曲が特徴。2014年3月に初の全国流通盤ミニアルバム「コンサバティブ」をリリースし、東京・タワーレコード渋谷店の週間インディーズチャートにて1位になる。2015年6月にunBORDEよりメジャーデビューミニアルバム「DANGEROUS くノ一」をリリースし、2016年3月に初のフルアルバム「凛々フルーツ」を発表した。