音楽ナタリー Power Push - AK-69

異ジャンルのゲストを迎えて描く、挑戦者の夜明け

初めてのほっこり系の切り口で書いた「上ヲ向イテ」

──ゲスト参加曲以外に目を向けると、初のテレビドラマ挿入歌となった「Baby」は過去最高にキラキラしてる曲だと思いました。歌詞はどんなことを書こうと思っていたんですか?

パートナーを夜空の星に例えて、お前が一際輝いてるからなっていう曲ですね。単純に、好きな相手と好きなことをして本当楽しいねっていう歌(笑)。あえてそんな深い意味を持たせてないんです。だけど、その様子がちゃんと目に浮かぶような表現にすることと、「ナタリア・ミンドルーのような」とか「今日の気分はJaguar」とか、ヒップホップ的な比喩表現を入れようと思ってました。

AK-69

──それ以外の単独名義曲で印象深い曲は?

「上ヲ向イテ」かな。

──温かくて、かつ、ノスタルジーをくすぐられる印象もある曲でした。

夕方、友達の肩を抱いて「負けちゃったけど気にすんなよ」って言ってるような青春っぽいイメージがありますね。そういう世界観のBボーイバージョンを表現した感じ。

──この曲は従来とメッセージの伝え方が違うなと思ったんです。

そうなんです。今までは「絶対負けるな! 歯を食いしばれ! 何があっても突き進むぞ!」っていう感じだったから。「オメエ何負けてんだよ、オラ行くぞ!」っていう言い方で。

──ビンタして喝を入れるような感じというか(笑)。

そう(笑)。でも、これは「負けることもあるさ。しょうがないよ。でも……」っていう言い方。結局は「さあ、行くぞ」って言ってるんだけど、負けを受け入れてるんです。こういう応援ソング的な歌で、ほっこり系のアンセムはなかったし、こういう切り口は初めてだなと思って書いたんですよね。

俺のオリジナリティが炸裂したアルバムになった

──最後に改めて、今回のアルバムの仕上がりに対する感想を教えてください。

みんなの「たぶんAKはこう来るだろうな」っていう予想をいい意味で裏切ることができたアルバムなんじゃないかと思います。たぶん、みんなが想像するDef Jam一発目は、前回のアルバムのブラッシュアップバージョンみたいなものだと思うんです。だけど「THE RED MAGIC」のときのような勢いとパッションでできあがったアルバムになった。挑戦者ということで自然にそういうところに導かれて、運命的にできた曲が集まって1枚になった感じがしてます。リリースしてみての結果がどうであれ、自分では傑作と思えるものができました。

──それにしても本当に振り幅の広い楽曲が収録されていますよね。2WINとストリートの不良ソングを歌ったかと思ったら……。

10年、20年愛しますと歌って……(笑)。

──さらにキラキラしたラブソングもあって。

でも、一切演じてないですからね。キラキラした曲も歌えて、バラードも歌えて、ゴリゴリのストリートライフも歌って不良をひれ伏せさせられるのは俺にしかできないことだと思うから。ファット・ジョーの参加も俺の人生ありきなんで。金を積んでオファーしたんじゃなく、俺のこれまでのやり方を認めてくれて生まれたコラボだから。そういう意味で、本当に俺のオリジナリティが炸裂したアルバムになったなと思うし、俺の人生から生まれてる。「それって超ヒップホップだろ?」って思うんですよね。

AK-69
ニューアルバム「DAWN」 / 2016年11月23日発売 / Def Jam recordings
初回限定盤 [CD+DVD] / 4104円 / UICV-9215
通常盤 [CD] / 3240円 / UICV-1077
CD収録曲
  1. Dawn
  2. Flying Lady feat. CITY-ACE , HIDE春
  3. Forever Young feat. UVERworld
  4. Streets feat. 2WIN(T-PABLOW & YZERR)
  5. Flying B ~DAWN ver.~
  6. Hangover
  7. Rainy days feat. 清木場俊介
  8. With You ~10年、20年経っても~
  9. Baby
  10. 上ヲ向イテ
  11. もう1ミリ feat. 般若
  12. We Don't Stop feat. Fat Joe
  13. KINGPIN
初回限定盤DVD収録内容
  1. KINGPIN(MUSIC VIDEO)
  2. With You~10年、20年経っても~(MUSIC VIDEO)
  3. Flying B(MUSIC VIDEO)
  4. We Don't Stop feat. Fat Joe(MUSIC VIDEO)
  5. 2016.2.27「NON FICTION~一夜限りのプレミアム・ライブ~」@豊洲PIT LIVE映像
    • Opening~The Cartel From Streets
    • Prologue -The Man They Call Rain Man-
    • The Throne
    • 雨音
    • Click da trigger
    • CROWZ feat. Lil'J
    • You don't care
    • Ding Ding Dong ~心の鐘~
    • IRON HORSE -No Mark-
    • THE RED MAGIC
    • ICU
    • START IT AGAIN
    • Lookin' In My Eyez ~ ロッカールーム -Go Hard or Go Home-
    • Flying B
    • And I love You So
    • IT'S OK
AK-69(エーケーシックスティーナイン)
AK-69

1978年生まれの男性ヒップホップアーティスト。MCおよびラッパーとして活動する際にはAK-69、シンガーとして活動する場合はKALASSY NIKOFFを名乗っている。2004年にKALASSY NIKOFF名義でリリースしたアルバム「Paint The World」を皮切りにソロ活動をスタート。2012年にニューヨークに滞在し、現地のヒップホップ専門ラジオ局「HOT 97」のインタビューを受けたほか、同局主催の野外イベント「Harlem Day」、そして数々のアーティストを輩出したイベント「Who’s Next?」に日本人ラッパーとして初出演を果たした。2014年3月に東京・日本武道館にてワンマンライブを行い成功を収めたほか、翌2015年にはキャリア最大規模となる全国ホールツアーを開催した。ボクサーや野球選手などアスリートたちからの支持も厚く、プロ野球選手の登場曲使用率1位を2014年と2015年の2年連続で記録。2016年1月に「さらなるインディペンデントな活動」を目指して自ら代表を務める事務所・Flying B Entertainmentを立ち上げた。4月にはアメリカの名門ヒップホップレーベルのDef Jam Recordingsと契約を結び、同レーベルからの第1弾作品となるシングル「With You ~10年、20年経っても~ / KINGPIN」を7月にリリース。11月にニューアルバム「DAWN」を発表した。