ナタリー PowerPush - 赤い公園

まだまだ成長期!

「交信」の歌詞の変化

──ここからは曲の話をしていきたいんですけど。今回のインタビューは「絶対的な関係」のリリースタイミングで公開されるんだけど、2月にリリースされた「風が知ってる」についても聞かないわけにはいかないなと。

津野 ありがとうございます(笑)。

──この曲は「交信」以降を感じさせる名曲だと思うから。

津野 うれしい。

──「交信」は「あの頃の自分」が「今の自分」を救済する曲だったじゃないですか。

津野 そうですね。

──「風が知ってる」のあり方は、その逆で。「今の自分」が「あの頃の自分」を救済しに行く曲だと思った。だから2曲で1曲みたいな感覚さえ覚えたんですよね。

津野米咲(G)

津野 アニメのタイアップ(※「とある飛空士への恋歌」のエンディングテーマ)がありつつ、資料を読ませてもらって、監督とお話した上でディレクターと「エンディングテーマだしゆったりしたテンポのラブソングにしよう」ってことになって。でも、ラブソングを書くのは苦手だからどうしようって思ったんですけど。あとは、この曲で赤い公園というバンドを知ってくれる人がいるのを考えたときに、どういうサウンドでアプローチしたらいいか悩んだんですね。そしたら、結果的に赤い公園のいろんな要素が集合したというか。コード感もそうですし、遅いテンポの中でのリズムの跳ね方とかもすごく独特で。だから、やっぱり説明するのが難しい曲にはなったんですけど(笑)、それはそれでしょうがないなと思って。説明せずとも空気のようにアニメのエンディングテーマとして溶け込むようにできたら、って。でも、ラブソングを書こうと思っても、やっぱりこれまで恋した人が浮かぶわけじゃなくて、結局、自分と自分の話になってきたんですよね。最後のブロックの歌詞で「その体温は僕と風が知ってる」って、「僕が知ってる」と言い切れなかったのは、もうそれこそ「交信」と一緒で、私の中で「助けてくれ」という部分が出たからだと思うんですよ。でも、そう深読みしなければ純粋なラブソングに聞こえるとも思って。

──そうですね。

津野 そういう意味でも今回うまくいったなと思うところは、歌詞の言葉選びがストレートになったところで。

──そこも「交信」以降だと思った。

津野 それは2曲目の「ひつじ屋さん」があったからで。「ひつじ屋さん」の歌詞もストレートなんだけど、ストレートだと気付く人のほうが一聴では少ないと思うんです。

──サウンド的にもね。

津野 そうそう。サウンドの面白さに気を取られて、ストレートだと気付かない。それが私にとって保険になっていて。だから「風が知ってる」もサウンド的には複雑だけど、言葉は簡単でいいと思えたんです。

──ラブソングを書こうとするとやっぱり幼少期の自分自身と対峙せざるを得ないというのも、津野米咲というソングライターの宿命ですよね。

津野 そうだと思います。常に理性の自分と本能の自分がいて。その2つがせめぎあって日々いろんなことを判断してるんですけど。本能の自分は幼いときの心そのものというか。だからもう、自分の彼氏が自分ってことですよね(笑)。全部、自分で自分を助けようとしてる。このラブソングの感じがみんなに伝わったらいいなと思うんですけど。

私たちなりの四つ打ち「絶対的な関係」

──佐藤さんは「風が知ってる」をどう受け止めましたか?

奥から津野米咲(G)、佐藤千明(Vo)。

佐藤 率直にすごく優しい曲ができたなって。あと間奏のマリンバが弦楽器のような鳴り方をしていて。

──この間奏、素晴らしいですよね。

佐藤 大好きですね。

──佐藤さんがこの曲の重みを全面的には受け止めていないからこそ、ボーカルにある種のすごみを出せていると思うんですよ。それが佐藤千明というボーカリストの真骨頂というか。

佐藤 うれしいです。

津野 私もそう思う。ちーちゃん(佐藤)は、重く受け止めたらAメロの1行目から歌い上げちゃいますからね(笑)。

佐藤 歌い上げるよー! 主人公がこの曲の中にいるとして、その人たちの気持ちを考えるのではなく、その人たちを見ているような感じで。

──俯瞰で。

佐藤 そう。

──そのバランスは曲によって違うんですか?

佐藤 違いますね。でも、俯瞰で見る曲のほうが圧倒的に多いです。俯瞰して歌っている自分の歌い方と、演奏の熱のアンバランスさが私は好きで。そのほうが私自身の気持ちも乗るんですよね。無理に気持ちを込めようとか理解しようというのものは、大して乗らない気がする。今はそれを自覚できていて。その上で本を読んだりもしてるんですけど。赤い公園の曲は1曲1曲、根にあるものは同じだとしてもそこにあるドラマや色は全然違うから。そこが楽しいです。

──平歌部分は不穏なムードが強いけど、サビの美しさで一気に救われる。そのカタルシスもいいなって。

津野 今、パッと浮かんだのが、イントロから砂漠に風が吹いてる感じなんだけど、サビで湿度を帯びるというか。だから前半は向かい風かもしれないけど、最後になるにつれて追い風に変わっていく曲だと思います。

──「絶対的な関係」は曲全体がフックみたいな。ドラマのタイアップを契機に、アッパーなサウンドで強烈なインパクトを残すことに狙いを定めてできたと思うんですけど。

津野 まさにそうですね。この曲は自分でもよくできたなと思います。これも1つの挑戦だなって。すごくアッパーだし、歪んでるし、アレンジも面白いんだけど、今まで赤い公園にあったおどろおどろしさがないんですよね。若者たちに聴いてほしい!

──かつてないほど現行のバンドシーンに寄った曲でもあると思うし。

津野 そう。「みんな四つ打ちばかりやりやがって!」と思ってた気持ちを逆手に取って、私たちなりに四つ打ちをやってみたっていう(笑)。ドラマの内容もそうやって思いきれるところがあったので。ドラマのタイアップをどう楽しもうかって思ったんですよ。ドラマを観て、クレジットと一緒にこの曲のイントロがドーン!って流れてきたときに「してやったり!」と思いましたね。狙い通りです。そういうインパクトが欲しかったから。

赤い公園 ニューシングル「絶対的な関係 / きっかけ / 遠く遠く」/ 2014年3月12日発売 / EMI R
初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / TYCT-39014
通常盤 [CD] 1260円 / TYCT-30022
CD収録曲
  1. 絶対的な関係
  2. きっかけ
  3. 遠く遠く
  4. 絶対的な関係(Instrumental)
  5. きっかけ(Instrumental)
  6. 遠く遠く(Instrumental)
初回限定盤DVD 収録内容
  • 「絶対的な関係」MUSIC VIDEO+ドキュメンタリー映像「情熱公園」
赤い公園 ニューシングル「風が知ってる / ひつじ屋さん」/ 2014年2月12日発売 / EMI R
初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / TYCT-39013
通常盤 [CD] 1260円 / TYCT-30021
CD収録曲
  1. 風が知ってる
  2. ひつじ屋さん
  3. POP STAR
  4. 風が知ってる(Instrumental)
  5. ひつじ屋さん(Instrumental)
  6. POP STAR(Instrumental)
  7. めっちゃPON!~わりとPON!~やっぱりPON!(通常盤のみ収録)
初回限定盤DVD 収録内容
  • 「風が知ってる」MUSIC VIDEO+ドキュメンタリー映像「情熱公園」
ライブ情報
赤い公園「絶対的な関係」発売記念イベント「接待的な歓迎」 2014年3月14日(金)
東京都 六本木 ハイサイJr.
  • 【第1回目】START 16:30(集合時間16:20)
  • 【第2回目】START 18:00(集合時間17:50)
  • 【第3回目】START 19:00(集合時間18:50)
<内容>
赤い公園のニューシングル「絶対的な関係」の発売記念イベント。タイトルの言葉遊びから派生して「接待的な歓迎」と称し、メンバー自らファンの皆様を接待させていただく企画です。乾杯あり、トークあり、ゲームあり、笑いあり、涙あり(?)……日頃の感謝とこれからもごひいきいただきたく、スペシャルな空間をご用意します!
赤い公園 フリーライブ 2014年3月16日(日)
東京都 立川タカシマヤ 1階パレスホテル口前広場
  • 1部 16:20~
  • 2部 16:50~
~赤鬼VS藍鬼VS栗鬼~ 2014年3月27日(木)
東京都 LIQUIDROOM ebisu
<出演者>
赤い公園 / 藍坊主 / クリープハイプ
赤い公園(あかいこうえん)
赤い公園

佐藤千明(Vo)、津野米咲(G)、藤本ひかり(B)、歌川菜穂(Dr)からなる4人組。高校の軽音楽部の先輩後輩として出会い、2010年1月に結成される。さまざまなジャンルの音楽を内包したサウンドと、予測不能かつアグレッシブなライブパフォーマンスが魅力。東京・立川BABELを拠点に活動をスタートさせ、自主制作盤「はじめまして」「ブレーメンとあるく」を経て、EMIミュージック・ジャパン(現ユニバーサルミュージック内EMI R)からミニアルバム「透明なのか黒なのか」でメジャーデビューする。しかし津野の体調不良を受け、2012年10月より半年間活動を休止。2013年3月1日活動再開を発表したのち、5月に東名阪で復活ツアーを開催し、8月に1stフルアルバム「公園デビュー」をリリースした。2014年2月にシングル「風が知ってる / ひつじ屋さん」、3月にシングル「絶対的な関係 / きっかけ / 遠く遠く」を発表。なお津野はソングライターとしても高く評価されており、SMAP「Joy!!」の作詞および作曲、南波志帆「ばらばらバトル」の作詞および編曲を手がけるなど活動の幅を広げている。