相沢梨紗|喜びと不安を胸に、憧れていたアニソンの世界へ

活動を積み重ねてたどり着いた今の場所

──「新月のダ・カーポ」のアレンジはストリングスにすごく力が入っていて、素晴らしいですよね。

本当にすごい気合いの入りようですよね。私も初めて聴いたとき、びっくりしちゃいましたもん(笑)。ミュージックビデオの撮影にもストリングスの皆さんが来てくださって、その場で実際に演奏していただいたんですよ。私も歌いながら撮影してもらったら、めちゃくちゃ気持ちよくて(笑)。自分1人の力で歌っているのではなくて、「皆さんが音に対してこだわりを持って、いろんな方が知恵と愛情を注いでくださったからこそ、この1曲ができているんだな」と実感しました。

──MVは、でんぱ組.incでこれまでやってきたようなカオスな雰囲気の作品とはまた違っていて。「わ、アニソンシンガーのMVだ!」という印象でした。

憧れていたようなシーンがたくさん詰まっていて、「夢が叶った‼︎」という気持ちです(笑)。でんぱ組.incのMVはストーリー仕立てのものやシュールな作品が多くて、作り手のメッセージを受け取るのに読解力が必要だったりするんですけど、「新月のダ・カーポ」のMVはシンプルに曲のよさを引き出してくれていて。暗くて寂しい新海のような夜から始まって、最後は大空の下、開放感のある大草原で歌うという流れは自分で観ていてもすごく気持ちいいし、元気が出ます。

──楽曲の制作陣やMV撮影のスタッフなど、いろんな人の力が1つになってアニソンシンガー・相沢梨紗が形作られているんですね。

本当にその通りだと思います。10年近くでんぱ組.incをやっていて、その間も「アイカツ!」で歌唱を担当させてもらったり、本当にいろんな方と一緒にお仕事させていただいて。そういった方々に私の成長を認めてもらえたというか、「諦めないでやっていきたい」という気持ちを汲んでいただけたからこそ、今回のソロデビューがあるんだと思います。1つひとつの活動を積み重ねて、こうして今の場所にたどり着けたのが本当にうれしいです。

神々のコラボによる神曲

──カップリングの「運命論アイドリング」は、表題曲とはまた違う相沢さんの一面が見える楽曲になってます。

相沢梨紗

実はシングルの制作が決まったときに「カップリングはどんな曲がいいですか?」とスタッフに聞いていただけて。それがすごくうれしかったんですよ。「新月のダ・カーポ」は聴いてる人の背中を押してあげるような曲だったので、カップリングは癒しを与えられるような、聴いていて温かい気持ちになれるような曲にしたいと思いました。私はくくると風花を見ていると、胸がキュンとして温かい気持ちになるんですけど、私やでんぱ組.incを応援してくださっているファンの方にもずっとそういう思いを抱いてきたので、そんな気持ちを表現できるような曲になるといいなって。

──ランティスからのソロデビュー作で、楽曲提供者が伊藤真澄さんと畑亜貴さん、なんてアニソンファンからしたらご褒美みたいな話ですよね(笑)。これも相沢さんの希望なんですか?

そうなんですよ(笑)。ずっと伊藤真澄さんのアニソンが大好きだったので、ダメ元で「お願いできないですかね……?」と言ったら、まさかのOKをいただいて。その時点で驚いていたのに、「作詞は畑亜貴さんにお願いしてもいいでしょうか……?」と言ってみたら、そちらも引き受けてくださって。「私、運を使い果たした?」みたいな(笑)。それくらい、びっくりするようなタッグが実現してしまいました。わがままを言わせてもらったら、神々のコラボによる神曲ができちゃいました(笑)。

──曲調も歌い方も表題曲とは全然違うので、結果的にアニソンシンガーとしての幅の広さをプレゼンしているかのようなシングルになっていますよね。

「こんなのも歌えますよ?」みたいな(笑)。この曲の歌い方に関しては、「かわいいだけではなくて、まっすぐすぎる女の子のちょっぴり怖い部分がスパイスとしてあるといいかもね」という話を、もふくちゃん(福嶋麻衣子。でんぱ組.incのプロデューサー)としていて。細かいしゃくりの部分なども微調整しながら作っていきました。表題曲と対照的な曲ではあるけど、どちらも不思議な世界観で統一された作品になっていると思います。

世の中に自分が2人いるような感覚

──「新月のダ・カーポ」はアニメのストーリーに余韻を残すエンディングテーマとしての効果がしっかり発揮されたバラードになりましたが、「次はオープニングテーマを歌ってみたい」といった思いもありますか?

オープニングテーマや劇場版アニメの主題歌も歌ってみたいですね。オープニングにはオープニングの難しさがあるだろうし、劇場版の主題歌なんてまったく勝手が違うと思いますけど、できる限り挑戦していきたいです。

──でんぱ組.incのリーダーとしての展望とは別に、アニソン歌手として、これからやってみたいことや思い描いているビジョンはすでにある?

相沢梨紗

でんぱ組.incが初めてフェスに出たときに、アイドルがロックフェスに出るということでけっこうびっくりされたんですけど、それと似たような感じで、アイドル活動とアニソン歌手としての活動を併行して行うこと自体がわりと「えっ!」ってことだと思うんですよ。ただ、でんぱ組.incとしてがんばっている相沢梨紗と、アニソンを歌っている相沢梨紗は、自分の感覚としてはまったくの別人で。すごく勝手な妄想ですけど、世の中に自分が2人いるような感覚で活動していけたらいいなと(笑)。「でんぱ組.incとして出たフェスに、次の日は相沢梨紗として出る」みたいなこともやってみたいですし。あとは、アニソンのフェスが憧れの場所なので、そういうステージに立ちたいという思いもあります。

──まったく別の人間として活動するとなると、シンプルにかなり忙しくなりそうですけど、そこに不安はないですか?

私は暇が苦手なんですよ。少しでも暇な時間があると「私は世界に必要とされてないんじゃないか」と思っちゃうんです(笑)。忙しければ忙しいほどうれしいくらいなので、なんでもやりますよ!(笑)

──年々活動が多岐にわたり、どんどん忙しくなる中で、オタクとしての自分はどうやってキープしているんですか? それこそアニメを観る時間も昔に比べたら少なくなったでしょうし。

意地でも観てます。アニメを観ないで寝るよりも、寝ないでアニメを観た方が次の日も元気なんですよ(笑)。今は移動しながらでも観れますし、昔よりオタ活しやすくなったと思います。生きていくうえで必要不可欠な要素の1つなので、アニメを観る時間がなくなったら困りますね。

──先ほど名前が挙がった田村ゆかりさんや坂本真綾さんもそうですけど、声優系のアーティストの方は皆さんバイタリティがすごいですよね。年齢を重ねながらどんどん強くなっているというか。相沢さんもついにその領域に足を踏み入れたのかもしれないですね(笑)。

歳を重ねるにつれて、世界の見え方は変わったかもしれないです。自分はもともと、物事をオーバーに捉えがちだったんですけど、大人になるにつれて捉え方をコントロールできるようになってきて。「世の中には不思議なことや楽しいことで満ちあふれているんだ」と思えるようになったので、そのぶん毎日たくさんの刺激を受け取ってます。

──それこそ先ほどお名前を挙げたような、憧れていたアーティストと共演することもあるかもしれないですし、これからが楽しみですね。

共演かあ……憧れの方と一緒にステージに立つなんてことになったら、壊れてしまうかもしれない(笑)。でもいつかは憧れている皆さんの視界に入ってみたいです。さっき、坂本真綾さんのお名前を挙げさせていただきましたけど、坂本真綾さんと菅野よう子さんのタッグがすごく好きなので、いつか目の端でいいので菅野さんの視界に入り込みたいです(笑)。

相沢梨紗

衣装に詰めこまれた、アニソンシンガー・相沢梨紗の“大好き”

「梨紗ちゃんが好きなものをすべて詰め込んだらこうなりました」というような衣装ですよね(笑)。私は何も希望などは言っていないのに、私の“大好き”が形になったような衣装で驚きました。ゴシックロリータな雰囲気とかシンメトリーの袖とか胸のアクセサリーとか、好きな要素が詰まっているので、着ていてすごく息がしやすい(笑)。特に気に入ってるのは手の指の飾りです。まるでクラピカさん(マンガ「HUNTER×HUNTER」の登場人物)のジャッジメントチェーンのようで、めちゃくちゃカッコいい。どうしてこんなアクセサリーが思いつくんだろう(笑)。

相沢梨紗(アイザワリサ)
相沢梨紗
8月2日生まれ、大阪府出身。アイドルユニット・でんぱ組.incのリーダーで、担当カラーは白。2009年6月にでんぱ組.incに加入し、2010年2月にシングル「Kiss+kissでおわらない」でメジャーデビューした。2021年10月にテレビアニメ「白い砂のアクアトープ」の2期エンディングテーマを表題曲とした初のソロシングル「新月のダ・カーポ」を発表し、念願のアニソンシンガーとしてのデビューを果たした。