Aimerが6作目のオリジナルアルバム「Walpurgis」をリリースした。このアルバムにはテレビドラマ「あなたの番です」の主題歌「STAND-ALONE」、劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」の最終章主題歌「春はゆく」といった4曲のリードトラックのほか、「春はゆく」を手がけた梶浦由記による書き下ろしの新曲「wonderland」など全14曲が収録される。
中でも新機軸と言えるのが、20歳のマルチアーティストVaundyが楽曲制作とプロデュースを手がけた「地球儀 with Vaundy」だ。今回音楽ナタリーでは、AimerとVaundyの対談を実施。互いをリスペクトし合う2人が、制作時のエピソードや、コラボレーションを通して知った互いの魅力などをじっくり語ってくれた。
取材・文 / 廿楽玲子
まさかこんなに早く叶うとは
──VaundyさんはずっとAimerさんの歌をお聴きになっていたそうですね。
Vaundy ホントにずっとなんですよ。聴き始めたのは小学生の頃で、出会いのきっかけはガンダムUC(「機動戦士ガンダムUC[ユニコーン]」)の主題歌「RE:I AM」でした。僕はアニメが好きで、中でもガンダムが大好きなんですけど、戦いの最中にAimerさんの歌声が聞こえてくると「おおおカッケー‼」って感動するんです。その後も、いい作品だなと思うアニメでいつもAimerさんの歌が流れてくるから、やっぱりすげえ人だ!と思ってました。
Aimer ふふふ、うれしいです(笑)。Vauくん(Vaundy)とは今回私のニューアルバムに入っている「地球儀」のレコーディングで初めてお会いしたんですけど、最初に顔を合わせたときにVauくんのテンションが上がってくれているのがわかりました。「小学生のときから聴いてました」と言ってくれて、すごくうれしいと思うと同時に、小学生の頃から聴いてくれてる子がもう20歳になってるんだという衝撃も大きかったです。あのとき、いろんな話をしたよね。
Vaundy しましたね。僕がAimerさんに憧れて、しょっちゅう真似して歌ってた話とか。そういえば最近、昔歌った「蝶々結び」とかの音源が出てきて。
Aimer えーっ、それ聴きたいです!
Vaundy Aimerさんを超えるシンガーはそうそういないと思うので、一緒に仕事したいとずっと思っていました。まさかこんなに早く叶うとは思ってなかったですけど。
Aimer 泣けてきました……こんなに才能のあるアーティストにそう言ってもらえて本当に幸せです。私がVauくんの音楽に出会ったのは去年の夏頃。歌も音楽性も新しくて、しかもまだ20歳だというので、これはいったいどうなってるんだ⁉と思いました。Vauくんの音楽は洋楽的な響きがあるんですよね。それを日本語で歌いながら追求するのはすごく難しいことなのに、さらっとやってのけているから、どんな人なんだろう、会いたいなと思ってました。
Vaundy めちゃくちゃうれしいです!
Aimer 初めて音源を聴いたときの衝撃もすごかったけど、生の歌声も衝撃的でした。今回のレコーディングでVauくんが歌い出したとき、その声の破壊力がすごくて。声質もいいし、リズムの取り方も抜群で。
Vaundy やばい、にやけちゃう(笑)。
歌でわかり合えるのがうれしかった
──VaundyさんはAimerさんに楽曲を提供するにあたって、「新しいAimerさんを皆さんに提供したい」という思いがあったそうですが、それは具体的にどんなイメージだったのでしょう?
Vaundy Aimerさんから楽曲制作のオファーをいただいたとき、これまでAimerさんの音楽にはあんまり横ノリのイメージがなかったので、横ノリの曲を掛け合わせたらもっと新しい魅力が見えるんじゃないかなと思っていたんです。Aimerさんが歌ったら絶対カッコいいだろうなというイメージを突き詰めて作ったのが、この「地球儀」という曲です。
Aimer 今回Vauくんにボーカルディレクションをしていただいて、それもすごく新鮮で刺激的でした。Vauくんがボーカルディレクションをするのはこれが初めてと聞いたんですけど、全然そうは思えなくて、前世でプロデューサーやってたんじゃない?って思うほど(笑)。私がVauくんに対して特にシンパシーを感じるのは、感覚と理性のバランスなんです。Vauくんは自分の感覚を使ってやってみたことを、あとからちゃんと言葉に落とし込んで、理論としてしっかり構築している。私も歌うときはいつも感覚的にやってるけど、あとからあれはどういう仕組みだったんだろうと振り返って解釈するところがあるから、そこが似てるなと思いました。
Vaundy 確かに感覚を言語化するのは大事なことだし、それは想像力や経験がないとできないことだと思います。そういうことができるようになりたいですね。
Aimer Vauくんはもうすでにできてると思います。歌というのは人それぞれの感覚でつかむものだから、人と自分の感覚表現がかみ合わないこともあって、「この人が言ってるのは、自分にとってはこういうことかな」って噛み砕かないと解釈が難しいこともあるんですけど、Vauくんのディレクションは表現がユニークで伝わりやすい。レコーディング中、その伝え方は勉強になるなあと思ってメモったりしてました。
Vaundy マジですか! 知らなかった。
Aimer あとはやっぱり、お互いに歌でわかり合えるのがすごくうれしかったです。百聞は一見にしかずじゃないけど、「こんな感じ」っていう声を実際に聴かせてもらって、それに刺激されながら歌うのは私にとってすごく挑戦だったし、自分にない引き出しを作ってもらえた感じがします。
Vaundy よかったー、マジで! めちゃくちゃ緊張してたんで。
Aimerの「フムフム」
──VaundyさんはAimerさんとのやり取りの中で、どんなことを感じましたか?
Vaundy 正直、めっちゃかわいくて面白い方だなと思ってました(笑)。Aimerさんは受け答えが和やかなんですよ。僕はたまに仲間内のレコーディングを手伝ったりするんですけど、みんなマイクの前に立つとどうしても力が入っちゃうみたいで、「こういうふうにしてほしい」と言うとわかんなくてワーっとなっちゃう人もいる。でもAimerさんは「フムフム」ってすぐやってくれるんで、めちゃくちゃやりやすかったです。
Aimer 確かに私、「フムフム」って言うかも(笑)。
Vaundy 「フムフム」がこんなにナチュラルに出てくる人、初めて見ましたよ(笑)。
──Aimerさんのレコーディングはいつも和やかなんですか?
Aimer 自分では意識してないですけど、そうかもしれないですね。ワーっとなっちゃうのって、言われたことがよくわからないとか、わかっていても自分の体や喉が追い付かないときだと思うんですけど、ライブやレコーディングをやってきて、いろんな場面に対処することに慣れてきたんだと思います。レコーディング前は時間をもらって体を整えてくるというのもあるし。
Vaundy だから余裕があるんですね。
Aimer でも今回のレコーディングは挑戦だなと思いました。Vauくんは発声の仕方が私とはちょっと違うので、ディレクションしてもらう中で自分のボーカリストとしての発見もいろいろあって楽しかったです。
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Vaundyがこの時代に受け入れられた理由