Keyword 4:10代
──あいみょんの音楽への目覚めは10代の頃ですが、音楽を好きになるまではどんな10代を送っていたんですか?
小学生の頃は近所の友達と「コマネチ!」とか言いながら走り回ってたり、アニメの「ボボボーボ・ボーボボ」が大好きで、その絵を描いて前の席の子の背中にこっそり貼って先生に怒られたりしていました。中学では陸上競技部に入って、部活一筋でした。学生時代で一番楽しかったのって中学2年生の頃で、今でも仲いい地元の友達はみんな中学校の同級生です。勉強はダメダメでしたけど、部活はほんまに一生懸命やって最終的には副部長にまで上り詰めました。
──中学生の頃にアメリカ人の英語の先生からアコースティックギターをもらって、本格的に音楽活動を始めたんですよね。
そうなんです。ブレントって言うんですけど、その先生がYAMAHAのアコースティックギターをくれなかったら、今音楽をやってないと思います。10代で一番大きかった出来事はブレントからギターをもらったことだと言い切れますね。
──カップリング曲の「MIO」は15歳の頃に友達に書いた曲だとか。
そうなんですよ。タイトル通りミオっていう友達がおって、その子のことを書いた曲です。インディーズの頃に出した「分かってくれよ」っていう曲があって、ミオはその曲の中に出てくる男の子の彼女。自分の中では「MIO」は「分かってくれよ」のアンサーソングみたいなものだと思っています。この曲ができてからは、公園でミオと「○○ちゃん」って曲のもとになった子と3人でよく歌っていました。2人にはすごく懐かしい1曲だと思うので聴いてもらいたいですね。
Keyword 5:エゴ
──「MIO」や「○○ちゃん」もそうですけど、あいみょんは誰かに向けた歌が多くて、自分のエゴをあまり歌わないイメージがあります。
エゴはあんまり出さないですね。意識してるわけじゃないんですけど、言い切ってしまうような書き方は自然と避けてるのかもしれないです。そうすることでみんなへの共感を求めてるのかもとは思います。自分の歌詞と向き合うたびに自分にはロックの魂はないなと感じますね。ロックってエゴをガッツリ乗せるものじゃないですか。言い切るカッコよさというか。あ、でもフォークもそうですね。さだまさしさんの「関白宣言」とかすごいエゴの塊(笑)。私が書くメロディはフォークを感じるものが多いと思うんですけど、作詞に関してはフォーク感はあまりないと思います。私は歌詞にストーリー性を持たせることを大事にしてるというか、そういうほうが書きやすいんですよ。
──エゴを出す人への憧れはありますか?
もちろんありますよ。カッコいいなと尊敬します。この前、高橋優さんのライブを観に行ったんですけど、彼は政治のことや社会情勢に訴えかけるような内容の歌詞も多いと思うんですけど、ほんまにライブを観ていてカッコいいなと思って。でもエゴっていうのは自然と出るものなので、私はそうじゃなくてもいいんじゃないかなと思っています。
Keyword 6:死
──あいみょんはYahoo!ニュースをチェックするのが日課なんですよね。
そうなんです。とにかく「今何が起きているのか?」が気になるんですよね。この前テレビを見ていたら平成に起きた事故や事件の中で報道回数が多いニュースが紹介されていたんですけど、1位はやっぱり東日本大震災でした。私が生きてる時代に起きた事件は知っておきたいなと思っています。だからほんまにちょっとしたことでもニュースが気になって仕方ないんですよ。
──目をつぶりたくなるような現実もあると思うんですが、そういうものもあいみょんはちゃんと見ていきたいですか?
はい、全部見ていきたいです。悲しいニュースを見て、私がテレビの前で泣いたって何かが変わるわけじゃないんですけど、そういう悲しい思いをしてる人と何か共有できるものがないのかなとついつい考えてしまうんです。ここまで他人の死に対して苦しくなる私は、自分の家族が亡くなったらってどうなってしまうんやろうって思いますね。いつも死について考えると、自分の家族を亡くさないためには自分はどうしたらいいのかっていう考えに至ります。具体的に言うと、実家を早く耐震工事しないと、とか。
──シングルカップリングの「ハッピー」は亡くなった人を送る歌ですよね。
家族、友達、ペットとか大切な人が亡くなったときを思って書いた曲です。今回そのターゲットになったのはおばあちゃんなんですけど、まだ元気でピンピンしてます(笑)。でもやっぱり死っていうのはいつ訪れるかわからないものだなと思うんですよ。この前テレビでやっていた熊本地震で被災した方たちのドキュメンタリーを観ていたら、21歳の男性が唯一生存確認ができていないっていう話を番組で特集していて。東日本大震災の印象が強くて、熊本地震の話って少し埋もれがちだと思うんです。被害者は東日本大震災より少ないかもしれないですけど亡くなっている人がいるっていうのは事実じゃないですか。急に命を失った人がそこにもいたことを意外とみんな知らんのやろうなとか考えちゃいますね。
Keyword 7:ラブソング
──日本の音楽全般に言えることだと思うんですけど、やっぱりラブソングって多いですよね。あいみょんはラブソングをどういうものだと捉えていますか?
生きている人全員に響くジャンルの歌なんじゃないかなと思いますね。で、曲を書く側としても、年齢を重ねるごとに好きなもの、愛しいものの順位が自分の中で変わっていくので、ほんまにネタが尽きない。唯一書き続けることができるテーマなんやないかなと思います。私は自分の恋愛の経験をラブソングにすることがイヤで避けていた時期もあったんですけど、昔の曲をあとあと聴いてみたら全部自分のことやったなって思ったんですよ。結局女性は恋愛体質なところがあると思うので仕方ないなって割り切りました(笑)。あとラブソングの面白いなと思うところは失恋したときに失恋ソングを聴いて自分をとことん落としたりできるところ。それで「すっきりしました」って言ってくれる人もいるし。最初のほうで話しましたけど、男性の歌う曲、特にラブソングは胸に刺さるんです。具体例を挙げるなら、浜田省吾さんの「もうひとつの土曜日」はほんまにすごい歌やと思います。
──これからも恋愛の歌を歌い続けたいですか?
そうですね。あとラブソングの魅力って書き続けられること以外にもあるんです。ラブソングって照れくさいからかけっこうみんな遠回しな表現をするじゃないですか。例えば浜田省吾さんは「もうひとつの土曜日」で泣いていることを「瞳ふちどる悲しみの影」って表現するんですよ。ものすごくロマンチックな表現だけど、中身が誰しも経験したことあるようなことなので、なんとなくその状況が伝わってくるんですよね。そういう素敵な表現ができるのもラブソングならではなのかなと思っています。
──最後に、あいみょんの恋愛観も教えてください。
私はめっちゃ一途ですね。お父さんは父親像としては完璧なんですけど、人としてはちょっと無口すぎるなと思います(笑)。恋愛も自分の興味があることの1つで、その延長線にある結婚にも興味がありますね。婚姻届出すときどんな気持ちなんやろうとか、2人で人生を歩むってどういう感じなんやろうとか。まあまだ結婚について考える歳でもないんですけど、でも興味があることにはどんどんチャレンジしていきたいと思っています。
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あいみょんへ“愛を伝えたい”6組からのコメント
- あいみょん「愛を伝えたいだとか」
- 2017年5月3日発売 / unBORDE
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[CD]
1080円 / WPCL-12606
- 収録曲
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- 愛を伝えたいだとか
- ハッピー
- MIO
- “愛を伝えたいだとか” SPECIAL LIVE
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- 2017年5月2日(火)東京都 UNIT
OPEN 19:00 / START 19:30
- 2017年5月2日(火)東京都 UNIT
- あいみょん
- 兵庫県西宮市出身のシンガーソングライター。歌手を夢見ていた祖母や音響関係の仕事に就いている父の影響で音楽に触れて育ち、中学時代にソングライティングを始める。2015年3月に発表したタワーレコード限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、同年「tamago」「憎まれっ子世に憚る」という2枚のミニアルバムを発表した。2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でワーナーミュージック内のレーベルunBORDEよりメジャーデビュー。2017年5月にメジャー2ndシングル「愛を伝えたいだとか」をリリース。