一周してドロドロした恋愛を歌いたくなってる

──「マリーゴールド」がストレートなラブソングなので、カップリングの「あなたのために」は意識的にエッジの立った曲にしたんですか？

「マリーゴールド」のことをそこまで意識したわけではないです。歌詞にはJITTERIN'JINNの「プレゼント」に通ずる怖さがあるかも（笑）。この曲を書いたのは2年前なんですよ。だからちょっとピリッとしてるのかもしれない。ドロドロしてると言うか。でも実は自分の中では一周してて、最近またこういう感じの曲を書く周期になってる。

──以前よりは客観的になったということですか？

と言うより、単純に大人っぽい恋愛を歌いたいときと、ドロドロした恋愛を歌いたいときが定期的にやってくるんですよね。

──この曲はさんざん「あなたのため」と言いながら、最後に「自分のため」と手のひらを返しますよね。

「今日の芸術」という曲でも歌っているんですけど、私は「○○のため」と行動するたいていのことは、自分のためだと思っていて。誰かに優しくすることも、結局自分がいい人に思われたいからだし。優しさを自覚しちゃったら、その時点でピュアな優しさとは言えない。他人からいいやつって思われたいだけなのかなって。自分でもひねくれてるなあとは思います（笑）。

いい音楽を作って歌う人でありたい

──あいみょんさんは「時代の代弁者」と言われることに対して、どう感じていますか？

言ってもらえるのはありがたいけど、私が時代を代弁するなんておこがましいですよ。いつも「私はこう思うけど」くらいの感覚で発言してます。私自身は自分の発言が正解だとは思ってませんし。むしろ「私なんかが代弁者だったらこの世の中終わってんで」とか思っちゃう（笑）。

──達観してますね。大人っぽいと言うか。

単純に私も大人の一員ですから。だから私は自分の周りに大人が付いてるって思われたくない。私が大人として考えて、周りの人たちと一緒に行動してるというだけなので。

──あいみょんさんは自分のどういうところが支持されていると思いますか？

周りがどう思っているかは別として、私自身が大事にしてるのは歌詞ですね。いろんな人に刺さってほしいと思っています。私にとって作詞はものすごく短い小説を書いているような感覚なんです。起承転結のある歌詞が好きで、今回の「マリーゴールド」も、2番の「ああ アイラブユーの言葉じゃ足りないから」というところから物語が動き出すんですよね。どうしても1番は物語の設定を説明している感じになりがちで、これまで書いてきた曲も2番から物語が展開することが多いんですよ。なので私のことを好きだと思ってくれる人たちにはぜひフルで聴いてもらいたいですね。

──最近は音楽業界も自主規制が激しいですけど、そんな中であいみょんさんは本音を言ってる感じがすごく伝わってきて、そこが若い人に支持されてる理由じゃないかと思ったんです。

もちろん歌っていることすべてが本音というわけではないですよ。だけど、自分の中から出てきた、自分の歌いたい曲だけを作っているのは確かです。生まれてくるものはいつもナチュラルです。私はただ自分の楽曲を残していきたい。ずっとずっといい音楽を作って歌う人でありたいと思っています。

──最後に、あいみょんさんが活動していくうえで大事にしていることを教えてください。

無理をしないこと。作曲を自分にとっての義務にしたくないんですよ。だから私はこの活動を「仕事」と呼びたくない。エンタテインメントが仕事なんて、夢が壊れる。だから私は曲を作って歌うことを仕事ではなく活動と言うようにしてます。義務にしたくないから、作詞作曲も無理にはしない。できひんときは寝ればいいって思っています。体力的な無理はできるけど、精神的な無理はよくない。それで終わってしまうバンドもたくさんあるし。できないことはできないでいいやって思うようにしています。