音楽ナタリー PowerPush - アカシック×ピスタチオ
理姫×伊地知対談 ホステスみたいなボーカリスト、元NO.1ホストの芸人と出会う
ミニアルバム「DANGEROUS くノ一」でメジャーデビューするアカシックが、音楽ナタリーのPower Pushに初登場。バンドがこれからブレイクするためにはどうすればいいのかを考えるため、シュールな“白目漫才”で現在ブレイク直前と言われているお笑いコンビ、ピスタチオの伊地知大樹のもとをボーカル・理姫が訪れた。
水商売風のルックスが特徴的な理姫と、芸人として注目される以前に歌舞伎町のホストクラブでNo.1ホストだったという異色の経歴を持つ伊地知。どことなく夜の香りを漂わせる2人は初対面ながらあっという間に打ち解け、トークは次第に熱を帯びていった。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 笹森健一
この感じはやんちゃしてたでしょうね!
──まずは理姫さんから、自分がどんな人なのか伊地知さんに自己紹介をしてもらおうかなと。恐らく伊地知さんはアカシックのことをご存知ないと思うので。
伊地知大樹 いやいや、大ファンですよ。「プリチー」いいですよね。
理姫 あー! うれしいー! リサーチしてくれてる!
伊地知 ホントにいろいろ聴きましたよ。想像してたのと全然違いました。もっと激しい系だと思ってたんですよ。でもすごくキャッチーで、いいなあと思って。それからもうとりこですね。
理姫 ありがとうございます!(笑) 自己紹介か……。基本的には横浜で毎日飲み歩いてます。最近メジャーデビューが決まってからは控えるようになったけど。
伊地知 あ、かなり飲み歩いてるんだ。僕、地元が神奈川の藤沢なんで、横浜にはちょいちょい遊びに行きますよ。昔はけっこうやんちゃもしてたんですか?
理姫 まあ……ときどき(笑)。
伊地知 してたでしょうね! この感じはね!
理姫 そう言う伊地知さんはどうだったんですか?
伊地知 いやいや私は全然ですよ。人の後ろに隠れて地べた這いつくばってましたよ(笑)。
なんでこんなバンドがしゃあしゃあとライブなんかしてんだ!
伊地知 どうしてバンドを始めたんですか?
理姫 私、女子校に通ってたんですけど、学校帰りにフラフラしてたらギター少年と会って「女の子のボーカルを探してるんだ。お前は背が小さくて声も高いし、ちょうどいいから歌ってくれ」って言われたんです。「暇だしまあいっか」と思って付いていったら、「女ボーカル探してる」って言ってたのに、なぜか歌わされたのがTOKIOの「LOVE YOU ONLY」で(笑)。
伊地知 ふふ(笑)。
理姫 私はそれまで大学受験しようと思って勉強してたんですけど、そのギターの男の子が音楽の専門学校を志望してて、「お前も一緒に行くぞ」って、勝手に私の分の資料とかを全部用意してたんです。「じゃあ、楽だからそっち行っちゃおうかな」って、私も専門学校に入りました。
伊地知 完全に流されてますね(笑)。
理姫 その学校で今のメンバーと出会って、アカシックの前身バンドを組んだんです。それを2~3年やったところで一度解散して、さらに2年くらい経ってからまた集まって今に至る、って感じです。
伊地知 なんで解散したんですか?
理姫 クラブとかで遊びたかったんですよ。
伊地知 そうだよねえ。一番遊びたい時期だもんねえ。
理姫 バンド活動ってすごくお金がかかるんですよ。だから化粧品も買えないし、遊びにも行けないし、買い物もできないしでイヤになっちゃって。で、そこから2年間、お金も使ってさんざん遊んでるうちに、またバンドマンと知り合っちゃったんです。「俺のライブに来いよ」って言うからみんなで観に行ったら、そのバンドがすっごいカッコ悪くて。「なんでこんなバンドがしゃあしゃあとライブなんかしてんだ!」って頭にきて、もう音楽なんて全然どうでもよくなってたのに「もう一度私がやるしかない!」って、なんか思っちゃったんですよね……。
伊地知 あははは(笑)。こんなバンドがやれてるんだったら私にもできるぞ、と。ちなみに遊んでたときって、横浜のクラブに行ってたの?
理姫 横浜の店には行かなかったんですよ。
伊地知 そうなんだ。僕、20歳前後の頃に毎週のように横浜のクラブに行ってたんですよ。club MATRIXとかGASPANICとか、けっこうデカいのがあって。
理姫 うーん、やっぱりいっぱい遊んでますねえ(笑)。
伊地知 昔は、ですよ。若い頃に僕、クラブで30代の人とかサラリーマンとかを見かけると「何このおっさん、いい年してまだこんなとこ来てんのかよ」みたいに思ってたんですよ。で、僕は今30歳なんで、今クラブに行ったら若い子に「このおっさんキモいんだけど」って絶対白い目で見られるんだって思って。それ考えたら怖くてもう行けないんですよ(笑)。
ホストクラブで1位になったら目立つんじゃないかと思って
──ちなみに伊地知さんはなぜホストに?
伊地知 地元の後輩がホストとして売れてまして、新しい店を始めるからホストやらないかみたいなお誘いを受けたんです。そのときはお笑いの仕事が月に1~2本しかなかったんで、「じゃあ時間が空いてるときにやろうか」みたいな感じで始めて。最初は週に1~2日だけ店に出るつもりだったんですけど、いかんせんお笑いの仕事がないんで、気付いたらどっぷりホストになってました(笑)。ホストクラブって、暴力とか派閥とかギスギスしたイメージがあったんですけど、全然そんなことはなく。みんな仲がよかったので、部活みたいな感じですごく楽しくやってましたね。
理姫 でも、朝とんでもないことになってるホストの人、伊勢佐木町でよく見ますよ。お花を持ったまま道で倒れてたり。
伊地知 それたぶんアレよ、死んじゃったのかなと思って、通りがかったおばあちゃんがお花を添えていったのよ(笑)。僕も新人の頃はありましたよ。歌舞伎町で潰れて、気付いたら財布がない、とか。
理姫 ありそうな話ですね(笑)。私は一応女の子なんで、誰かしらがいつも一緒にいてくれるから、そこまでのことはなかったけど。
伊地知 いっつも男をたくさん引き連れて歩いてるのね。さすがだなあ。
理姫 そんなことはないです(笑)。なんでNo.1になったのにホストを辞めちゃったんですか?
伊地知 よく「芸人始める前にホストやってた」みたいに言われたりするんですけど、僕は芸人を始めてからホストをやってたんで。「仕事はなくても自分は芸人」っていう思いが心の中にずっとあったんです。あと僕、お金にあんまり執着がないし物欲もないんです。ただ目立ちたいだけ。No.1になったのも「ホストクラブで1位になったら目立っちゃうんじゃないの?」なんて思って、がんばっちゃった感じですね。
理姫 へー。どうして白目をやり始めたんですか?
伊地知 このネタやる前、普通の漫才とかコントもやってたけど一切ウケなくて、もう解散しようってことになったんです。解散ライブのときに相方(小澤慎一朗)がネタを書いてきたんですけど、そのネタが全然面白くなかったから「やりたくない」って言ったら、相方が「どうせもう解散だからなんでもいいよ」って投げやりになって、僕が本番30分前にバーッとネタを書いたんです。「男なのに妊娠する」っていう意味わかんないネタで、こんなの普通にやってもウケるわけないぞと。そのときたまたま相方の帽子を脱がせたら七三分けになってて、その顔がすごく気持ち悪かったんです。試しに電車の車掌さんのモノマネさせたら、それ見て腹抱えて笑っちゃって。
理姫 ははは(笑)。
伊地知 僕、それまで相方で笑ったことホント1回もなかったんです。なのに僕がこんだけ笑うんだから、客も絶対笑うに決まってるって思って。そしたら相方が「ずるい、そうやって自分だけモテようとしてる」みたいなこと言い出したんで、冗談じゃねえ、じゃあ俺もやってやるぞ、ってことになりまして。2人で変顔やったら今までにないぐらいの笑いが起こったんです。そのとき初めて芸人っぽさを味わいましたね。終わったあと、お互い解散の話がなかったかのように「次のネタ合わせいつにしようか?」って(笑)。
次のページ » 女はみんなデンジャラス
収録曲
- CGギャル
- サイノロジック
- 香港ママ
- 溺愛
- ベイビーミソカツ
- 真夜中のクローンラベル
- 女
- オールドミス
- さめざめ
アカシック「『DANGEROUS くノ一』ツアー」
- 2015年7月12日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
<出演者>
アカシック(※ワンマン公演) - 2015年7月17日(金)大阪府 MUSIC CLUB JANUS
<出演者>
アカシック / フィッシュライフ / LILI LIMIT
アカシック
理姫(Vo)、奥脇達也(G)、黒川絢太(B)により2011年に結成されたロックバンド。横浜の繁華街で生まれ育った理姫の独特なキャラクターが全面に出た楽曲が特徴で、現在はHachi(Key)、山田康二郎(Dr)を加えた5人編成で活動している。2014年3月に初の全国流通盤ミニアルバム「コンサバティブ」をリリースし、東京・タワーレコード渋谷店の週間インディーズチャートにて1位になる。同年10月に2枚目のミニアルバム「プリチー」を発表。2015年にunBORDEよりメジャーデビューし、6月3日にメジャー第1弾となるミニアルバム「DANGEROUS くノ一」をリリースする。このアルバムのリリースツアーとして、7月12日に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブ、7月17日に大阪・MUSIC CLUB JANUSでフィッシュライフとLILI LIMITを迎えた対バンライブを行う。
ピスタチオ
伊地知大樹、小澤慎一朗により2010年に結成された、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いコンビ。特徴的なイントネーションで白目を剥きながらしゃべるという、強烈なインパクトの漫才で話題になる。2014年末に放送されたテレビ朝日系「アメトーーク!」の企画「ザキヤマ&フジモンがパクリたい-1グランプリ」第2回で優勝したことがきっかけとなり、一気に人気芸人の仲間入りを果たす。