音楽ナタリー Power Push - AK-69
第2章幕開け エンパイアを築くために
魂が乗った言葉が合う曲調を目指した
──新曲「Flying B」は、いつ頃、どんなコンセプトで書いたんですか?
独立を決めてから書きました。「AKは儲けを取ったからインディーズにいるんだ」みたいなことを言われるんですけど、それは逆なんですよ。インディーズで売れたら儲かるかもしれないけど、その代わりムチャクチャ売れづらいからっていう。今、俺が選んだ道も、成功したら思い描いてるビジョンがさらにデカいことになるけど、こういうのは成功しない確率のほうが高いわけで。それに伴う恐怖とかストレス、いろんなネガティブをここにきてもう1回背負うっていう。そこで生まれる感情をつづりたいなと思って書いたんです。
──トラックは、「雨音 feat. LA BONO」「It's OK feat. AI」「And I Love You So」「START IT AGAIN」といったAKさんの代表曲を数多く手がけているRIMAZIさんによるものですね。
RIMAZIは、「THRONE」の制作時には音楽界から少し離れてたんです。だけど、このタイミングでRIMAZIの音が欲しいと思って。そしたらRIMAZIのほうも「音楽界に戻るんだったら、筋を通して俺に一番に話をしたい、復活の第1作はAKさんでやりたい」って言ってくれてて。それで俺と何回もディスカッションして、1からトラックを作っていったんです。
──サウンド面でAKさんの中で思い浮かべていたイメージは?
力強さもあるんだけど、悲しみとか憂いとか、そういう影の部分もあって……さらに壮大なものっていう感じでした。本当にアンセムって言えるような曲にしたかったんですよ。アンセムや応援歌は日本の音楽界にいっぱいありますけど、ほとんどがただのトーキングシットというか、言葉が軽いと思っていて。「がんばれ」とか誰でも言える言葉だから、俺は使ったことがないですけど、本当の意味で覚悟を決めてる人間が言うのと、口だけで言ってる人間が言うのでは言葉の重みが違うと思うんです。それが言霊だと思うんですよね。そういう俺の今の魂が乗った言葉がバッチリ合う曲調。そこを考えて作っていきました。
──サビの歌メロも、今回はエモーショナルに歌ってますよね。
今回はストレートにやろうと。Auto-Tuneなどで声を加工せず、湧き出た魂の叫びを表した曲にしたかったんです。ある意味、原点回帰みたいなところもありますね。「THRONE」までは、自分がカッコいいと思うアメリカのヒップホップのようなフロウを先に作っておいて、そこに言葉をハメていく書き方をしてたんですよ。だから、自分から出てきた言葉をちょっと加工して、カッコいいと思うものに近付けていく作業をしてたところがあるんです。でも、これは自分から素直に出た言葉。まさに降りてきた感じでフロウと言葉が同時に出てきたし、それをそのまま閉じ込めた曲になりました。
──「Flying B」のBは、B-Boy、Bad Boy、B級のBだということがリリックを読むとわかります。歌詞には「散々B級扱い」という言葉も出てきますが、AKさんってアンチが多かったり、そういう扱いを受けたりすることがありますよね。
それってしょうがないと思ってるんです。出る杭は打たれるみたいなもんだと思ってるし、ヘイターたちがいることはわかってても気にならない。俺が思う「B級扱い」っていうのは、例えばテレビに出ていったときに、丁寧に接してくれるところもありますけど、「よくわかりません。誰ですか?」的なこともあったりするんです。そういうときのほうが「覚えとけよ」みたいに思うんですよ。
──悔しさ倍増みたいな。
そう。昔は武道館まで行ってるアーティストは一流みたいな感じだったけど、いざ自分がやっても一流扱いされねえし、みたいな。そういうところで「やってやっからな」って思いますね。最近は大きなフェスにも出してもらえるようになってきましたけど、まだメインステージじゃなかったりする。しょうがないんですよ、メインステージに出てる人たちはさらにすごい人たちばかりなので。でも、「わかってっけど、悔しい!」「俺はまだ全然一流じゃねえ。まだまだ中途半端だな」って思うんですよ。出自に対しても思いますね。俺は大きな事務所で磨かれてきたサラブレッドじゃないですから。本当、泥臭いところから這い上がってきたんで。そういうところで俺のハングリー精神がたきつけられるんですよね。
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- ニューシングル「Flying B」/ 2016年2月24日発売 / Virgin Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / POCS-39002
- 通常盤 [CD] / 1080円 / POCS-39005
CD収録曲
- Flying B
- We Don't Stop feat. FAT JOE
- Rolls-Royce, Diamonds, Bixxhes -REMIX- / BCDMG
初回限定盤DVD収録内容
- Beginning of Flying B
- Flying B -Music Video-
- Ending
- 69's Prank Show
- AK-69 2016 ZEPP TOUR
- 2016年6月10日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2016年7月2日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2016年7月18日(月・祝)大阪府 Zepp Namba
AK-69(エーケーシックスティーナイン)
1978年生まれの男性ヒップホップアーティスト。MCおよびラッパーとして活動する際にはAK-69、シンガーとして活動する場合はKALASSY NIKOFFを名乗っている。2004年にKALASSY NIKOFF名義でリリースしたアルバム「Paint The World」を皮切りにソロ活動をスタート。2012年にニューヨークに滞在し、現地のヒップホップ専門ラジオ局「HOT 97」のインタビューを受けたほか、同局主催の野外イベント「Harlem Day」に出演した。2014年3月に東京・日本武道館にてワンマンライブを行い成功を収めたほか、翌2015年にはキャリア最大規模となる全国ホールツアーを開催した。ボクサーや野球選手などアスリート達からの支持も厚く、プロ野球選手の登場曲使用率1位を2014年と2015年の2年連続で記録。2016年1月に「さらなるインディペンデントな活動」を目指して自ら代表を務める事務所・Flying B Entertainmentを立ち上げた。同年2月にシングル「Flying B」をリリース。