音楽ナタリー Power Push - AK-69
第2章幕開け エンパイアを築くために
ファット・ジョーとの縁
──2曲目「We Don't Stop feat. Fat Joe」は、ギャングスターをモチーフにしたリリックになっていますが、これはファット・ジョーとのコラボだったからですか?
そうです。今でこそ彼はセレブリティだけど、もともとはブロンクスの超ワルだったんで。同様に、成功してる今の俺しか知らない若い子もいっぱいいると思うけど、俺がどういうところから来た人間かっていうのを改めてこのタイミングで言おうと思ったんです。
──「チェーンはCuban 吹かすCohiba」という一節は、キューバの血が流れているファット・ジョーへの愛とリスペクトを感じるリリックでした。
ありがとうございます。そこは彼のルーツに引っかけてて。そういうメタファーを入れとくのも面白いだろうと。
──そもそもファット・ジョーとは、どんな縁でつながったんですか?
俺がニューヨークに滞在してたときに初めにつながったのがライアン・レズリー(アメリカで活躍するラッパー、シンガー、プロデューサー)で、ライアンのマネジメントを手伝っていたジョンという男がファット・ジョーのマネージャーと昔からの友達だったんです。で、ひさしぶりにジョンから連絡があって、ファット・ジョーが初めてアジアツアーをやると。日本にも行きたいんだけど、いいイベンターはいないかと相談されて。で、知り合いをいろいろたどっていったら、DJ NOBU(a.k.a. BOMBRUSH!)くんが引き受けてくれて、来日ライブができたんです。
──それが去年の8月に東京・Social Club Tokyoで行われた「Blue Magic Special」でのステージだった。
そう。せっかく来日するからプロモーションもしたいということだったんで、日本でのプロモーション先をいろいろ紹介したら、俺のことをとても気に入ってくれて。そしたら向こうも義理を感じて、スタジオに入って曲を一緒に作ってくれる話になって。
──最近も彼の新曲のビデオ撮影のためにニューヨークに行かれたそうですね。
ファット・ジョーがレミー・マーとフレンチ・モンタナとコラボしてる「All The Way Up」っていう曲です。3月にリリースされるので、これから向こうでバズると思うんですけど、そのビデオに出てほしいって言われて。
──すごい話ですよね。
着物をまとった日本人のダンサーも出てたんですけど、そういう人たちと一緒にチラッと出るんじゃなくてしっかり出てるんです。クラブのシーンでも俺1人でカメラに抜かれてるし、歌ってる人間たちしか映ってないメインの場面でも「うしろにAKいてくれ」って言われて、なぜか俺がいますから(笑)。撮影現場にはファット・ジョーの周りのセレブリティやラッパーもいっぱい来てたんですけど、彼がことあるごとに「AK、AK」って言うもんだから、みんな、「こいつ誰だ?」みたいになってて(笑)。「All The Way Up」っていう曲名で、今まで人生であったことを全部巻き込んで俺たちは上がっていくぜっていう曲だからいろんな友達が出てたんだと思うんですけど。
──でも、そうやってつながっていくのがヒップホップらしいですよね。
そう。俺がニューヨークに行ってたときに撒いた種というか、点と点がつながっていって「We Don't Stop」ができ、「All The Way Up」に結び付いた。そういうオーガニックなコラボだったと思います。
自分のエンパイアを作ることが最終的な目標
──以前、DJキャレドやファボラスともコラボしていましたが、海外コラボや海外進出については、今、どう考えていますか?
すげえ勘違いかもしれないけど、ニューヨークに行くたびにすごく可能性は感じます。英語を流暢にしゃべれるわけじゃないけど、もしかしたらどうにかなるんじゃないかな?って思う瞬間はあるから。特に先日行ったときは内容が濃かったんですよ。ファット・ジョーのMV撮影のほかに、Def Jam RecordingsやCash Money Records、Roc Nationのオフィスに行ったりしたんで。
──そうそうたるレーベルに表敬訪問をしてきたんですね。
つながりたくてもなかなかつながれるものじゃないのに、これだけアメリカで受け入れてもらえるっていうことは、やってみる価値はあるんじゃないかなと。後輩のKOHHも向こうで知られてるんですよ。今回の渡航で空港の職員に「日本のラッパーか?」って言われて「そう」と答えたら「KOHHを知ってるか?」って言われて。
──KOHHさんが客演した韓国人ラッパー、キース・エイプの「It G Ma」が、去年、向こうでストリートヒットしましたからね。
そう。だから、トラップとかが好きな若い世代はKOHHを知ってて。意外とアジア人はアメリカでもイケるんじゃないかなって思うし、今後も海外は視野に入れて、何か面白いことをやっていきたいなと思ってます。
──ここから第2章が始まるということで、最後に今後の展望を伺いたいんですが、AKさんって「夢」っていう言葉をあまり使わないんですよね。
夢じゃなくて目標。夢っていうと、なんとなくボヤッとした感じがあって、憧れ的な感じがするんで、目標って言うほうが好きなんです。
──では、これから実現させたい目標は?
今は自分のプロジェクトを第一に考えてますけど、ゆくゆくは自分以外のアーティストのプロデュースとか、シーン全体の底上げになるような活動をFlying B Entertainmentでやっていければと思ってます。今って一度去ったヒップホップブームがまた来るのを待ってるような状況だと思うんです。その中でKOHHとかが出てきたけど、周期が来るのを待つんじゃなく、自分たちで仕組みや土台を作って、ブームを生み出していきたいなと。そういうことをやっていくためにも自分が采配を振るえる会社がないと難しいなと思って独立したところもありますし、今はまだ言えないですけど、目指すはとあるレーベルの社長の椅子。インディペンデントな俺がその椅子に着座したら痛快だと思うので。そうして自分のエンパイアを作ることが最終的な目標ですね。
- ニューシングル「Flying B」/ 2016年2月24日発売 / Virgin Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / POCS-39002
- 通常盤 [CD] / 1080円 / POCS-39005
CD収録曲
- Flying B
- We Don't Stop feat. FAT JOE
- Rolls-Royce, Diamonds, Bixxhes -REMIX- / BCDMG
初回限定盤DVD収録内容
- Beginning of Flying B
- Flying B -Music Video-
- Ending
- 69's Prank Show
- AK-69 2016 ZEPP TOUR
- 2016年6月10日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2016年7月2日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2016年7月18日(月・祝)大阪府 Zepp Namba
AK-69(エーケーシックスティーナイン)
1978年生まれの男性ヒップホップアーティスト。MCおよびラッパーとして活動する際にはAK-69、シンガーとして活動する場合はKALASSY NIKOFFを名乗っている。2004年にKALASSY NIKOFF名義でリリースしたアルバム「Paint The World」を皮切りにソロ活動をスタート。2012年にニューヨークに滞在し、現地のヒップホップ専門ラジオ局「HOT 97」のインタビューを受けたほか、同局主催の野外イベント「Harlem Day」に出演した。2014年3月に東京・日本武道館にてワンマンライブを行い成功を収めたほか、翌2015年にはキャリア最大規模となる全国ホールツアーを開催した。ボクサーや野球選手などアスリート達からの支持も厚く、プロ野球選手の登場曲使用率1位を2014年と2015年の2年連続で記録。2016年1月に「さらなるインディペンデントな活動」を目指して自ら代表を務める事務所・Flying B Entertainmentを立ち上げた。同年2月にシングル「Flying B」をリリース。